資料編 テキスト校正ガイドブック

立命館大学障害学生支援室

目次
 1.はじめに
 2.テキスト校正作業の流れ
   (資料-1)各種書式等
 3.OCR作業マニュアル
 4.テキスト校正作業マニュアル
   (資料-2)OCR前→OCR後(未校正)→校正後サンプル集
 5.スタッフ養成
 6.体制
 (参考文献)
 (執筆分担)

1.はじめに

1-1. なぜきれいな「テキストデータ」が必要になるのでしょうか?
 視覚に障害のある学生は、紙媒体の教材を、
 ・音声化して読む
 ・拡大して読む
 ・点字にして読む
 ためです。このすべての過程で、テキストデータがあれば大変便利です。たとえば、点字にして読む学生にとって、きれいなテキストデータの入手は点字化に向けた第一次校正物になります。
また、大学院生の研究活動では大量の文献を読みこなす必要があるため、書籍のテキストデータ化が欠かせません。あるいは、学部生であれば、毎回の授業で配られる配布資料をデータ化することが中心となるでしょう。データがあれば、レポートや試験に関わる箇所など、繰り返し確認したい重要な箇所をピックアップし、点字プリントすることも可能です。上肢障害のある学生など、紙媒体の情報にアクセスしにくい状態にある学生にとっても便利なものになります。

1-2. なぜ「校正作業」が必要になるのでしょうか?
OCRによる文字の誤認識を修正するためです。「ハイテク読書法」、すなわち、スキャナ、OCR、PCを使った読書法の利点は、点字とは異なり、○1本が手に入ったらすぐに読める、○2難解な文章も理解できる、○3斜め読み、速読、検索等が可能な点などです。しかしながら、この方法の欠点として、○1OCRによる文字の誤認識、○2音声ソフトの誤読、○3(視覚障害のある利用者は)自分で誤りを完全に校正できないという欠点を併せもっています(石川 2004, 植村 2008)。そこで、目を使って誤認識を修正する手作業が必要になります。立命館大学障害学生支援室(以下、支援室)では、この手作業を有償の学生スタッフ(=テキスト校正班のスタッフ ※6.体制の章を参照)にお願いしています。

1-3. 校正済みのテキストデータ完成までのプロセス
 紙媒体の情報が校正済みのデータ情報になるまでのプロセスとその活用方法を時系列に示すと以下のようになります。

紙媒体の原本

スキャン(画像データに変換)

OCRソフト(活字データに変換)

テキスト校正作業

校正済テキストデータ=○1

〈音声ソフトで読む〉

○1
点訳第一次校正

自動点訳ソフト(点字データに変換)

点訳校正作業

〈点字にして読む〉

2. テキスト校正作業の流れ

2-1. 作業フローの図
 書籍とレジュメ・配布資料によって完成までのルートが異なります。図に表すと以下のような作業フローになります。なお、このガイドブックでは、主に書籍について扱います。

作業フローの図入る(省略)

【作業開始まで】
2-2. 利用者による依頼(担当:支援室)
 利用者が紙媒体の原本を障害学生支援室に持ち込んだとき、確認する事項は以下の3点です。

1.原本の状態確認(内容の概略、印刷状態、欧文混在の有無、図・表・グラフ・イラスト有無など)
 2.優先箇所の確認
 3.締め切り日(目安として、書籍は1ヵ月後、レジュメは1週間後)

 1.の原本確認では、とくに以下の点に留意して対応します。
 ・一般書籍の場合……コピーの状態(原稿が荒い、手書き箇所の有無など)、欧文混在かどうか(英語、ドイツ語、アラビア語など)、図・表・グラフ・イラスト等の割合。
 ・本学教員による執筆原稿かどうか……執筆されている教員ご本人に直接データ提供が可能かを問い合わせる、あるいは、学内研究所等の担当者に問い合わせる。
 ・紙媒体の配布資料……URL上に同じ情報がないか、各省庁のページ等をチェックする。
 ・新聞記事……論文・記事検索データベースから検索、場合によっては有料記事検索を活用。
 これらの確認は、○1データ化する原本の情報を利用者と共有し、○2作業時間の見積もりをするために、大切なプロセスです。
 授業担当教員が原本を持ち込んだ場合も、まず利用者となる学生の意向に沿うことが原則となるため、必ず上記の確認作業を行います。

