第12条実施への挑戦 ―障壁ある法は決して法にあらず

台湾(座長:宋颂)

第12条実施への挑戦
―障壁ある法は決して法にあらず

滕西華(中華民国障害者連盟事務総長)

ありがとうございます。この時間最後のスピーカーで、非常に眠たくなる時間ではないかと思いますのでプレッシャーを感じています。私のテーマは、教授に言われて来たので、私の原稿もその教授先生の審査を受けて持ってきました。
前の先生がおっしゃった幾つかの事例について、私自身も例えば地下鉄での台湾の事件や、そういったことに関わってきました。長期的に治療を受け、入院させられているということは、人権団体からも指摘がありました。そして私も研究をしています。こういったことに私も関わっています。社会の価値に関する批判などです。話をして、最後の2分間で皆さんに振り返っていただきたいことがあります。
私のテーマは、主に12条に法律に対する規範があるのですが、その法律の規定はあるけれども、それをどのように実践していくか、人々が全て法の下で等しく認められる権利をどのように実践していくかということです。そして、差別に関する考え方です。差別はすぐに差別になっていくのではないのです。個人や社会の間で、構造的なさまざまな差別があります。そしてこれによって障害者の権利が剥奪されています。この緑の部分です。スティグマに関するものです。
矢印は衝突関係を表しています。右側に「レッテル貼り」とあります。例えば視覚障害者も、何も見えない、少し見える、光は少し感じられるというようにそれぞれの感覚があるのに、一律にレッテルを貼り、例えば視覚障害者が外に出るのは危険ではないか、生活が不便ではないか、きっと人のサポートが要るというような偏見を持ってしまいます。こういったステレオタイプ的な固まった見方があります。それが行為につながっていきます。「不便なのだから外に出るのはやめたら」「なるべく出ないようにしたら」「家にいると一番安全ですよ」「外に出るときっと車にひかれてしまうよ」「転んでしまうよ」というような働き掛けになっていくわけです。これは分離、セパレートになってしまいます。隔絶されてしまうと、いろいろなものを失ってしまいます。これは一般的な社会的な価値観からそうしたことをしてしまうのです。
左の白い側は法律レベルで解決する部分です。「私が外に出るのは本当に不便だから、おとなしく家にいる方がいいよね」「人に迷惑を掛けてしまう」「私が外に出ると転んでしまう」。これは他の人が気を付けていないのではなく、自分の問題だということです。自己スティグマ、自ら汚名をかぶってしまうということです。こういった視覚障害者は、「不便である」「みんなのサポートを必要とする」「自分自身もけがをするわけにはいかない」「学校にある教科書も読めないので学校に行かなくていい」というふうに考えてしまいます。そういったことがあるのです。
その下にある二つ、丸で囲ってある部分は法律レベルで解決する部分です。法律ではレストランで食べてはいけないとか、学校に行ってはいけないということはないのですが、それがうまく実践されていないということです。
このポスターは精神障害者に関するものです。これはスティグマ反対キャンペーンのものです。この赤い部分は神経病、精神病です。「おまえは神経病だ」とよく言いますが、これは、そのように言われてしまうと、ドミノ倒しのようにさまざまな部分に影響を及ぼしてしまうということを表しています。レッテル貼りやスティグマによって、どのようなことが引き起こされてしまうのかということをここで呼び掛けたいのです。
アジアは父権社会で儒教思想があります。これは条約の12条にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。例えば、先ほど中国の方もおっしゃいました。補助決定や代行決定がされてしまうのです。香港から来ていらっしゃる方もいますよね。何歳になったとしても子ども扱いされてしまうのです。女性の場合、結婚してから自分の旧姓と夫の姓を合わせてというふうに変えることがあります。やはり父親側の影響を受けることがアジアではよくあるのです。
こういった中で、障害者の家庭内での地位が低い場合は、年長者の言うことを聞かなければいけないという固定観念があります。もしくは、年長者が代行するのを拒絶する能力があるのかということです。これは障害者にとって大きなチャレンジであると思います。この部分は先ほどの方ともかぶるところだと思います。100%保護されている場合、自分の意思で決定できますが、やはりそうでない場合は家庭内での権利代行が生じてしまいます。
幾つかの事例をご紹介します。事例1は、人格権の行使と提訴代行です。これは台湾の高雄で起きたことです。脳性まひの方がいらっしゃいました。その方は、市街区歩道のバリアフリー設備の不足で、社会参加が困難となっていました。外に出られないのです。その父親が、「市役所は私の息子の権益を侵害している」と考えました。そして息子の名義で提訴したのです。しかし、裁判官に棄却されてしまいました。理由は、「父親がこの脳性まひの当事者ではないから、代行で人格権を行使することができない」ということでした。
