開催報告 (2014年12月13日開催)第2回「精神分析と倫理」研究会――「発達障害」論の深化のために――

掲載日: 2015年03月26日

 立命館大学生存学研究センターは、2014年12月13日(土)、本学衣笠キャンパス学而館第3研究室にて、第2回「精神分析と倫理」研究会――「発達障害」論の深化のために――を開催しました。本研究会は、精神分析の知の深みを経由しつつアクチュアルな課題に接近し、現代の倫理を問い直すことを目的としています。第2回研究会では、第1回研究会(「発達障害」をめぐって)に引き続き「発達障害」を論点として掲げ、発表者の松本卓也さん(自治医科大学/精神科医)と牧瀬英幹さん(大西精神衛生研究所付属大西病院/心理士)、コメンテーターの池田真典さん(NPO法人ICCどりー夢共同作業所所長/精神保健福祉士)、渋谷亮さん(成安造形大学/教育思想史)をはじめ、参加者全員で上記の問題関心を共有しました。

松本さんは、「ラカン派における自閉症論――精神病との区別」と題し、精神分析は自閉症を「悪い子育てによって生じる幼児期の精神病」と捉えてきたという批判を受けて、ラカンから現代ラカン派の自閉症に関連する理論展開について報告されました。そして、現代ラカン派は、精神病と自閉症をはっきり区別していることを明らかにし、その分析から自閉症者特有の治療アプローチについて考察する必要性を説いてくださいました。
牧瀬さんは、「発達障害における『生』と『死』の問い」と題し、ご自身が担当された発達障害児の症例分析を報告されました。発達障害児の症例はもちろん、その母親の詳細な語りから児童の症例について分析することで、その児童における神経症的なものが垣間見られました。治療現場における「発達障害」という診断に対する問題点および診断の困難さについて、牧瀬さんの詳細な症例報告によって議論することができました。

研究会には他大学及び他府県から多くの参加者が集い、活発な議論が展開されました。精神分析は精神医学の領域において(DSMⅢ以降)メジャーな学問ではなくなってしまったかもしれません。しかし、「発達障害」をはじめ、精神分析が現代の諸問題にとって非常に身近な学問であること、そして、精神分析が臨床現場において今も重大な意義を持っていることを、この研究会全体を通じて感じることができました。

※DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental
Disorders:邦訳『精神障害の診断と統計の手引き』)は、アメリカ精神医学会による精神疾患の診断分類基準のためのマニュアルであり、世界的に使用されている。DSM-Ⅲは1980年に出版された。また2013年5月に発表されたDSM-5が最新のものである。

参考情報等)

第2回「精神分析と倫理」研究会――「発達障害」論の深化のために
第1回「精神分析と倫理」研究会――「発達障害」をめぐって
発達障害

(日本学術振興会特別研究員および本研究センター客員研究員の小西真理子さんによる記載報告を掲載)