2-3. 依頼の管理(担当:障害学生支援室)
 原本の持ち込みがあった時点で、「テキスト校正依頼管理シート」※(資料-1)に依頼内容を入力します。

2-4. 学生スタッフへ依頼するまでの準備(担当:障害学生支援室)
1.書籍、プリント等の原本のコピーを取り、原本は作業が終了するまで支援室にて保管。
2.スキャナ・OCRソフトにかけ、未校正データを作成する(テキスト形式.txt)
  ※3.OCR作業マニュアルを参照
3.ページ数をカウントし、「テキスト校正作業費申請書」を作成する
   ※ページ数のカウントは、資料-2を参照。

 「紙媒体の原本コピー、未校正データ、アルバイト費申請書」の3点がセットになれば、依頼前の準備は完了です。

2-5. テキスト校正班への作業依頼(担当:学生コーディネーター)
 3点セットが整い次第、支援室から学生コーディネーターに連絡をし、原本を前にして依頼の振り分け方や〆切日設定などを職員と相談します。ここで、学生スタッフの力量、依頼時期(試験間近/長期休暇前など)について適宜調整を図り、最終的な依頼内容を決定します。
 学生スタッフへの作業依頼は、学生コーディネーターがメーリングリスト(以下、ML)を使って流します。メール本文の必要記載事項は、
 ・書籍名
 ・ユーザーの所属、氏名
 ・ページ数
 ・〆切日
 です。たとえば、依頼の書き方例としては以下のようになります。

みなさま
 ○○です。
 新しい校正作業の依頼が○件来ていますのでお知らせします。
 詳細は以下です。
 ①『  』○ページ
 ②『  』○ページ
 ③『  』○ページ
 利用学生:○○所属○○さん
 〆切日:○月○日
 引き受けてくださる方は、ML宛に連絡をお願いします。

 各スタッフからのML宛の返信を待って、どの依頼を誰にお願いするのかを先着順で決定します。その後、各スタッフが障害学生支援室でセットを引き取り、作業が開始されます。なお、未校正データについては別途メール添付で送る場合もあります。

【作業中】
2-6. 各スタッフによる校正作業
 3点セットを受け取ったスタッフは、自宅あるいは大学内のマルチメディアルームなどで作業を開始します。作業の過程で不明な点があれば、そのつどMLに投稿して、利用者や学生コーディネーター、学生スタッフ、職員などからのアドバイスを受けます。
 例えば、「視覚的な情報である傍点をどのように処理するのか」「ローマ数字を音声ソフトはどう認識するのか」など、細かな不明点をMLを通して確認し、場合によってはそのやりとりの結果をマニュアルに随時反映させます。

【作業終了後】
2-7. 学生スタッフから校正済みデータの受け取り(担当:支援室)
 校正済みのデータは、支援室のアドレスまでメール添付(ワード形式.doc)で送付してもらいます。テキスト形式ではなくワード形式のでの提出を採用している理由は、チェック作業がワードのほうが容易なためです。支援室では、原本とつき合わせて完成データをチェックします。
 チェック事項としては主に以下を挙げることができます。
 ・誤字脱字がないかどうか
 ・省略箇所は適切かどうか
 ・校正者注は適当かどうか
 データ送付のタイミングに合わせて残りの原本と申請書も支援室まで持参してもらいます。原本はユーザーへ返却されます。

2-8. 利用者へ校正済みデータの送付(担当:支援室)
 チェックと修正が済み次第、ワード形式のデータをテキスト形式に保存しなおし(※)、利用者へデータを送付します。
 
※ワードで使用した文字・フォントがテキスト形式に落としたときも正しく表示されるよう、保存の際には下記の手順を採るとよい。
 〈ファイル→名前をつけて保存→ファイルの種類→書式なし→エンコード→その他→Unicode UTF-8→OK〉

 データ送付時の書き方例

○○様
○○です。
先般依頼のありました『  』の校正済みデータをお送りします。
ご査収ください。
近日中に原本の引き取り及び個人利用誓約書の提出をお願いします。

何か不都合があればお知らせください。

2-9. 個人利用誓約書の提出(担当:利用者)
 利用者は受け取ったデータを個人利用にとどめ、譲渡や複製をしないことを誓約するため、「個人利用誓約書」を支援室に提出します。

資料-1 ○1テキスト校正依頼管理シート(省略)
資料-1 ○2テキスト校正ページ換算(省略)

