開催報告 (2015年1月17日開催)研究会「身体とテクノロジー:アンドロイドは身体と老いの夢を見るか」

掲載日: 2015年03月26日

 2015年1月17日に、立命館大学朱雀キャンパスにて、立命館大学生存学研究センター主催で行われた研究会「身体とテクノロジー:アンドロイドは身体と老いの夢を見るか」が開催されました。

 まず、立命館大学大学院映像研究科望月茂徳准教授によって、生死に直接関わりをもたないようなテクノロジーを取り上げながら老いと身体について考えることで、生存をめぐる科学技術についての知見を深めようとする本研究会の企図について説明されました。
次に、ベルリン自由大学国際研究センター中島那奈子フェローより、「ダンスするロボットは老いるのか――「老いと踊り」研究からの問題提起として」と題して講演が行われました。中島さんは、老いと身体を語る上での背景として、西欧文化圏における、かつてダンサーの老いについて語ることはタブーであった時代から現代の様々な身体表現への取り組みの過程について説明されました。一方で、日本においての「踊り」は、老いれば老いるほど良くなるとされるような、芸道としての人格が重要視されうることについて述べられました。いずれも、ダンサー/踊り手の人格を重視した上で、身体の老化や死も包括しながら身体がなにを生み出すか、ということが焦点になっており、対比としてプログラムされた老いや死が存在しないというロボットについて言及されました。

 次に、北陸先端科学技術大学院大学ライフスタイルデザイン研究センター藤波努教授より「夢見の体、あるいは体の夢を見ること――認知症高齢者の世界への非還元的接近」と題した講演が行われました。遠隔操作型のアンドロイドである「テレノイド」と認知症高齢者の研究や身体重心の加速度を計測、分析を行う研究といった、存在感について科学技術を用いて解明しようとする研究について説明されました。科学技術を用いて「昏睡状態、寝たきりの人であっても、健常者から見えていないだけで何らかの活動はあるのではないか」という仮説を立てると同時に、外部の観察から断定しきれない認知症高齢者の(心の)世界ではなにが起きているのかを解釈していくことの困難さについても述べられました。

 来場者を交えたパネルディスカッションにおいては、両講演を踏まえた上で、強さ・効率性だけを目的としない科学技術研究のあり方として、例えば「弱く壊れやすい、機能が限定されているロボット」を想定したときに、人間はどう反応するのか、についての研究によって、物と人間、他者と人間の相互作用、あるいは介護における関係性について新たな知見が得られるのではないか、という問題提起がなされました。

参考情報等)

◆望月茂徳
http://www.arsvi.com/w/ms14.htm
https://www.ritsumei-arsvi.org/member-25
http://mochizukiss.jp/

◆立岩真也「質問」
http://www.arsvi.com/ts/20120923.htm

(本学映像学部・映像学研究科望月茂徳准教授による開催報告を掲載)