開催報告 (2014年11月20日開催)ジェンダー論セミナー④ 映画「何を怖れる」上映&トークセッション

掲載日: 2015年03月25日

 立命館大学生存学研究センターは、2014年11月20日(木)、本学衣笠キャンパス創思館カンファレンスルームにて、ジェンダー論セミナー④ 映画「何を怖れる」上映&トークセッションを開催しました。

 はじめに、本研究センターの運営委員である上野千鶴子・本学大学院先端総合学術研究科特別招聘教授より、本企画において、1970年代以降のウーマン・リブ運動を生き、闘い、そして老いた物語であるドキュメンタリー映画「何を怖れる」を放映する趣旨が説明され、その後に映画上映がおこなわれました。
 映画上映後には、上野教授を司会進行役として、同映画の監督である松井久子監督を迎えて、参加者をまじえたトークセッションがおこなわれ、映画のタイトルをめぐる裏話や、1970年代を生きた女性の闘いの時代と現代の若者や女性をめぐる状況の違い、海外での女性活動との比較、フェミニズム運動とバックラッシュといった議論がおこなわれました。
 映画「何を怖れる」では、リブ運動を担った人びとのインタビューを通じて、日本を代表するフェミニストたちの思想や、そこで生み出された活動の歴史が紹介されるとともに、リブ運動は労働問題や男女共同参画といった活動にとどまるものではなく、優生保護、戦争・原爆・慰安婦、沖縄といった戦後日本のさまざまな「生」をめぐる社会問題と連関した取り組みであり、さらに、介護問題として「老」をめぐる課題であることが描かれていました。本作品は、過去の記録にとどまるドキュメンタリーであるだけでなく、運動を担った人びとによる次世代へのメッセージで締めくくられています。

 今回の企画は、生存学が掲げる「病い、老い、障害、異なりをもつ身体」といった主題とも共通する課題に立ち向かってきた「女性」の現代史を考える貴重な場となりました。
 なお本映画は、全国各地で上映活動がつづけられており、また、映画出演者の声は松井久子編『何を怖れる』(岩波書店、2014年)に収録されてもいます。映画・編著書と通じて、日本におけるリブ運動を生き、闘い、そして老いた女性の現代史を考える機会としていただければと思います。

参考情報等

松井久子編『何を怖れる――フェミニズムを生きた女たち』岩波書店(2014年)
ドキュメンタリー映画 何を怖れる -フェミニズムを生きた女たち-
《ジェンダー論セミナー ④》映画「何を怖れる」上映&トークセッション
村上潔「リブとして「男女雇用平等法」に反対する論理――京都の運動の事例から」

(本学衣笠総合研究機構渡辺克典准教授による開催報告を一部編集して掲載)