3. OCR作業マニュアル

 ここでは、テキスト校正作業に適したOCRソフトの使い方の手順について概説します。

3-1.使用機器 
 支援室で使用している機器は下記です。

 OCRソフト e-Typist v.11.0
 スキャナ canon DR-9080c

3-2. OCRソフトe-Typistの使い方
e-Typistの使い方の流れは以下のとおりです。

1.e-Typistを起動する
  ↓
2.画像を読み込む(スキャンする)
  ↓
3.画像の修正
  ↓
4.レイアウト解析
  ↓
5.文字認識
  ↓
6.認識結果をファイルに保存する

写真1 立命館大学障害学生支援室内PCルーム設置のOCR作業専用PCとスキャナ(省略)

1.e-Typistを起動する
 デスクトップの[e-Typist v.11.0]をクリックし立ち上げます。

2.画像を読み込む(スキャンする)
 ○1字のある方が上になるように原稿をスキャナにセット
  ファイル(F)→スキャナの選択→canon DR-9080cに合わせてOK

 ○2[スキャナから画像を読み込みます]をクリック
★モード 白黒
★用紙サイズ スキャンする用紙のサイズに合わせる(B4より大きなサイズは最大サイズを選ぶ)
★解像度(DPI) 出来るだけ600で取る
※「DPI」とは、スキャンした画像の解像度を示す。数字が大きくなるほど画像がきれいになり、認識率も上がる。ただし、数字が大きくなるにしたがって、スキャン時間も長くなる。
※分厚い本などで元原稿のコピーの片ページが極端に斜めになっている場合は特に600にあわせるとよい。低い解像度でスキャンすると見開き手動補正が出来ない場合がある。

[詳細設定]をクリックし文字方向検知にチェックを入れる
[フィルタ]をクリックし孤立点除去、ノッチ除去、黒枠消しにそれぞれチェックを入れる
[OK]をクリック

○3スキャンする→スキャン結果が画面に出る

3.画像の修正
 認識枠を取る前に……
○1「見開き手動補正」を行う
 スキャナ画面の 回転→見開き自動補正→補正実行
 スキャナ結果で片ページが極端に斜めになっている場合は(分厚い本などはコピー時にどうしても歪んでしまう)、「見開き手動補正」で1枚ずつ直すこと(この作業は複数ページを一度にすることはできない)。ゆがんだまま作業を進めると、文字認識をした時に片方のページがすべて文字化けし、後の校正に大きく影響する。
 コピーの中央が歪んでいるときは中央線も移動させること。

○2黒地に白抜きの文字は黒白反転しておく
  スキャナ結果画面で[範囲設定]を[画像修正]にし、範囲をマウスで決めてから反転表示をクリックする。

○3「認識属性」を決めておく
左から領域種別、言語、段組、改行コード挿入指定、空白文字挿入指定、デー タ区切り、認識字種別設定、ルビ認識。

★領域種別
文章領域→普通の文章
表→表になっているものや目次、索引など
図→図は取らないのでほとんど使わない

★言語の設定
日本語、英語、日本語(欧文混在)、など。設定する言語に を入れる。
なお、e-Typist は日本語の縦書き文章中の横書き英語を認識しません。そこで、原稿の状態に合わせて下記の対応をします。

1.元原稿が縦書きで途中に英語(横書き)が混じっているページ
 →日本語で認識すると英語部分はすべて文字化けする。
 明らかに英語の部分の方が多い場合は、原稿を回転させて英語で認識してしまう方が良い(校正時、日本語を入力する方が楽なため)。もしくはスキャンするときに2重取りする(日本語取りと英語取りの2種類)。

2.原稿が横書きで途中に英語が混じっている場合
→言語の日本語(欧文混在)にチェックを入れる。
 (ただしこの場合、英文の単語はすべて繋がって認識されるので校正時に単語と単語の間にスペースを入れ込む必要がある。)
 すべて英文のときは英語にチェック を入れる。
 (この場合はスペースが入って認識される。)

★段組→自動にチェック。
縦書きの文章に絵や図のキャプションが横書きで入っている場合などであまりに細かい場合は段組を指定する。
★改行コード→文章に合わせて……毎行改行、自然改行を選ぶ。本文などは自然改行にするとよい。
★空白文字挿入指定→空白出力にすれば段落はじめの一段落とす空白を認識する。
  ★データ区切り→文章領域の下線削除にチェック
★認識字種別設定→認識文字種すべてにチェック
★ルビ認識→「文章中に挿入」にするとほぼルビ部分を(  )内に入れて認識する。ただし本文中の傍点(例:その結果)はすべて(へへへへ)と認識する。

