ミニシンポジウム「シン公衆衛生?人間の健康増進を超えて」*イベントは終了いたしました。
2022年9月2日(金)午後14時~18時30分
対面+Zoom配信
立命館大学 朱雀キャンパス1F 多目的室
JR・地下鉄「二条駅」下車、徒歩2分
Zoom ミーティングID: 968 0862 6491
https://ritsumei-ac-jp.zoom.us/j/96808626491
情報保障(文字通訳)あり
主催:ミニシンポジウム実行委員会
共催:立命館大学・生存学研究所
企画趣旨
公衆衛生は、18世紀以降の上下水道や塵芥処理などの都市衛生の実践と体系化に始まったとされます。その後1960年代後半からは、欧米を中心に、「予防」と「健康増進(ヘルスプロモーション)」を重視する「新公衆衛生(運動)」が主流となりました。それは、疾病の「早期発見・早期治療」を目指す医学とは異なった、より前倒しのアプローチといえます。人びとの心配する健康問題の中心が、急性感染症ではなく、非伝染性慢性疾患となったことで、飲酒や食習慣、運動、睡眠、喫煙などの日常生活のあり方が病気のリスクとして取り上げられるようになりました。
さらに、個人のライフスタイルだけではなく、社会環境への介入も、健康や公衆衛生の名の下にすすめられています。健康は人権の一つという思想のグローバル化を背景として、「プライマリヘルスケア」、「ヘルシーピープル」、「ヘルシーシティ」、「健康日本21」などさまざまな新しい意匠が生み出されました。その最新版が、持続可能性を掲げるSDGsです。けれども、COVID-19のパンデミックの不意打ちで、21世紀の主流となるかに見えた非伝染性慢性疾患をターゲットとする健康増進は、揺らぎ、変容しつつあります。
これまで、人文社会系の研究者は、公衆衛生から新公衆衛生の流れを批判的に見直し、個々人の生き方や社会活動の全体に対する監視やコントロールの増大として分析する視点を提示してきました。こうしたアプローチは、ミシェル・フーコーの用語を使って、統治性研究や生権力/生政治の研究と呼ばれています。こうした視座は、今も有効なのでしょうか、それとも、思考の道具箱をアップデートする必要があるのでしょうか。
この集まりでは、揺らぎと変容の渦中にある新公衆衛生の行く末を、新たなステージの公衆衛生(「シン公衆衛生」)として議論します。科学技術社会論(STS)の立場から、ヘルスケア情報のデジタル化を研究してこられた佐々木香織氏、人びとの統治ではなく、環境や自然や住まいなど「非人間」の統治として公衆衛生史を書き換えようとする野心的試みを『窓の環境史』として上梓された西川純司氏をお迎えして、関連の研究分野の院生の発表も交えて討論を深めます。
プログラム
13時30分 | 開場 |
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ミニシンポジウム1 司会 川端美季(立命館大学・衣笠総合研究機構)
14時00分 | あいさつと趣旨説明 「『リスクの医学』と公衆衛生」 美馬達哉(立命館大学・先端総合学術研究科) |
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14時20分 | 講演1(40分発表、5分質疑) 「e-Health, big-data 時代の生政治―Big-Brother イメージの超克」 佐々木香織(札幌医科大学・医療人育成センター) |
15時05分 | 講演2(40分発表、5分質疑) 「自然と共にある生——近代日本の公衆衛生史を書き換える」 西川純司(神戸松蔭女子学院大学・文学部) |
15時50分 | 休憩 |
ミニシンポジウム2 司会 美馬達哉(立命館大学・先端総合学術研究科)
16時00分 | 院生発表1(20分発表、5分質疑) 「戦前期日本における『療養所不用論』と結核療養所の社会的機能をめぐる模索」 塩野麻子(立命館大学・先端総合学術研究科) |
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16時25分 | 院生発表2(20分発表、5分質疑) 「性・遊廓・公衆衛生:日本統治時代の台湾における娼妓の健康管理」 キョク・コウリン(QU Honglin)(立命館大学・先端総合学術研究科) |
16時50分 | 総合討論「人新世における統治と公衆衛生」 討論に先立って10-15分程度のコメント(川端美季) |
18時30分 | 閉会(予定) |