第7章 手話通訳事業の現状と課題 ――3つの自治体調査から

第二部

第7章 手話通訳事業の現状と課題──3つの自治体調査から(*)

坂本徳仁(†)、佐藤浩子(‡)、渡邉あい子(§)

1.はじめに

 日本の手話通訳事業は、手話を主要なコミュニケーション手段としている聴覚障害者が日常生活に支障をきたさぬように、1970年代以降、当事者運動の要求に沿う形で公的に整備されてきた。現在は、障害者自立支援法の地域生活支援事業の一つに手話通訳事業が位置づけられており、各自治体の委託した団体が手話通訳に関する事業(手話奉仕員・通訳者の養成や派遣など)を行なっている(1)。
 このように公的に整備・拡大してきた事業ではあるものの、手話通訳事業には依然として多くの課題があるものと指摘され、全日本ろうあ連盟(以下、全日ろう連)、全国手話通訳問題研究会(以下、全通研)、日本手話通訳士協会といった関連団体から様々な要望が提出されている。例えば、全通研が1990年から行なっている調査では、○1頚肩腕症候群を中心とした手話通訳者の健康問題、○2手話通訳者の低賃金と非正規雇用の問題、○3手話通訳者間での技術格差と研修不足の問題等が指摘され、手話通訳者の社会的地位の向上が求められている(全日ろう連・全通研1992; 全通研1997; 2002; 2004; 2006; 2008)。また、聴覚障害者が社会の中で孤立せずに地域に根ざした形で生活していくためには、聴者との間にある情報・コミュニケーション上の格差を是正することが急務であり、手話通訳事業の更なる充実が求められている。
 このように様々な問題が論じられる中で、本研究は2008〜2009年度に行なった三つの自治体(京都市、中野区、金沢市)の聞き取り調査をもとに、手話通訳事業の現状と課題を考察するものである。ただし、調査対象とした三つの自治体は手話通訳事業に対する独自の取り組みや歴史があり(2)、本稿は全国の平均的な自治体の姿を分析したものというよりは「熱心に取り組んできた自治体の実像」に基づいて研究したものと言える。その意味において、本稿で提示される課題は手話通訳事業に恵まれている自治体でさえも抱えている問題であって、平均的な水準の自治体が抱えている手話通訳事業の構造的問題はより深刻であるということに留意されたい。
 さて、本稿の構成は以下の通りである。続く2節では、三つの自治体における手話通訳養成事業の概要と課題を考察し、3節では手話通訳派遣状況の現状とそこから明らかになった諸問題を論じる。最後の4節では本稿の方法論上の問題点について簡単に論じる。

2.手話通訳養成事業における自治体間の差

 本節では、三つの自治体の手話通訳養成事業について概要を説明し、その課題を検討しよう。最初に、表1は三つの自治体の手話奉仕員養成事業の概要を示したものである。

表1 手話奉仕員養成事業の概要
自治体/体験学習/昼・夜の講座/講座時間数(厚労省基準80h)/サークル実習/修了試験
金沢市/あり/昼・夜一年交替開講/入門 23回基礎 38回(計122h)/あり/ちからだめし(ビデオを用いた面接審査)
京都市/あり/昼・夜開講/入門23回基礎27回(計100h)/なし/ビデオ試験による自己申告制
中野区/なし/昼・夜開講/入門40回基礎40回応用30回(計220h)/なし/筆記・実技試験
出典:聞き取りで得られた資料をもとに筆者らが作成。

