開催報告 障害学国際セミナー

掲載日: 2014年12月04日

 障害学国際セミナーは、生存学研究センターと障害者インターナショナルの韓国の組織である障害学フォーラムが企画した国際研究交流です。2010年度に韓国で初めて開催されて以来、日本と韓国で交互に行われ、今年度で5回目となります。 

 今回、2014年11月20日(木)に韓国・ソウル市にあるイルムセンターにて開催された〈障害学国際セミナー2014〉では、新たに中国からの参加も加わり、日本、韓国、中国の研究者・当事者の活発な議論や研究交流が行われました。【第1部】ではメインテーマである「障害と治療」についての2本の報告と17本のポスター報告、【第2部】では、臨床試験に患者が自律的に関与した事例を分析した報告と、視覚障害教師のサポート体制の有効性と問題点を明らかにした報告、【第3部】では中国の障害者・市民社会組織による活動についての3本の報告が行われました。以下、【第1部】を簡単に振り返ってみたいと思います。

 はじめにイム・ミンチョルさんが、手術経験のある低身長障害者へのインタビュー調査をもとに、手術を受けることを自明のこととする社会や親/医療者が当事者に与える影響と障害アイデンティティとの関係について報告されました。フロアからは手術を受けることでアイデンティティが形成されたという質問者自身の経験が語られました。

 続く安孝淑さんによる報告「難病と障害の共存」への質疑応答では、「障害者は社会の理解を得なくてはならないのか」という趣旨の質問がありました。安さんはALS患者が生きていくためには人工呼吸器管理などの医療的ケアが欠かせないため、社会の理解は必要であると返答されました。

 イムさんと安さんの報告で共通していたことは、十分な医療情報が当事者に提供されることがいかに重要かということでした。【第1部】の議論を通じて、治療を社会モデルと対立的に捉えることではみえにくい障害の個別性や各障害がこれまで医療とどのように関わってきたのかといった論点が浮かび上がってきました。

 今後、三カ国の参加者の情報共有をどのようにしていくのかは課題となりましたが、翻訳や当日の通訳にご尽力いただいたクァク・ジョンナンさん、安孝淑さん、イム・ドクヨンさん、李旭さん、シン・ジュヒョンさんほか〈障害学国際セミナー2014〉に関わられたすべての皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

(本学大学院先端総合学術研究科院生である坂井めぐみさんによる報告を掲載)