開催報告(2016年3月21日開催)シンポジウム「G7伊勢志摩サミットの主要論点――国際開発の新しい潮流を踏まえて」
2016年3月21日(月・祝日)に、立命館大学衣笠キャンパスにて、シンポジウム「G7伊勢志摩サミットの主要論点――国際開発の新しい潮流を踏まえて」(主催:国際開発学会社会連携委員会・JASID塾/共催:2016年G7サミット市民社会プラットフォーム・関西NGO協議会・立命館大学生存学研究センター)が開催されました[企画概要](外部リンク)。研究者や学生・院生から、国際機関のスタッフ、市民団体で活動されている一般の方々まで、多様な立場の人々が多数来場され、盛会となりました。
柴田哲子氏の報告「G7サミットのコンテクスト・アジェンダ全体とNGOによるアドボカシー」では、サミットの概要が説明されたのち、①G7の位置づけの相対的な変化、②持続可能な開発目標(SDGs)採択後、初のG7サミットであること、③日本が国連安保理非常任理事国となった年にG7議長国となったこと、④8年ぶりに非欧米圏で開催されるG7サミットであること、というコンテクストが解説されました。そのうえで、本サミットのアジェンダと、必要なNGOによるアドボカシーが詳細に指摘されました。
稲場雅紀氏の報告「G7伊勢志摩サミット 保健分野で問われることは何か?」では、まず、①SDGsの本来の考え方は「我々の世界を変革する」であること、②MDGsとSDGsの保健における違い、③UHCと保健危機対応ガバナンスという競合する2つのアジェンダ、といった点が指摘されました。そのうえで、(a)UHC実現に必要な取り組み、(b)UHC視点をもったNGOの活動、(c)UHCを達成するための連携のありかた、が提言されました。
大野容子氏の報告「G7サミットのアジェンダ――SDGsと国内実施」では、「アジェンダ2030」の原則に関する説明のあと、日本が「アジェンダ2030国家実施計画」を策定するに際して必要となる方向性、策定における枠組みのありかた(ステークホルダー参画による実施)が提案され、そのために現行施策・政策の「見える化」が必要となることが指摘されました。そして、米国・コロンビア・ドイツ・スウェーデンの動向を紹介したうえで、日本では今後、国内NPOセクターとも協力しながら、SDGs議員連盟の設立に向けた働きかけが必要となる、と提言されました。
会場から寄せられた質問・意見には、ネオリベラリズム的動向に対する危機感など、本質的な要素が凝縮されており、それに対する応答も非常に密度の濃いものとなりました。
(立命館大学衣笠総合研究機構准教授 村上潔による開催報告を掲載)