 表1からわかるように、金沢市と京都市では手話の体験学習の機会が設けられている。この体験学習会は、○1手話講習会入門課程の準備段階、及び○2手話の普及と聴覚障害への理解、の二点を目的として実施されている。次に、京都市と中野区では昼と夜の講座が並行して行なわれているが、金沢市では予算の都合で2005年から昼のみの講座と夜のみの講座を1年交代で実施することになった(3)。講座時間数については、いずれの自治体も厚生省がガイドライン(4)で示した80時間(入門課程35時間、基礎課程45時間)よりも多い時間を費やしているが、とりわけ中野区が応用課程という独自の講座を開設して、他の自治体の2倍近い時間を割いていることがわかる。これは中野区では手話奉仕員を実際に登録・派遣しているためで、手話奉仕員を登録・派遣していない金沢市や京都市よりも(5)、中野区の手話奉仕員には手話の技量が求められているためである。
 続いて、養成講座における手話サークルの活用については、中野区や京都市では手話サークルでの実習がないのに対して(6)、金沢市では入門課程の受講者は手話サークル活動に参加することが必須となっている。中野区や京都市では手話サークルの実習を義務付けてはないものの、現実問題として手話が上達するには手話講習会の講座数では不十分で、手話サークルなどで実際に聴覚障害者と触れ合いながら手話を学ぶ必要があるとのことを面接調査で聞くことができた。
 最後に、手話奉仕員・通訳者の認定基準について確認しよう。金沢市では講座出席率が八割以上で入門・基礎課程を修了し、「ちからだめし(7)」に通れば手話奉仕員認定証が発行される。入門課程を修了すると手話サークルで2〜3年の研鑽を積んだ上で基礎課程に進む。市の基礎課程を修了し、レポートとその内容を手話でまとめたビデオを県に提出して審査に合格すると、石川県の実施する手話通訳者養成講座(基本・応用・実践)に移行できる。その後、県が独自に作成する認定試験に合格すると石川県の手話通訳者として登録されることになる。京都市では、入門・基礎課程の修了はビデオ試験による自己申告制となっている。具体的には、手話で会話する内容のビデオを視た後で、その内容に関するテストを自分で採点・申告し、合格水準に達している者はその課程を修了して上級の課程に進むことができる。市の入門・基礎課程を修了し、京都府の基本・応用・実践課程を修了した者は全国手話研修センターが作成した全国統一試験に合格することによって京都府の手話通訳者になることができる。中野区では、手話奉仕員の認定は入門・基礎・応用課程を修了した上で区の認定試験(実技・一般常識筆記)に合格するか、「日常的な会話場面が通訳できる者」として区長の認定を受けることになっている。中野区の手話通訳者になるには、既に奉仕員登録者で区の手話通訳認定試験に合格するか、「日常的会話場面のみでなく専門的な技術を必要とする講演、会議カウンセリング等においても通訳ができる者」として区長に認められる必要がある(8)。中野区の認定試験は委託先のNPO法人聴覚障害者情報活動センターが作成している。
 以上のように、三つの自治体の間だけでも講座の時間数やサークル実習の有無、各課程の修了、手話通訳認定の方式に差があり、そのプロセスや判定は各自治体に任され一様ではない。裁量制の存在は手話通訳事業の極めて大きな地域間格差を生み出す要因になっており、均質な手話通訳サービスを全国レベルで提供するためには今後見直しが必要であろう(9)。また、三つの自治体のいずれにおいても、手話通訳者の養成に手話サークルが重要な地位を占めていることは見逃すべきではない。サークル実習の有無に関わらず、手話の獲得のためには受講者の手話サークルでの活動が望まれており、手話の習得と実践は手話サークルに頼るかたちで成立していると言える。しかし、このことは手話サークルの活動が消極的な地域では養成事業が機能しないという可能性も示唆しており、ろう者の情報保障に地域間格差が生じる危険性のあることを留意しなければならない。
 続いて、手話奉仕員・手話通訳者養成事業の目的の一つである手話通訳者の合格者数について言及しよう。筆者らが行なった聞き取り調査では、三つの自治体ともに手話通訳者の合格数が低く、手話通訳者が効果的には養成されていない現状が明らかになった。例えば、京都市では入門課程(昼・夜)の受講者200名前後から出発して、京都府の手話通訳者になれる者が例年2〜3名程度、中野区では入門課程(昼・夜)の受講者130名前後から出発して区の手話通訳者になれる者が1名程度と、各々合格率が非常に低いことがわかる。金沢市でも入門課程の受講者30名程度から出発して石川県全体での手話通訳者試験に合格する者が1〜2名程度(10)と、京都市や中野区と事情はほとんど変わらない。手話奉仕員養成事業の目的には手話通訳者の養成だけではなく手話の普及や聴覚障害への理解も含まれているが、各自治体が様々な工夫をしている中であまりにも合格水準が低いのは好ましい状況とは言えないだろう。この低い合格率の背景には、○1「低い所得しか得られないから手話通訳者を目指さない」といった経済的要因や、○2「ボランティアや職場内でのコミュニケーションのために手話を学んでいるので手話通訳者は目指していない」といったような手話学習における受講者の動機、○3「手話通訳は難しいから手話通訳者を目指すなんてとても無理」という手話の技術的困難さ、といった要因が関係しているように思われる。しかし、本調査は手話講習会の受講者を対象にした調査を行なっていないために、この問題について正確な知見を提供することはできない。養成講座受講者の動機と学習を継続できなくなる理由を別途調査し、手話通訳者を育成するために必要とされている施策を検討する必要があろう。
 さて、以上の議論から、手話通訳者養成事業には、○1養成講座時間数や課程修了・合格基準の地域間格差、○2手話サークルへの依存、○3手話通訳者育成の困難さ、という三つの課題のあることが明らかになった。

