医療社会学研究会主催合評会(立命館大学生存学研究所共催)『〈伝統医学〉が創られるとき―ベトナム医療政策史』(小田なら著、京都大学学術出版会、2022年)*イベントは終了いたしました。

掲載日: 2022年05月11日

書影

  • コメンテーター1 曲虹霖(QU HONGLIN)(立命館大学先端総合学術研究科院生)
  • コメンテーター2 佐藤純一(龍谷大学社会学部客員教授)
  • リプライ 小田なら(東京外国語大学)
  • 司会進行 美馬達哉(立命館大学先端総合学術研究科)
日時 6月11日(土)15:00~18:00
場所 龍谷大学大阪梅田キャンパス(梅田ヒルトンプラザウェスト 14 階)研修室
ハイブリッド開催ですので、Zoom で参加の方は、当日、以下からお入りいただけます。
https://us02web.zoom.us/j/84603190827?pwd=TS9RSlVnc3R3R1YzR2ZSS1VlV1NtQT09
ミーティング ID: 846 0319 0827
パスコード: 444092
zoomへのリンク

趣旨

医療社会学研究会のスピンオフとして、小田なら氏の『〈伝統医学〉が創られるとき―ベトナム医療政策史』(京都大学学術出版会、2022 年)を書評本とする合評会を行います。本書は、ベトナム伝統医学の流れを、フランス植民地期、分断中の北・南ベトナム、統一後という歴史に位置づけたものです。北薬と南薬、東医と西医、民族医学、伝統医薬学などのさまざまなフレームの変遷をたどり、過去からの継続としてではなく、「創られた伝統(E・ホブズボウム)」としての伝統医学の姿を結像させたことは、本書の達成でしょう。

合評会では、近代化の中で発明された伝統医学という視点を共通認識とした上で、「伝統」の果たす社会的機能について、近代国民国家との絡まり合い(著者の言う「制度化」)を切り口として議論します。国家や制度という視点を明示的に入れることは、「多元的医療体系(C・レスリー)」のなかの権力関係や争いのダイナミズムを明らかにするはずです。さらに、アジアにおける「中医学」の土着化、近代西洋医学の植民地医学/帝国医学としての展開、現代社会での代替補完医療などに、議論を広げます。

曲氏からは、本書の要約と台湾医学史(とくに産科医療)研究の観点からコメント、佐藤氏からは、医療社会学の観点からコメント(とりわけ終章で提示された展望の評価)を、それぞれ 30-40 分程度いただき、著者の小田氏からのリプライを受けたうえで、参加者との議論を深めます。

著者:小田なら(おだ なら)

東京外国語大学世界言語社会教育センター講師。同志社大学文学部文化学科文化史学専攻卒業,京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程研究指導認定退学。博士(地域研究)。同研究科および千葉大学グローバル関係融合研究センター特任研究員, 日本学術振興会特別研究員(PD)を経て 2021 年より現職。

著書概要(京大出版会 HP)

「建国の理念を体現し,「われわれの医学」(ホー・チ・ミン)として息づくベトナムの伝統医療。しかし,その「北ベトナム」中心のナショナリズムの物語を離れて歴史を辿ると,さまざまな権力作用,概念のもつポリティクス,実際の治療行為が結実した複雑な「伝統医学」像が顕れる。独立・分断・統一のなかで,近代国家はいかに医療の知識を制度に組み込んだのか。それは担い手たちにとって,いかなる経験だったのか。公定の「伝統医学」をめぐるダイナミズムを描く。」