開催報告 「第8回 目の前のアフリカセミナー 『誰のための公衆衛生か』」が開催されました!

掲載日: 2014年06月10日

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立命館大学生存学研究センターは、去る5月22日(木)、衣笠キャンパス敬学館212号室において、京都大学アフリカ地域研究資料センターおよび日本文化人類学会課題研究懇談会「医療人類学教育の検討」との共催で、「第8回 目の前のアフリカセミナー『誰のための公衆衛生か』」を開催し、学生や一般の参加者など約45名が参加した。

今回のセミナーでは、北ナイジェリアの歴史・文化研究の世界的権威であり、イギリスにおける医療人類学の開拓者として当該分野の発展に長年寄与されてきたロンドン大学名誉教授マリー・ラスト先生を特別講師として招き、「ナイジェリアのプライマリ・ヘルスケア対策の背後に潜む特有の政治的問題」と題し、ナイジェリアにおける草の根の公衆衛生を考える鍵となりうる「公共性」の問題について講演いただいた。

公衆衛生は、中央政府や地方政府が民衆の医療行動をコントロールすることを前提としている。しかし北ナイジェリアでは、公共の場こそ人々が自由にふるまう。それは人々が複数の医療を幅広く選択できることだけでなく、医療を担当する役人や政治家が公共医療のための財源を流用することに現れている。この背景には、そもそも医療を含む福祉や互助が個人間で対面的に行われてきた歴史的・文化的な構造があり、植民地政府やナイジェリア政府は抽象的な公共性の導入を表面的にしかできなかったことが挙げられる。

講演の後には、ロンドン大学でラスト先生に師事したご経験をもつ、関西外国語大学准教授の近藤英俊先生に、今回のラスト先生の講演のポイントについて整理いただいた。

引き続き行なわれた会場との質疑応答では、医療という人間の生命に関わる基本的なサービスを望ましいものにするためには何らかの政府による統制的な介入が必要か、それとも「公共性」のヴァナキュラーな理解に基づき、草の根の人びとにゆだねる「自由」を追求すべきかをめぐり活発な議論が展開された。私たちが「グッド・ガバナンス」と呼ぶものが、いかに特定の文化的・歴史的な構築物であるかをいまいちど考える機会となった。

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