3.手話通訳派遣の状況

 本節では三つの自治体における手話通訳派遣の状況を考察し、派遣事業における課題を解明・検討したい。
 最初に、各自治体の1・2級聴覚障害者数や手話通訳者数などを表2で確認しよう。
 表2から明らかなように、2007年時点における1・2級聴覚障害者一人当たりの手話通訳利用件数は金沢市が2.3件、京都市が1.8件、中野区が2.7件と京都市が最も低くなっている。市・区民一人当たりに占める聴覚障害者の比率が金沢市、中野区よりも京都市が高いということと、京都市は伝統的にろう運動の中心となってきた自治体であるということの二つの事実を考えると、これは意外な結果である。地域間における利用件数の格差の原因としては、○1手話通訳者割合の差、○2家族による通訳の代理などの代替的手話通訳手段の存在、○31・2級の聴覚障害者全体に占めるろう者の割合の違い、○4聴覚障害者の年齢構成(手話通訳を病院や学校などで定期的に利用する高齢層・若年層)の影響、○5手話通訳技術・利便性の地域間格差、○6ろう者の権利意識の違い、といった6つの要因が考えられるが、これらの要因が手話通訳の利用状況にどの程度関与しているのか、現時点ではデータの制約のためにはっきりしたことが言えない状況である。
 次に、各自治体における手話通訳利用内訳について、利用頻度の高い項目は、病院、社会活動、学校の三つに絞られ、それらだけで利用項目全体の7〜8割が占められていた。病院や学校での手話通訳は高齢者や児童が定期的に利用する場合が多いために、同一人物による利用が多いことを容易に想像できるが、調査においても実際にそうであるということを担当者から聞くことができた。また、全日ろう連がまとめた調査報告(全日ろう連 2006)においても手話通訳利用に関する特定個人への利用の集中が観察されている(11)。したがって、手話通訳の利用においては一般に「個人の集中」と「利用内容の集中」という二つの「集中」の状況が存在するようである。しかし、このことから「手話通訳は特定の人が特定の使い方しかしないのだから、専門特化して頻度の高い利用方法以外の通訳はやらなくてもよい」という解釈を導出するべきではない。むしろ「ろう者は病院と学校、社会活動以外ではほとんど手話通訳を利用することができない」という状況が存在し、聴者中心の社会の中でろう者がいかに不便を強いられているかということの例証の一つとして、このことを解釈すべきように思われる(12)。
 この他、手話通訳事業の委託先への聞き取り調査からは、○1柔軟に働ける人材の不足と派遣対応可能な時間帯の制約、○2場面に応じた手話通訳の使い分け、○3生活相談員との連携、という三つの点が明らかになった。以下、各々の点について解説しよう。
 第一に、手話奉仕員・通訳者の多くは主婦層で占められているため、通訳として派遣できる時間帯に制約が多い。また、主婦ではなくとも手話奉仕員・通訳者の収入のみで暮らすことは困難であり、副業で通訳をやらざるをえないという状況がある。そのため、見かけ上は登録している手話通訳者の数が多かったとしても、実際に柔軟に働ける奉仕員・通訳者の数は不足するという事態が発生する。その結果、各自治体ともに十分な数でもって派遣対応が可能になる時間帯に制約が生じてしまっているようである。
 第二に、手話通訳を派遣している団体は手話通訳の利用内容に応じて、意識的に様々な使い分けをしていることが明らかになった。具体的には、高い専門性が要求される司法・警察・医療関係での手話通訳については手話通訳士や熟練した手話通訳者に任せるといった「専門性に応じた使い分け」が為されている。また、手話通訳者と依頼者は地域内の顔見知りであることが多いために、離婚の調停や大病を患っている場合の病院での通訳などの私的な事柄に関する手話通訳については顔見知りではない手話通訳者に依頼するという「プライベートな事柄に関する使い分け」が行なわれていた。最後に、手話には方言や個人独特の言い回しがあるが、そのことに配慮して方言や個人の言い回しに慣れている手話通訳者を派遣するという「個人・地域限定的な手話に関する使い分け」も行なわれていた。このように手話通訳の派遣には少なくとも三つの形式で使い分けが為されており、通訳者が不足している中でも、各団体で創意工夫が為されている現状が明らかになった。
 最後に、手話通訳の依頼の中には通訳が必要であるとして派遣されたものの、実際にはろう者の生活上の困りごとに関する相談であったというケースが少なからず存在する。この場合には、事務所で雇用している生活相談員やソーシャルワーカーと連携して相談業務を行ない、各ケースについて対処している。行政上の手続きや社会保障制度の概要について手話通訳者が説明するということが多い背景には、行政における窓口対応が不十分であることや普段から気心の知れた通訳者に相談したいというろう者の気持ちがあるのかもしれない。
 さて、本節の議論から手話通訳の利用状況については、○1平均利用件数の地域間格差、○2特定項目・特定人物における手話通訳利用の集中、○3柔軟に働ける人材の不足と派遣対応可能な時間帯の制約、といった問題や、○4手話通訳の場面に応じた使い分け、○5ソーシャル・ワーカーとの連携、といった派遣団体の創意工夫があることが判明した。

