開催報告 (2015年2月11日開催)立命館大学生存学研究センター若手研究者研究力強化型プロジェクト「規範×秩序研究会」主催 公開研究会「社会学と規範理論のあいだ―公共社会学の再検討」

掲載日: 2015年03月26日

 2015年2月11日(水)、立命館大学生存学研究センター若手研究者研究力強化型プロジェクト「規範×秩序研究会」は、関西学院大学社会学部教授の盛山和夫先生をお招きし、「社会学と規範理論のあいだ―公共社会学の再検討」と題する公開企画を開催しました。

本センター運営委員である本学先端総合学術研究科井上彰准教授より趣旨説明がなされた後、盛山先生より「なぜ公共社会学か」と題する講演を行なっていただきました。
盛山先生は、社会学の現状について、多様で活発な研究状況の一方、そのアイデンティティが希薄化した「危機」にあるとして、その再建のために「公共社会学」を提唱されています。今回の講演では、「なぜ公共社会学か」という問いに対し、多様な実証研究が示す共同性やその亀裂のあり方を、「よりよい共同性」を志向する理論的な共同知としてまとめあげていくものとして、社会学の探究課題を明確にされました。
次に研究会メンバーである櫻井悟史(本学衣笠総合研究機構専門研究員)が、「死刑制度についての議論と学問的分業――死刑合憲判決の歴史社会学的検討」と題する報告を行い、日本の死刑制度が存置された戦後直後の経緯に関する歴史社会学的検討に加え、歴史社会学的検討では問えない「なぜ人を殺してはいけないのか」という倫理学的問いを、「学問的分業」のなかで問うていくことの必要性を示しました。
そして同メンバーである中倉智徳(衣笠総合研究機構客員研究員)が、「公共社会学における客観性とタルド社会学における客観化」と題する報告を行い、盛山先生の提唱された公共社会学の探求するべき「共同性」という理念や「客観性」についての問いを提出し、タルド社会学における客観化の議論と併せて検討を行ないました。
その後、それぞれの報告に対する盛山先生のコメントに引き続いて、規範理論と社会学の関係や、倫理学的問いと客観性の両立についてなど、学内外からの30名ほどの参加者とともに良質でインテンシブなディスカッションが行なわれました。
 本研究会では、今後も継続して、学内外の研究者と協力関係のなかで、生存をめぐる規範と秩序について検討してまいります。最後になりましたが、本企画にご協力いただきました盛山先生ならびに参加者の皆様に感謝申し上げます。

参考情報等)

「規範×秩序」研究会 特別企画 「社会学と規範理論のあいだ―公共社会学の再検討」
規範×秩序研究会
盛山和夫『リベラリズムとは何か――ロールズと正義の論理』
井上彰・田村哲樹編『政治理論とは何か』

(中倉智徳・衣笠総合研究機構客員研究員による報告を事務局にて一部編集のうえ掲載)