4.レイアウト解析
方法1 手動でひとつずつ(こちらがオススメ)
 ・マウスのクリック&ドラッグで認識枠をひとつひとつ設定していく。

方法2 自動で一気に
 ・スキャン結果をすべて選び、[自動レイアウト解析]をクリック。
※この方法で一気に認識枠をとることもできるが、原稿内のページ数や黒くなってしまった部分まで認識してしまい、後の校正がやりにくいことがある。文字化けも多い。

5.文字認識
 すべての認識枠を取ってから、画像リストのところで「全て選択」にし[文字認識を実行します]をクリック→認識結果が画面に出る

6.認識結果をファイルに保存する
 [認識結果をファイルに保存します]をクリックし、デスクトップに名前を付けて保存する。※保存はテキスト形式です。

4. テキスト校正作業マニュアル

4-1. 校正にあたる際の心構え
 利用者は、私たちが校正したデータを主に音声ソフトにかけて使用します。校正にあたる際は、音声ソフトにかけたらどのように読まれるのか、常に念頭において作業をしましょう。
 また、利用者は、これらの文献をただ読むだけではなく、使用して論文を書くこともあります。したがって、論文に正しく引用することができるよう、また、書名、著者名、ページ数など正しい情報が提供できるよう、原本に忠実な校正作業が要求されます。校正にあたる際の大原則は「原本に忠実に」です。

4-2. テキスト校正の基礎
1.文字単位の校正
 OCRソフトでスキャンしたデータには「誤認識(文字化け)」が含まれています。とくに、漢字や英数字は文字化けしやすいので注意してください。また、画数の多い漢字や部首が同じ文字は似た形の文字に変換されている場合があります。これらひとつひとつを確認し、校正して正しい文章に直してください。

  〈よくある誤認識〉
   ?(マイナス)/?(ダッシュ)/?(長音)/一(漢数字の「いち」)
   者/老
   日/目
   図/圏/園/国 など

2.段落の校正
 段落は基本的に原本に忠実に挿入してください。
 まず、段落の頭は1マス空けます。原本で1マス空けていないところ(文章がつながっている、段落分けをしていないなど)はそのまま文章を続けて下さい。
 文章が続いているのに改行コードがついている場合は、改行コードをはずしてください。

3.ルビがある場合の校正
 原本の文章中にルビ(よみがな)がふってあるところは文字化けしやすくなっていますのでよく注意して下さい。
 ルビがふってある箇所は以下のように校正してください。

〈ルビがある箇所の校正〉
 幸せの範疇→ 幸せの範疇(カテゴリー)

 また、人名は音声ソフトでは正しい読みがされない場合があります。そのような場合でもこの校正方法は有効です。

4.語句が強調されている場合の校正
 傍点や太字、斜体等で語句が強調されている場合は、強調されているということを括弧書きで付け加えます。一文すべてに傍点がついていたり太字になっていたりする場合は、間を省略して、一文の始めと終わりだけを示します。

〈語句に傍点がついている場合の校正〉
テキスト校正 → テキスト校正(校正者注:「テキスト校正」傍点)

〈語句が太字になっている場合の校正〉
 テキスト校正 → テキスト校正(校正者注:「テキスト校正」太字)

〈語句が強調のために斜体になっている場合の校正〉
 テキスト校正 → テキスト校正(校正者注:「テキスト校正」斜体)
 ※強調のためではなく、特別な意味がなく斜体になっている場合(固有名詞であるため等)は、括弧書きを付ける必要はありません。斜体を標準文字に直して校正してください。
 テキスト校正 → テキスト校正

〈一文すべてに傍点がついている場合の校正〉
立命館大学障害学生支援室テキスト校正班次回ミーティングは、9月末に行います。
 →立命館大学障害学生支援室テキスト校正班次回ミーティングは、9月末に行います。(校正者注:「立命館大学〜行います。」傍点)

