開催報告 (2014年12月26日開催)研究ワークショップ「健康と平等の規範理論」

掲載日: 2015年03月26日

 2014年12月26日(金)立命館大学衣笠キャンパスにて、立命館大学生存学センター主催・人間科学研究所共催による研究ワークショップ「健康と平等の規範理論」が開催されました。

 今回は、(カナダ)マギル大学・広瀬巌先生をお招きし、Bognar Greg先生との共著” The Ethics of Health Care Rationing: An Introduction”の内容を踏まえた講演をしていただきました。本書は、集団(population)レベルでの生命倫理学を構想し、医療資源の配給(rationing)という主題を分析的倫理学の手法から整理します。中心メッセージは平等主義と広義の功利主義から道徳的に望ましい医療資源配給を探究・実現することの意義にあります。

 広瀬先生の講演に対して、本学文学部・林芳紀先生は理論的観点から集団レベルの生命倫理学を打ち出すことの新規性に関することなどをコメントし、本学人間科学研究所所長・松田亮三先生は政策的観点から本書が与えうる今後の日本の医療資源配給への示唆などを述べました。フロアーを交えた総合討論では、生存学研究センター長・立岩真也先生からの医療資源の稀少性をめぐる論点などがありました。

 その後、東京理科大学・堀田義太郎先生の報告「運の平等主義と差別――S. Segall, Equality and Opportunity (2013)の批判的検討を通して」では差別の悪質性に関する考察があり、医療科学研究所・村上慎司の報告「ヘルス・ケイパビリティと健康の衡平性――規範理論と健康政策の架橋に関する試論」では健康の衡平性の分節化が検討され、両名の報告に対して広瀬先生からの貴重なコメントと参加者との質疑応答がありました。

 今回の企画は、当日に司会を担当された本学先端総合学術研究科・井上彰先生が広瀬先生にワークショップの開催を提案していただいたことを契機として実現されたものです。この場を借りてお礼申し上げます。また、開催に関する協力をしていただいた関係各位と当日の参加者すべてに感謝します。

参考情報等)

研究ワークショップ「健康と平等の規範理論」
Bognar, Greg and Iwao Hirose “The Ethics of Health Care Rationing: An Introduction”
松田 亮三・棟居 徳子 編「健康権の再検討──近年の国際的議論から日本の課題を探る」(生存学研究センター報告書[9])

(公益財団法人医療科学研究所リサーチフェロー、本学衣笠総合研究機構客員研究員村上慎司さんによる)