表2 2007年度の人口・聴覚障害者数・手話通訳利用件数・手話通訳者数
自治体/人口/1・2級の聴障者数/手話通訳利用件数(括弧内は対1・2級聴障者比)/手話通訳者数(括弧内は対1・2級聴障者比)
金沢市/454,442/410/943(2.3)/65(15.9%)
京都市/1,468,588/2,028/3,639(1.8)/128(6.3%)
中野区/309,824/175/433(2.7)/36(20.6%)
出典:聞き取りで得られたデータをもとに筆者らが作成。ただし、中野区の
手話通訳利用件数については東京都の派遣総数52件が含まれていない。

4.おわりに

 本稿を閉じる前に、留意すべき点と研究方法上の課題について論じたい。
 第一に、三つの自治体の調査から得られる知見のみで全体を語ることは不可能である。本稿で調査対象とした三つの自治体は各々手話通訳事業についての優等生と言うべき自治体であり、平均的な自治体や手話通訳事業にほとんど取り組んでいない自治体の情勢について現時点では何もわかっていない状況にある。今後は全国レベルのデータに基づいて詳細な検討を行なっていくことが求められよう。
 第二に、手話奉仕員・通訳者養成講座の受講者を対象にした聞き取り・質問紙調査を行ない、受講者の動機づけや手話の使用状況について検証する必要がある。受講者の参加動機や手話サークルとの関わり合いを分析することによって、手話通訳者を効果的に育成するために必要な施策を検討することが可能になるだろう。
 第三に、手話通訳を利用していない聴覚障害者について、○1手話通訳を利用したいが、手話通訳を制度上利用しづらいから利用できないのか、○2普段の生活で手話通訳を利用する必要がないから利用していないのか、明らかにする必要がある。このことは利用者の属性や利用内容によってどちらの状況も起こりうるものであるが、手話通訳の利用に関して聴覚障害者がどのような不便・便利さを感じているのか、当事者の観点から分析することで手話通訳制度をよりよいものにしていくことができるだろう。
 最後に、本稿で明らかにした諸問題のいくつかは手話通訳者の低所得問題に起因していると言っても過言ではない。手話通訳者の低所得問題を解決するためには、手話通訳者に十分な所得が保証されている国々(アメリカなど)の制度を分析した上で、日本で必要とされている施策を検討していく必要があるだろう。

[謝辞]
本研究を遂行するに当たってご協力いただいた金沢市役所、金沢市聴力障害者福祉協会、京都市役所、京都市聴覚言語障害センター、中野区役所、NPO法人聴覚障害者情報活動センター、生存学研究センターの方々に深く感謝したい。また、坂本は日本学術振興会科学研究費補助金「ろう教育の有効性:聴覚障害者の基礎学力向上と真の社会参加を目指して」(研究代表者:坂本徳仁、課題番号20830119)から、渡邉・佐藤の両名は立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点から各々研究費の助成を受けている。記して謝意を表したい。