5.ページ番号の挿入
 校正データには必ず原本のページ数と同じページ番号を挿入します。まず、ページ番号を書く行のひとつ上の行を一行空けて下さい。そして、ページ数を「p○○」とすべて半角英数字(半角)で記入し、文章が次のページにまたがる場合は、文章の途中でも新しいページ番号をつけ、その後文章の続きを書き込んでください。

〈ページをまたぐページ番号の付け方 例文〉
つまりそれを、身体をもつ=身体である人間の活動の所産として考えることである(身体の

p57
社会的能動性)。つまり、身体を規定する社会的事象(言説、慣習、制度など)も、何もないところから突如として現れるものではなく、身体をもつ=身体である人間が能動的に立ち上げるのである。

 この作業は、ユーザーがパソコン上の「検索」機能を使って探したいページ番号にすぐにたどり着けるようにするために行います。
 ページ数がローマ数字(ⅰ、ⅱ、Ⅰ、Ⅱなど)で表記されている場合、ローマ数字は音声ソフトで読むことができますので、そのままローマ数字で校正してください。アラビア数字(1、2など)に書き換える必要はありません。

6.英数字の校正
 文章中に英数字が出てきた場合は、すべて半角英数字を使用してください。半角・全角が混合してしまうと、検索時にヒットしないことがあります。
 また、下記のような誤認識には十分注意してください。

〈英数字によくある誤認識〉
0(数字のゼロ)/O(大文字の「オー」)/o(小文字の「オー」)/○(記号の「まる」)/1(数字の「いち」)/I(大文字の「アイ」)/l(小文字の「エル」)など

パソコンでは表示できない、英語以外の言語で書かれているテキストの場合(例えばドイツ語の人名や書名など)は、表示できる範囲での校正(アルファベットの置き換えなど)で構いません。また、この場合は、校正終了後の提出時にそのような置き換えを行ったのかを報告してください。

7.図・表の省略
 原本中に出てくる図や表は基本的に割愛します。ただし、表の一部には文章化できるものもありますので、その場合は文章化してください。また、種類によっては表の情報をエクセルファイルに落とし込む方法もあります。あるいは、該当部分について別途対面で(口頭で)説明をする方法もあります。これらについてはユーザーの依頼内容に沿って対応することになります。

〈図・表の省略の仕方〉
 図・表の省略を行った後は必ず「どの図・表を省略したか」を記入してください。
 例:「○○○の統計」省略

8.注釈の校正
 基本的に原本に忠実に行ってください。注がついている言葉のすぐ後ろに(1)や(※)を書くなどして、注釈の番号と揃えておいてください。
 注釈は本文に比べ、さまざまなパターンのものがあります。以下、よく校正者が迷うパターン例を挙げておきます。
〈特殊記号が使用されている場合〉
†、‡等の特殊記号が使用されている場合、これは音声ソフトで読むことができないので、(注1)等に置き換えてください。
 
〈特殊文字ではない記号が使用されている場合〉
特殊文字ではない記号、例えば☆や△、□等が使用されている場合、これは音声ソフトで読むことができるので、そのままの記号で校正してください。
 
〈縦書きの文章の最後に横書きの注釈がついている場合〉
文章は縦書きであるが、注釈のみ横書きである場合、注釈が裏表紙の方から始まる形になります。この場合、注釈のページ送りがp255→p254→p253といった様に逆送します。この様なテキストについては、ページ送りは逆送しますが、文章の流れにしたがって校正するようにしてください。

〈注釈や参考文献が英文テキストの場合〉
注釈や参考文献で、ほとんどが英文のテキストの場合、日本語メインでOCRソフトをかけたデータと、英文メインでOCRソフトをかけたデータの2つを渡します。それらのデータをコピー&ペーストしながら校正作業を行うと、比較的負担が軽減します。 

9. 目次について
 目次の箇所をOCRソフトにかけると、原本レイアウトの関係で完璧には認識できません。校正がしやすいようにページ数をスキャナ取りしない場合もあるのでその場合は自身でページ数を打ち込んでください。
どのような目次でも項目の後にページ数が掲載されていますが、レイアウトが原本によって様々なため、ページ数の前に「?」、「????」、「…」、「………」、「 」(スペースのみ)と空間の長さがまちまちな場合がありますが、それぞれ原本に合わせて「?」、「…」、「 」一文字分でページ数をいれるようにしてください。
 ※目次のこの部分に限っては原本に忠実な長さにする必要はありません。
 ※原本の中央に文字がレイアウトされていても校正時は中央揃えする必要はありません。

〈例:原本〉

2007さぽーとフォーラム
?考えませんか? 障害学生支援のこれから。?

