2011年度生存学ポスドク研究員、奮闘中!

掲載日: 2011年12月27日

それぞれの紹介

2011年度生存学ポスドク研究員、奮闘中!

グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点では5人のPD(ポストドクトラルフェロー)が働いています。2011年度は、甲斐更紗、加藤有希子、新山智基、堀智久、渡辺克典が目下奮闘中です。以下私たちの活動の一部をご紹介します。

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<写真1:スカイプチャットで会議をする模様。甲斐が聾者であることで始めた試みだが、口頭の会話では味わえない楽しさがある>

渡辺克典、堀智久、甲斐更紗の3人は、2011年11月9日(水)に立命館大学衣笠キャンパスで開かれた国際プログラム、「第二回障害学国際研究セミナー」の開催コーディネイト、運営、さらにポスター発表に携わりました。この国際セミナーの第一回は、2010年にソウルで開かれましたが、2011年は立命館大学に、日韓の障害学に関係する参加者が集まり、報告、討議しました。

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<写真2 渡辺克典ポスター発表の様子>

渡辺克典はこの第二回障害学国際研究セミナーで、「吃音の社会文化的研究とその影響」と題するポスター発表をしました。この発表で渡辺は1940年代から50年代にかけて成立した「吃音の社会・文化的な要因をめぐる研究」を主題にしました。吃音には肉体の問題だけではなく、「聞き手」としての社会・文化的な問題があることを、現代的な視点から改めて提起しました。本年度PDの中で、最も事務作業を華麗にこなす渡辺は、本セミナー開催に向けてのコーディネイトを主体的に行うとともに、普段のPD会議でも常に司会を務めています。(渡辺克典個人ページ

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<写真3 甲斐更紗ポスター発表の様子>

甲斐更紗の本セミナーでの発表は「日本における聴覚障害児をもつ家族への心理的支援」でした。聾者である甲斐は、本セミナーで手話通訳コーディネーターとしても活躍しました。現場主義の甲斐は、日本全国、福祉、教育現場などに拠点を広げて、積極的に聾者支援、障害者支援に取り組んでいます。人好きのする甲斐はみんなの人気者です。院生と一緒に「聴覚障害/ろう(聾)者の言語・文化・教育を考える研究会」活動をし、感情的議論になりがちの「聴覚障害/ろう(聾)者の言語・文化・教育の問題」をアカデミック的に整理しようと取り組んでいます。彼女の活動の一端は、「『研究の現場』:聴覚障害/聾者支援の現場から」からご覧ください。(甲斐更紗個人ページ

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<写真4 第二回障害学国際研究セミナーで会場準備をする堀智久(左)と渡辺克典(右)>

堀智久は渡辺とともに本セミナーの準備、進行を担いました。堀は私たち5人の中でもたいへん世話見のいいPDで、普段の院生との研究会運営等に加え、院生や外部との連携もそつなく行いました。本セミナーのラウンドテーブルの口頭報告では、堀は「日本の障害者運動と家族」について発表しました。障害者の運動を、「家族」と「専門家」という相対する視点から検証する堀の研究は、今後の日本社会のアクチュアルな問題に切り込んでいくことが期待されます。(堀智久個人ページ

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<写真5 自著を袋詰めしてほくほくする新山智基>

私たちの中で一番若い新山智基は、2011年12月に単著『世界を動かしたアフリカのHIV陽性者運動――生存の視座から』(生活書院)を早くも出版しました。何ごとも抜かりなく、かつ素早く行う新山は、本年度も二度のアフリカ調査、2011年12月開催の「アフリカ障害者の10年」セミナーの運営、GCOE「生存学」創成拠点HPの「アフリカ頁」の更新などを、積極的に行っています。(新山智基個人ページ

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<写真6 ジェームズ・パウダリーにインタビューする加藤有希子(中央)/右は副センター長松原洋子教授>

加藤有希子は表象文化論、美学を専門としていることもあり、ここ生存学研究センターでは若干変わり種です。目下、美的なものや芸術が「生存」とどう関わりうるかを模索中です。そのような問題を考える機会として、2011年7月に韓国ソウルで行われたメディア・アーティストであり弘益大学教授であるジェームズ・パウダリー氏とのインタビューに通訳として同伴させていただきました。パウダリー教授らが開発した視線入力装置アイライターは、ALSなどの体が動かない人たちもアートに参画できる道具です。アートに関わる醍醐味とは何なのでしょうか?直観的にはそれは「生存」の根幹に絡む欲望であると感じています。しかしそれがなぜなのか、現在考えているところです。なお、このインタビューの模様は、2012年2月刊行の『生存学』第五号で特集予定です。ご期待ください。(加藤有希子個人ページ

(文責 加藤有希子)