2022年5月:衣笠キャンパスWHILL実装実験2

文責:宮内沙也佳・大谷いづみ・川端美季
撮影:宮内沙也佳

2022年5月7日 立命館大学衣笠キャンパス WHILL実装実験

生存学研究所アクセシビリティ・プロジェクトのメンバーに加え、APU学部生の田場さんにも参加いただき、衣笠キャンパスのバリアチェックをパーソナルモビリティWHILLに乗って行いました。大谷いづみ先生がzoomで自宅からリモート参加し、教室内や建物内トイレなど一緒に確認しました。

場所:創思館・キャンパス内建物の入口・キャンパス内の自販機


写真1:WHILL複数(今回は6台)で、キャンパスで並んでいる移動する様子は目をひきました。

@創思館

  • 教室内のコンセントプラグの位置は低いので、車いすに乗っていると、使いにくいという声がありました。
  • コンセントの位置が低く、タコ足タップも床に横たわっているため、車いすに乗って教室に設置されたコンセントを使用するには難しいことが分かりました。

写真2・3:車いすでコンセントプラグに手を延ばす様子。

  • 創思館303・304教室の個別の机も、403・404教室の長机も車いすの高さと合っていないことがわかりました。サイドバー(車いすの肘置き部分)が可動式のため上に上げることはできるが、発進等の動作に時間を要することになることがわかりました。各教室には、車いすユーザーのための机が予備的に置かれてあり、常設している机をどかして、それらを設置することができるようになっています。また、車いすの高さなどはメーカーによって異なることもあるので、その点もまた考えてみたいと思います。

写真4-6:常設の机を車いすのまま使う様子

写真7・8:個別のキャスター付の机を車いすのまま使う様子

  • 創思館3階のラウンジにある机は車いすと比較的高さが合っていました。ラウンジのテーブルに備わっている椅子は、キャスターが付いていないものが多いが、キャスター付きの椅子もあり、それを動かすことで車いすユーザーでもテーブルが使用しやすかったように思います。また車いすユーザーが問題なく使えるデスクが常設されており、テーブル側面に車いすのマークのシールが貼られていて、ラウンジのスペースに車いすユーザーの存在が意識されているようでした。

写真9-12:創思館3階のラウンジの車いすユーザーも使用できる机を使う様子

  • 創思館教室ドア
    利き手が右手のユーザーにとって、左あけのドアは相対的に開けやすいことがわかりました。右手でハンドルをコントロールして、左手がドアを開けるためです。しかし、力が入らないと一人でドアを開けられないということもわかりました。自動ドアやスライドドアのほうが開けやすいのはもちろん、利き手により、ドアの開け方向に開けやすさに影響を及ぼす、という声もありました。地震とか火災の緊急事態時の避難する際にも、スライド式であれば動きやすいのではないかと思われました。

写真13-15:車いすでドアを開ける様子

  • 創思館の教室にある様々なケーブル類が混線していることから、教室入口より奥に移動する際に支障をきたしています。(車いすの車輪でケーブルを踏んでしまうため、ケーブルの故障につながる恐れがある。)教室の重いドア、床を這うケーブル類は、車いすユーザーだけでなく、松葉杖を用いる下肢障害者や高齢者にとってもバリアフルです。特に床を這うケーブル類は、杖が引っかかって転倒する原因になり、視覚障害者にもバリアフルです。

写真16:創思館教室の床にあるケーブル類と車いす

  • 2Fの多目的トイレでは、少しスペースが狭いものの、洗面台は車いすユーザーに合わせて作られていることが確認されました。

写真17・18:2階多目的トイレの様子

@衣笠キャンパス内の道とキャンパス内自販機

  • キャンパス構内の視覚障害者用の誘導ブロック(特に創思館からバス停に向かう出入り口付近)が不安定な箇所があったため、車いすが転倒などの怪我を引き起こすかもしれないと思われました。
  • 創思館前の点字ブロックの中に、グラついている箇所があり、保育園年長くらいの子どもがそこで遊んでいるのを母親が「危ない」と注意していたのが印象的でした。
  • 自動販売機までの間に段差が置かれている箇所がいくつか確認されました。それぞれの場所で自販機の仕様が異なっており、最上部のボタンが押せるもの、押せないものがそれぞれ確認できました。ボタンの位置だけでなく、小銭の入れやすさやお釣りの取りやすさ、キャッシュレス機能の取り扱い、商品の受け取りやすさも自販機ごとに異なっていることがわかりました。

写真19:明学館前の自販機を車いすで利用する様子

写真20-23:キャンパス内の人口芝と充光館間の自販機を利用する様子

写真24・25:学而館の西側の自販機。段差が大きいため、車いすユーザーは利用できないことがわかります。

写真26・27:至徳館前。至徳館前の自販機を利用する様子

写真28:研心館前の自販機。段差はあるが、WHILLだと乗り越えられる段差。他の車いすでは難しいかもしれません。

@明学館入口

  • 明学館前のスロープは、1本目、2本目、3本目それぞれの幅が異なり、スロープ入り口1本目(出口3本目)が1番広くなっていました。

写真29-31:明学館前のスロープを移動する様子

  • 明学館1階の外の自動販売機のあたりに砂袋が散らっていて、車いすが回転しにくく、自動販売機に近づきにくかったです。

写真32-35:明学館前の砂袋、車いすで自販機を利用する様子。

実装実験でのその他のコメント

  • 車いすユーザーだけでなく、低めのコンセントやグラついた点字ブロックなどは誰もが「気」をつかっている部分でもあると思うので、「誰にとってもうまくいっていない部分」なのかもしれないと思った。
  • 移動中の会話で「食事場所」の話が出ており、個人的にバーやカフェ等は階段必須(地下やビル内のイメージ)かつコンパクトな空間といった印象を抱いていたので、車いすユーザーの食事場所が気になった。(「車いす=非コンパクト」という固定観念が多くの人にあると予想されるため)