目次

  はじめに ………………………………………………………………………… 1
  2007さぽーとフォーラム ……………………………………………………… 3
  第1部 パネルディスカッション …………………………………………… 5
         はじめに:各大学の取り組み紹介
         テーマディスカッション:障害学生支援について考える
          ・独自の支援体制について
          ・支援の課題
          ・離れたキャンパスをつなぐには
          ・質疑応答
  フォーラム座談会 〜パネリスト'sQ&A〜……………………………… 37
  コラムさぽーとフォーラムの情報保障……………………………………… 47

  第2部 交流会………………………………………………………………… 52
  コラム みんなが参加できる交流会を作るまで…………………………… 58

  おわりに………………………………………………………………………… 66

〈校正後〉

2007さぽーとフォーラム
?考えませんか?障害学生支援のこれから。?

目次

はじめに…1
2007さぽーとフォーラム…3
第1部 パネルディスカッション…5
 はじめに:各大学の取り組み紹介
 テーマディスカッション:障害学生支援について考える
 ・独自の支援体制について
 ・支援の課題
 ・離れたキャンパスをつなぐには
 ・質疑応答
フォーラム座談会 〜パネリスト'sQ&A〜…37
コラムさぽーとフォーラムの情報保障…47

第2部 交流会…52
コラム みんなが参加できる交流会を作るまで…58

おわりに…66

10.その他
〈原本自体の表現が間違っている〉
 →原本の文章には、極まれにスペルミスや誤字脱字など、日本語が通じていないものなどが含まれることがあります。この場合は自分で訂正せず、あくまで原本に忠実にしてください。

〈書籍によって「、」「,」が異なる〉
 →原本が使用している記号を使ってください。

4-3.ワードの便利な機能
○編集記号を出す
 編集記号を出すと、スペースや改行をどこで使ったかがわかりやすくなります。

 ※編集記号の表示/非表示の切り替え方法
 ツールバーの【編集記号の表示/非表示】ボタンをクリックします。表示/非表示が切り替えられます。

○置換作業で一括変換
 「置換」機能を利用して同じ傾向のある文字化けを一括で訂正することができます。[編集]→[置換]を選択し、検索する文字と置換後の文字を入力します(フォントが異なるところを置換変換する場合はオプションを使うと一括で直すことができます)。

資料-2 OCR前→OCR後(未校正)→校正後サンプル(省略)

5.スタッフ養成

 定期的な養成講座の実施は安定的なサービス提供のために不可欠です。というのも、学生は日々流動しますし、スキルある人材が数年間にわたって恒常的に作業を請け負う状態は考えにくいからです。そこで、支援室では、テキスト校正サービスの利用者とテキスト校正班の学生コーディネーターに講師となってもらい、パソコンを使った実習型のテキスト校正者養成講座を年に2回程度実施しています。
重要と考えている点は、利用者に講師として協力をしてもらうことです。これにより、受講生たちは、自分が作業したデータが誰にどのように使われるのか、また、利用者の使いやすさのためには何に留意すべきなのかを、講座の場で体感することができます。テキスト校正の作業自体は、個人で行う単調な作業のため、養成講座の機会に完成物の用途についての具体的なイメージをもつことは、とくに大切だといえるでしょう。

写真2 学生コーディネーターによる講義の様子(省略)
写真3 ユーザーによる音声ソフトやブレイルメモ説明の様子(省略)

★概要
頻度:年に2回程度
場所:情報処理実習室、ノートパソコン数台を借りてセッティングした教室など、受講者のひとりひとりにPCがいきわたる教室
講師:利用者と学生コーディネーター
   実習時のアシスタントスタッフ
内容:
第1部 「テキスト校正とはなにか」「依頼から受け渡しまでの流れ」「校正作業の基本ルール」等の講義
第2部 パソコンを使った校正作業の体験、音声ソフトを聞く体験(利用者に校正済みデータを使ってどのように読書をしているのかを音声ソフトを稼動させて実演してもらう)

〈例 2008年11月20日に行った講座の内容〉

1、あいさつ 障害学生支援室 二階堂祐子
2、「テキスト校正ってどんなもの?」
  講師…立命館大学大学院 先端総合学術研究科所属 植村 要
3、テキスト校正班の紹介 
4、校正作業解説・実習
  講師…立命館大学法学部現代法専攻3回生 伴 佐和子
5、音声データを聞いてみよう!!
 「テキスト校正はどのように活用されるの?」
質疑応答、アンケート記入