[注]
(*) 本稿は2010年3月22日に行なわれた公開シンポジウム「聴覚障害者の情報保障を考える」の報告原稿「手話通訳事業の現状と課題──3つの自治体調査から」を大幅に加筆・修正したものであり、坂本・佐藤・渡邉(2009) の論文を一般向けに要約したものである。
(†)一橋大学大学院経済学研究科特任講師、立命館大学衣笠総合研究機構客員研究員。
(‡)立命館大学大学院先端総合学術研究科博士課程在籍。
(§)立命館大学大学院先端総合学術研究科博士課程在籍。
(1)手話通訳事業に関する歴史は植村(2002) が詳しい。
(2)具体的には、京都市は1969年に全国に先駆けて京都ろうあセンターを設立し、手話通訳の養成や派遣、聴覚障害者向けの生活相談といった事業を行なってきた。金沢市は常勤正規職員の手話通訳者1名を市役所に雇用している全国的にも珍しい自治体であり、中野区は1973年に都内で初めて自治体主催の手話講習会を開始している。
(3)夜間の講座を隔年で開講するのは社会人の参加に配慮するためである。また、手話を学ぶ必要性が高いと考えられる医療従事者については別途講座を開いているなどの工夫が見られる。
(4)厚生省(1998)「手話奉仕員及び手話通訳者の養成カリキュラム等について」。このガイドラインは自治体間の手話通訳養成事業の格差是正を目指して作成された。
(5) 京都市では2006年から手話奉仕員の登録・派遣を廃止、金沢市では手話通訳派遣事業を開始した1975年から手話奉仕員の派遣を行なっていない。
(6)手話講習会の受講者には手話サークルの案内や交流会の告知はされるが、サークル活動は受講者の自由参加となっている。
(7)「ちからだめし」は、ろう者が手話で話す内容のビデオを視てから、面接でビデオの内容をもとにした質問に回答するという形式で行なわれている。
(8)詳細は「中野区手話通訳者等派遣事業実施要綱」の第2条1項及び別表1を参照せよ。
(9)林(2005)は養成講座の時間数が最も少ない自治体で年間10時間、最も多い自治体で250時間と25倍もの格差が存在することを指摘している。また、講座にかける予算についても年間12〜316万円と地域間で格差が非常に大きいことが報告されている。
(10)この合格者数は金沢市以外の手話奉仕員養成講座の受講者も含む石川県全体での数であることに留意されたい。
(11)回答者数152名のうち、手話通訳を週1回以上利用する者が18.4%、月に2〜3回利用する者が32.9%、年に2〜3回が31.6%、利用していないと回答した者が5.1%、その他・無回答が12.0%と利用頻度に関して個人間で大きな差がある。
(12)例えば、日本では大学の講義や企業の会議・研究で手話通訳をつけることが公的に保障されていない。大学の入学式や講義における手話通訳の問題で振り回された当事者の“生きづらさ”については秋山・亀井(2004)、末森(2007)を見よ。

[参考文献]
秋山なみ, 亀井伸孝(2004)『手話でいこう――ろう者の言い分 聴者のホンネ』, ミネルヴァ書房.
植村英晴(2002)『聴覚障害者福祉・教育と手話通訳』, 中央法規出版.
坂本徳仁, 佐藤浩子, 渡邉あい子(2009)「聴覚障害者の情報保障と手話通訳事業に関する考察――金沢市・京都市・中野区の実態調査から」, 未公刊.
林智樹(2005)「日本の手話通訳制度」, 全日ろう連『21世紀のろう者像』, 全日ろう連.
末森明夫(2007)「情報保障のしくみを作る――80年代のろう学生のとりくみ」, 『障害学研究』, Vol.3, pp.16-23.
全日ろう連(2006)『手話通訳事業の発展を願って――聴覚障害者のコミュニケーション支援の現状把握及び再構築検討事業平成17年度報告書』, 全日ろう連.
全日ろう連, 全通研(1992)『日本の手話通訳者の実態と健康について――全国調査の概要』, 全日ろう連, 全通研.
全通研(1997)『手話通訳者の実態と健康についての全国調査報告書――1996年2月調査』, 全通研.
全通研(2002)『社会的健康あっての人間らしい労働とくらし――手話通訳者の労働と健康実態調査の報告』, 全通研.
全通研(2004)『登録されている手話通訳者の健康と労働についての抽出調査報告書――2003年11月調査』, 全通研.
全通研(2006)『2005年度手話通訳者の労働と健康についての実態調査報告――手話通訳者が健康でよりよい仕事をするために』, 全通研.
全通研(2008)『登録されている手話通訳者の健康と労働についての抽出調査報告書――2007年10月調査』, 全通研.