「私はずっと一生息子の面倒を見ているのです。全てのことですよ。私が彼の車いすを押せないのに、代行して提訴するのはできないのか」と非常に不満に思っていたようです。この息子は18歳ぐらいで成年にはなっていないのですが、こういったことを受け入れられ、理解することができるのでしょうか。アジアの社会は理解はできると思います。全て父親が面倒を見ている、長期にわたって家にいる、全てのことを世話している。重度の障害者は、学校に来る際に親が随行することを求めているところもあります。それと同じことです。両親がするというのを受け入れて理解できているのか。そして実際に権利能力を行使するかどうか、どういう違いがあるのか。また、これは人格権に関わるところです。台湾の民法の195条にあるのですが、これについては読んでいただけたらと思います。
アジアではよく見られることですが、手術を家族がするとき、配偶者がサインしなければいけません。医療で代行するということが、アジアではよく行われています。家族が医療の決定権を代行することが必要なのか。こういう責任を家族は負わなくてはならないのか。医療法は、台湾でさまざまなディスカッションがなされています。
医療の決定に関しては他の先生もおっしゃっていました。例えば、性と生殖に関する権利の行使などです。自分のケアが難しい人が不妊手術を受けることに関して、誰がその医療決定をするかということです。台湾は昔、性と生殖に関する権利が剥奪されていることがよくありました。それは両親がそうせざるを得なかったのです。ですからさまざまな論争が起きました。また、こういった人たちは次世代を養育する能力があるのかなど、論争が尽きません。
また、意思能力に関する客観的認識と主観的認識の差があります。例えば、科学的な方法でもって、陳博さんもアイルランドの法律の例をおっしゃっていました。イギリスは関連の法律が既に採択されていますが、意思能力に関する認識は主観的認識の干渉はないと思います。
1990年代後期に、専門家であったとしても、四つ以上の偏見があるということです。「多くの能力を喪失している」「仕事ができない」「自ら自主的な決定ができない」といったことです。障害者はやはり能力はあるのですが、法律で当事者がこういった申告の権利をなくす。そして、例えば障害者協会といった第三者法人による代行で申請を行っていく。そういったことも必要だと思います。
点字・手話通訳といったコミュニケーション設備が不足しています。最近、台湾で多く論争となっているのは、それは保護なのか、それとも制約なのかということです。例えば認知症や自閉症など、精神病の人が不動産の取引をするのですが、金持ちやお年寄りをだますということがあります。金融取引、売却などの資産の取引において、台湾の銀行などは、障害者が手続きをするときに能力がないと考えています。
それに対してさまざまな抗議がなされているのですが、さまざまな障害者のシステムの中で、例えば保護するべきだと考える人もいますし、金融機関は、あなたのお金、家、株なので、それを売るリスクはない、でも、制度的には規範化すべきだ、そして私たち金融機関はその規範にのっとってやっていくという考えをしているところもあります。
保険商品でも同じです。台湾の保険商品法109条では、こういった保険商品の購入や保険金の支払いに制約があります。
また、精神障害者の精神鑑定の必要性の判断です。これは裁判官や検察官の自由心証に委ねられています。これは裁判所が費用を負担する必要があるからということもあり、精神鑑定の実施を望まないという状況があるのです。こういった状況はよく発生しています。
また、訴訟過程においても一つのケースがありました。非常に賢い方で、大学で先生をしたこともある方が、身柄を拘束されました。もう亡くなられましたが、放火をして4人を殺害したという訴訟がありました。精神病が発現したために、その治療を受けたいということを何度も言ったのです。自己保護権ということです。そういうことがありました。
これも同じように、12条の中でこういった第三者がこれに対応することができるのか。例えば、裁判官はそれを認定しない、けれども自ら判決したいということですが、こういった法的能力の行使に関しての権力です。やはり同じようなケースがありました。以上です。あと5分ほど時間がありますね。
どうしてこのDVDを見てほしいと思っているかというと、私の教授がどうして私のこのパワーポイントを事前に見たかというと、例えば就職などさまざまなところで法律の平等ということが12条では大事にされているのです。この3年間の活動を通じて法律の修正や運動やさまざまな面で平等を求めてきていますが、日本の沖縄の一つの協会とも交流を行いました。これは重度の身体障害者に関する2分間のビデオです。これは中国語と英語の字幕があります。音声はありません。
<映像上映>
私たちは4泊5日の訓練でした。潜水の免許を取りました。
ありがとうございました。

The real challenges to article 12, “Equal Recognition”before the law
第12条実施への挑戦――障壁ある法は決して法にあらず

Eva Teng
Secretary General, The League For Persons with Disabilities, R.O.C
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