6.テキスト校正サービスの体制
 
 テキスト校正支援において立ち上げ当初から大切にしてきたのは、支援を使う/支援を担う学生に深く関与してもらいながら運営していくこと。そこで、障害学生支援室の職員が直接学生スタッフに業務を振り分けるのではなく、テキスト校正の養成講座を受講した学生と、利用者、職員から成る「テキスト校正班」を形成しました。これにより、関与するメンバーの支援の使いやすさ/作業のしやすさを逐次拾うことが可能となり、それらを実際の運用に反映させてきました。ここでは、テキスト校正班の運営を中心に、現在の立命館大学の体制を紹介します。

6-1. 概要
 ★利用者:大学院生4名、学部生2名
 ★学生スタッフ:大学院生2名、学部生33名
 ★職員体制:全体マネジメント(専門契約職員)2名
       OCR/校正作業等担当(派遣職員)1名
 ★学生コーディネータ(有償):ミーティングやMLの運営、講座の講師、作業依頼の打診、フォロー等を行う学生スタッフ1名
 
6-2. テキスト校正班の運営
テキスト校正班は、ミーティングの実施と、MLの活用の2つの方法が核となって運営されています。ミーティング、MLともに、利用者が参加し、意見交換を行っています。

1 ミーティング
1-1. ミーティングの概要
 テキスト校正班スタッフが行うミーティングは、以下の3つが挙げられます。
  ○1定期ミーティング(月1回、スタッフ・支援室職員・利用者が参加)
  ○2臨時ミーティング(不定期、スタッフ有志・支援室職員が参加)
  ○3運営ミーティング(定期・不定期、学生コーディネーター・職員)

○1定期ミーティング
 定期ミーティングは、通常本学の大学開講中の平日の月1回、昼休みの30分間を使って行われています。
 主な目的は、スタッフへの依頼分担・依頼の到着状況の説明、作業後の感想を元に新たなマニュアル作成に向けた意見交換、利用者によるスタッフへの作業要望、スタッフと利用者の交流、支援室職員からのスタッフへの指示などです。
 日程調整・ミーティングの司会・議事録作成は、すべてコーディネーターと支援室職員の共同作業となっています。なお、定期ミーティングは以下のような手続きを経て、開催されます。

毎学期初にミーティング開催希望日をMLで確認(学生コーディネーター)
      ↓
スタッフからの返信
 ※学生コーディネーターが意見を集約
      ↓
定期ミーティングの開催日決定
※学生コーディネーターが参加可能な日を選択。職員も決定に関与。
      ↓
開催日1週間前にMLにミーティング開催日通知(学生コーディネーター)
 ※学生コーディネーターが当日までにレジュメを作成。
  重要な議題はあらかじめMLに記載することもある。
     ↓
定期ミーティングの開催
 ※ユーザーも参加。スタッフがユーザーの意見を直接聞ける良い機会になっている。
      ↓
コーディネーターによる議事録作成とMLへの配信
 ※ミーティングに同席した支援室職員のチェックを経た後、MLに配信される。利用者およびMLに携帯しか登録していないスタッフにも配慮して、txtファイルで議事録をメール添付する。

○2臨時ミーティング
大量の作業依頼が入った時、経験の無いジャンルの依頼が入った時などは、スタッフ有志・職員が集まって臨時ミーティングが行われます。現在では、作業ごとにワーキング・グループを作って、特殊な業務にあわせた作業のルール作りを行っています。定期ミーティングと同様、議事録に関してはMLを通して配信することで、欠席したスタッフへの周知徹底を図っています。

○3運営ミーティング
 定期ミーティング前、スキャナや障害学生支援室のシステムの変更、利用者からの依頼のスタッフへの割当、新規加入スタッフのフォロー、学生コーディネーターの業務引継ぎなどの場合に開催されます。基本的に、学生コーディネーターと支援室職員のみで行います。

1-2. ミーティングの意義
支援室では、スタッフやユーザーが顔を合わせて議論できるミーティングを大切にしています。以下では、ミーティングを実施する意義について整理してみます。

