第3章 要因連関図

第3章 要因連関図

1.カードのグルーピング → 脱文脈化のち再文脈化 

カードのグルーピング方法についての手順:
1枚目のカード:目の前にあるカード(バラバラにしたもの)を、ランダムに1枚出す。そのカードが自立した情報として意味をなすかmake senseするかどうか点検する。意味をなさないものは、いったんはずしておく(が、捨てない)。意味をなす場合、2枚目のカードをランダムに1枚出して、1枚目のカード情報に対して、同じカテゴリーならY(はい)、違うカテゴリーならN(いいえ)。このとき言葉を補えばわかるものは、文章を書き替えてもよい。

情報処理(Information Process)は、3枚目以降から複雑になる。Y(Yes同じ)かN(No違うか)。同じであれば近くに、違えば遠くに置く。これを手作業でやっていく。直観で判断すること。バイアスがかかるのは、やむをえない。
YかNかの判断のことを二値論理という。論理過程とは、分析(分ける)と総合(まとめる)の集積をいう。分析は「違う」、総合は「同じ」、このYかNかの判断は二値論理に従う。

2枚目は1枚目に対してYかNか。
3枚目は2枚目に対してそれぞれYかNか。

※二値論理
二値論理とは、1かゼロかのいずれかの値しかとらない論理を言う。すなわち論理は、「分ける」(違う)と「まとめる」(似ている)の二つしかないので、論理は基本的に二値にしかならない、これが二値論理。大脳の神経シナプスは二値論理でつながっている。AI(Artificial Intelligence人工知能)はヒトの大脳を模倣したもので、基本的に二値論理でできあがっている。

※情報処理(Information Process )
Processは「過程」でもあり、「加工」の意味もある。データコレクションの段階で1次情報をゲットするときにすでに情報加工は起きている。聞き手のバイアスを織り込むことは避けられない。
ディスカッションの記録には、一定の加工がはいる。
同じグループのブロックができる。データユニットが100でも200でも400でも、1セッションでのグループ分けは20〜30くらいに収まるとほぼ妥当。この情報ユニットの分類による各グループがカテゴリーに対応する(後述)。情報ユニットが増えてもカテゴリーは30以上増えない(経験則)。
カテゴリー数がそれ以上増えないとカテゴリー飽和という。ユニット数が増えたからといってカテゴリー数が増えるわけではない。

※1グループの中に情報ユニットが10くらいだと、そのまとめかたはかなりアバウトだと考えられ、グループをさらに細分化できるかもしれないので、再点検すること。

情報ユニットにはたったひとつ、どこにも属さないはみ出すものが出てくることがあるが、はみだしたもの(はなれザルのこと。はなれザルの詳細は本章2節と4節参照)はそのままにする。無理やりどこかに入れない。1つのグループにたったひとつの情報ユニットしか属さないこともある。

図2 Yes/Noカテゴリー
【省略】

2.カテゴリー化

グループの中にある複数の情報ユニットの共通点を言語化する(言葉にする)。言語化はキーワードではない。何についてではなく、それ自体が独立したメッセージ(意味のわかるメッセージ)になるようにする。たとえば、「職場の人間関係」だけでは、意味がわからないので、So what? 「で、なんだ?」テストをする。「で、なんだ?」と問いかけていって、職場の人間関係は良好ということが言いたいのなら、「職場の人間関係は良好」という言説レベルの言語化をすること。
※テーマ(例:職場の人間関係)でなく、コンテンツ(例:職場の人間関係は良好)を書くこと! 意味のわかるメッセージを書くこと!

1次情報に密着した形でメタ情報(上位カテゴリー)を生産することを表札作りという。表札作りには2つの方法がある。
(1)1次情報のなかから共通する発言をそのまま複製する。
(2)1次情報から共通することがらをまとめあげた別のことばをつくり出す。

※表札は、意味のあるメッセージ。単語だけは×。たとえば「うえのゼミ」だけでは意味がなさない。「きびしいうえのゼミ」とするとか。コツは、1次情報の中からメタ情報を作ること。
はなれザル状態(後述)のときは、対応する1枚のメタ情報をつくる。

※1グループに情報カードが10以上あるときは、そのなかに複数のカテゴリーが含まれていないか点検し、さらに下位分類する。

すべてのグループのカテゴリー化が終了したら、表札(メタ情報)だけを表に出し、1次情報をゴムやクリップで留めてまとめ、見えないようにする。目の前に20〜30のメタ情報だけが見えるようにする。次の段階の情報処理は、そのメタ情報全体を視野に入れてマッピングをおこなう。

3.マッピング

メタカードの数はそれぞれ、違うものは遠く、似ているものは近くに置いてマッピングする。マッピングが完成すると見取り図となる。
その後メタカードの1次情報を復元して、模造紙全体に貼りつける。今回は付箋をカードとして利用しているのでそのまま貼っていく。最終的にグループ全体が2次元平面上に配置される。これがマッピング。
模造紙がない場合、あるいは模造紙を広げる場所がない場合、A4用紙で代用できる。A4用紙を使う場合、カテゴリー化した1グループごとに、A4用紙1枚を使う。したがって、1つのカテゴリーが、それぞれA4サイズの用紙1枚に納まるので、それを積み重ねればまるで紙芝居のようになる。

※情報ユニットを20ほどのカテゴリーに分けることができれば、A4用紙でOK(20枚の紙芝居のような感じ)。目安として、元の情報ユニット数が180〜200の範囲だと、模造紙1枚でおさまる。

4.チャート化(関連付け)

カテゴリーとカテゴリーとのあいだの論理的関係には、以下の3つがあり、3つしかない。

(1)AゆえにBが起きる=因果
(2)Aが発生すると同時にBが発生する=相関
(3)AとBが対立する=対立
分析(分けて切る):AとBが違うこと
統合(まとめあげる):AとBは同じこと
図3 チャート化(関連付け)

※論理関係には「同じ」か「違う」かの二値論理しかない。そのうち因果関係はAとB複数の要因のあいだに、時間的な前後関係がはっきりしているものをいう。相関関係は時間的な前後関係がはっきりしないか、同時性があるものをいう。(因果関係とは、Aが成立したあとに、高い蓋然性でBが成立することをいう。)

以上のように、すべてのカテゴリー間に論理的関係(因果・相関・対立)を想定して記入すると、それを要因連関図(チャート、海図ともいう)という。KJ法では、「曼荼羅図」(多数の仏の間の関係を2次元空間のなかに配置したもの)とも呼ぶ。
特定のカテゴリーが、チャートにおいてどこからもつながらない場合、「はなれザル(群れにどうしても入れてもらえない猿)」のままにしておく。はなれザルは無理につなげないが、同時にデータからも落とさない。
要因連関図をつくるところまでで、質的分析法の作業は一段落する。