開催報告(2015年9月26日開催)「放射能が降ってくる――ビキニ事件と科学者西脇安」展関連企画 山崎正勝講演会「核時代を生きた科学者 西脇安 ビキニ事件からラッセル・アインシュタイン宣言まで」

掲載日: 2015年11月06日

 2015年9月26日(土)に生存学研究センターは、講演会「核時代を生きた科学者 西脇安――ビキニ事件からラッセル・アインシュタイン宣言まで」を立命館大学国際平和ミュージアムで開催しました。この講演会は、同ミュージアムで9月12日から30日にかけて行なわれました「放射能が降ってくる――ビキニ事件と科学者西脇安」展の関連企画です。講師として山崎正勝氏(東京工業大学名誉教授)、特定発言者として安田和也氏(東京都立第五福竜丸展示館主任学芸員)をお招きし、約40名の参加者とともに活発な議論が行なわれました。

 講師の山崎氏は、日本の戦前戦後の核兵器および原子力技術の歴史に造詣の深い科学技術史の研究者で、昨年には東京工業大学博物館にて「核時代を生きた西脇安展を企画されました。立命館大学での展示は、この東京工業大学の巡回展でもありました。

 山崎氏からは、ビキニ環礁におけるアメリカの水爆実験で多くの漁船や現地住民とともに被災した第五福竜丸について、そして西脇安氏を含む複数の大学チームによる第五福竜丸の調査の内容について、ビキニ事件の被害を世界に訴えるためのヨーロッパ訪問の詳しい旅程やそれを裏付ける新聞資料、この西脇氏のヨーロッパでの報告が核廃絶を訴えるラッセル=アインシュタイン宣言へとつながっていった経緯について、そして2011年に逝去された西脇氏が遺した資料の整理についてなど、新事実も含め、豊富な画像資料とともに大変充実した内容をご講演いただきました。

 特定発言者の安田氏からは、西脇安氏の個性や研究の姿勢について、西脇氏が晩年に第五福竜丸展示館をはじめて訪問された際の印象的なエピソードや、2009年の静岡での3・1ビキニデーでの西脇氏の報告などをまじえてお話しいただきました。また、第五福竜丸展示館の活動についてもご紹介いただきました。第五福竜丸は練習船として再利用された後、一度は夢の島に廃棄されましたが、市民の働きかけによって保存されることになりました。第五福竜丸展示館では、福竜丸の船体の実物を観ることができるほか、ビキニ事件について学ぶことができます。今回の展示企画でも、展示館のパネルや、第五福竜丸の模型、福竜丸に降り注いだ死の灰、ガイガーカウンター、汚染されたマグロのウロコなどをお借りし、展示しました。

 質疑応答では、フロアから、歴史について、また現在の日本での放射能汚染についてなどの質問があり、活発な議論がなされました。この場を借りて、講師の山崎氏、特定発言者の安田氏、そして参加いただいた方と開催にご尽力いただいたみなさまに御礼申し上げます。

(本研究センター専門研究員 中倉智徳さんによる開催報告を掲載)

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