○1定期ミーティング
a,現在の班運営の問題点がスタッフ・支援室職員・利用者間で共有される。
b,スタッフ間の作業方法の改善要求が提示され、課題が職員・学生コーディネーターに認識される。
c, 利用者の視点から、テキスト校正班スタッフの作業の改善が可能になる。
d,利用者の参加によって、スタッフのモチベーションの向上、作業の意義の実感につながる。
e, 作業の割当を効率よく行え、作業スケジュールの目処がつけられる。利用者への予想引渡し期間を告げやすい。
f,スタッフ・支援室職員間の連帯感が高まる。
 
○2臨時ミーティング
a,メンバーを固定することで、定期ミーティングよりもスタッフ間の連帯感が高まる。また支援室職員・学生コーディネーターも作業参加者1人1人に目が行き届き易くなり、フォローが手厚くなる。
b,スタッフ有志が参加するために、問題意識・方向性が明確になり、作業がはかどる。
c,議論をMLに流すことで、さらにスタッフの結集を図れる。
 
○3運営ミーティング
a,学生コーディネーター・支援室職員間での情報の共有が可能になる。
b,定期ミーティングでの議題が明確になる。定期ミーティングの円滑な運営が図れる。
c,代々の学生コーディネーターのノウハウの伝達の場となっている。
d,定期ミーティングで出た議論・問題点を追及する機会となっている。
e,テキスト校正作業のルール作りの場となっている。

1-3.ミーティングの課題
 ○1ミーティング参加者の固定化。
→「スタッフ有志」と定期ミーティング参加メンバーの同一化が進んでいる。活発な議論や、スタッフ全員の状況把握が困難になっている。

 ○2ユーザーの参加を増やすこと
 →原則としてユーザーもミーティングに参加してもらうことになっているが、なかなか日程を合わせることが難しい。ミーティング以外にもユーザーとスタッフの交流の機会を設けていく必要がある。

2 MLの活用
 MLでは、作業依頼の受諾、作業に関する質問の受付などが行われます。先に述べた通り、テキスト校正班スタッフの作業は、ミーティングとMLが運営の核となっています。ここでは、テキスト校正班スタッフのML活用について説明します。

○1作業の依頼および受諾のツールとして
 スタッフへの作業依頼は、ミーティングの時に決定することもありますが、主としてMLによって作業者の決定がされます。作業依頼のMLの文面は前述の通りです。基本的に先着順で作業者が決まります。
 MLを活用するメリットとしては、・作業者の都合の良い時間に、作業の受諾を決められること、・MLに返信することで、未受諾の仕事の一覧がわかりやすいこと、・誰が作業をしているか利用者にわかることが挙げられます。

○2作業に関する質問の受付および返答のためのツールとして
 作業に関する疑問・質問は、通常MLで受け付けます。これはスタッフが各種ミーティング以外になかなか顔を合わせる機会がないというこの支援の特徴からくるものともいえます。また、このMLには、利用者も参加しているため、利用者の視点から校正作業へのアドバイスをもらうこともできます。利用者のMLへの参加は、校正作業へのルール作りにかかせない要素となっています。
 MLを活用するメリットとしては、○1MLでの議論は、いつでも誰でも参加しやすいこと、○2MLで議論した内容が残り、マニュアル作りの際に参考になること、○3利用者もスタッフも、お互いどのような課題をもっているか、何に困っているのかをリアルタイムで共有することができるため、改善策を迅速に提案できること、○4頻出する疑問点は、新規スタッフへのスキルの伝達の際に参考になること等が挙げられます。

■参考文献
石川准, 2004,『見えないものと見えるもの───社交とアシストの障害学』医学書院
植村要, 2008,「出版社から読者へ、書籍テキストデータの提供を困難にしている背景について」『Core Ethics』vol.4, 立命館大学先端総合学術研究科
公共図書館で働く視覚障害職員の会(なごや会)編, 2004,『本のアクセシビリティを考える 著作権・出版権・読書権の調和をめざして』読書工房
青木慎太朗, 2006,「テキスト校正の基礎」立命館大学障害学生支援室主催講習会資料

■執筆分担
4. 校正作業マニュアル……文学部4回生 山崎志保、法学部3回生 伴佐和子(障害学生支援室学生コーディネーター)
6-2. 体制 テキスト校正班の運営……文学研究科1回生 朝田健太(障害学生支援室学生コーディネーター)
その他……障害学生支援室