開催報告「障害者権利条約第1回建設的対話報告会「日本の審査と総括所見(勧告)を受けた今後の条約実施に向けて―記念講演 ヨナス・ラスカス障害者権利委員会副委員長」【2022年9月20日(火)13:00~16:30】」

掲載日: 2022年09月22日

研究所が共催の『JDF 障害者権利条約 第1回建設的対話報告会』が、オンラインで開催され、申し込みは上限の千人で打ち切り、実際の参加者800名という記録的な企画になりました。

(以下、長瀬修より、共催の研究所としての立場を含めた障害者権利委員会とラスカスさんの紹介挨拶です)

長瀬です。JDFのメンバー、また、この報告会の共催をしている立命館大学生存学研究所の一員、両方の立場で建設的対話を含む第27会期の障害者権利委員会の概要とラスカスさんの紹介をいたします。

日本の初回審査を含む、第27会期の障害者権利委員会は3年ぶりに対面での開催となりました。日本以外で印象的だったのはまず、中国の審査について、中国の障害者組織から「中国政府は障害者権利条約を完全実施している」というパラレルレポートが出されていたことです。そして表面的にだけは非常に洗練され、実は背筋が寒くなる建設的対話が実施されました。ニュージーランドの審査において、先住民マオリの障害者が重視されていることが印象的でした。韓国の審査では韓国の市民社会が「T4計画を知っていますか」という言葉を含む団扇をたくさん持参していたのが心に残りました。T4計画とは、ナチスドイツによる障害者安楽死計画のことです。

私たちはすべての人のすべての人権確保の取り組みの一環として、国際協力を含む日本の障害者権利条約実施に努めてます。そうした観点から、日本以外での条約実施にも引き続き、注視したいものです。

今回の障害者権利委員会は、ラスカスさんも携わった「脱施設化のガイドライン」を公表したほか、労働と雇用に関する新たな一般的意見も公表しました。

さて、「障害者権利委員会の取り組みと日本の建設的対話」について、ご講演をいただく、ヨナス・ラスカス教授を紹介させていただきます。ラスカスさんの国、リトアニアと隣国ポーランドが実質的に同じ国だった時代が17世紀を含め、200年以上あったことを私が知ったのはうかつにもラスカスさんと知り合ってからでした。リトアニアは1991年、先日逝去されたゴルバチョフ率いるソ連から独立を回復しています。

ラスカスさんは教育学で博士号を取得し、ヴィータウタス・マグヌス大学社会福祉学部に所属されてらっしゃいます。そして2015年から障害者権利委員会委員を務められ、2期目の2019年からは副委員長として委員会をけん引されてきました。残念ながら2期8年の任期上限を迎え、12月末で退任されるのは条約の推進と委員会の運営にとって大きな痛手です。

ラスカスさんは韓国のキム・ミヨンさんと共に、日本審査では国別報告者として重要な役割を果たしてくださいました。国別報告者を務めるのは日本が最後で11本目です。これまでスペイン、フランス、そしてリトアニアと歴史的に関係が深いウクライナなどの国別報告者を務められました。なお、今回の委員会では、ウクライナの障害者の状況に大きな焦点が当てられ、ラスカスさんはその取り組みにおいてもリーダーを務められました。

昨日、ラスカスさんは津久井やまゆり園にいた方たちの地域移行にも取り組んでいるサービスを見学される他、同事件をきっかけに始められた知的障害者本人グループとも交流されました。こうした機会をラスカスさんご自身が求められました。また、神奈川県の黒岩知事、首藤副知事から要請があり、お二人とも懇談の機会がありました。
日本の初回審査は終わり、ラスカスさんたちの役割はひとまず終了しました。今度はラスカスさんたちが作ってくださった総括所見を私たちが受け止め、障害者権利条約を推進する番です。その取り組みを進めるために、ラスカスさんからお話をうかがえるのはとても貴重な機会です。そしてまさに昨日の視察が示すように、ラスカスさんが今後も、私たちと交流してくださる姿勢を示してくださっているのは本当にありがたいことです。遠路はるばる、3度目の来日をしてくださったラスカスさん、本当にありがとうございます。ありがとうはリトアニア語で「アーチュウ」と言います。では、ご講演をお願いします。

研究所として招聘したラスカスさんは大会翌日、成田空港から帰国の途につかれました。