開催報告(2015年7月19日開催)「ヘイトスピーチに抗する――路上、学校、大学」

掲載日: 2015年08月21日

2015年7月19日(日)、立命館大学生存学研究センター主催企画「ヘイトスピーチに抗する――路上、学校、大学」が、衣笠キャンパス充光館301号教室にて開催されました。
立命館大学人間科学研究所「インクルーシブ社会に向けた支援の<学=実>連環型研究(基礎研究チーム)」との共催により、学外からの参加者を含めて、約60名にご参加いただきました。

本企画の第一部では、佐々木航弥監督・平木篤製作のドキュメンタリー映画『ヘイトスピーチ』(大阪芸術大学卒業作品)の上映を行ないました。今回上映されたのは、卒業制作からさらに追加の取材、編集を経て制作された「完成版」です。この映画は、路上でのヘイトデモおよびそれへの参加者・主催者へのインタビュー、路上での「カウンター」を行なっている人びとへの半年間の取材、そしてヘイトクライム被害にあった人びとや支援者の語りから、ヘイトスピーチをめぐる現状を、ドキュメンタリーとして丁寧に描き出している作品でした。
第二部では、映画を制作された佐々木監督と平木さん、そして差別に関する研究を続けており京都朝鮮学校襲撃事件裁判への支援を行なってきた山本崇記さん(静岡大学)、差別に関する倫理学的考察を進めておりアメリカの大学でのヘイトスピーチに関するキャンパスコードについて詳しい堀田義太郎さん(東京理科大学)にご報告いただきました。

佐々木監督と平木さんからは、撮影の動機や方針などについて率直に語っていただきました。とくに、ヘイトスピーチを行なっているデモ参加者たちへの取材のなかで、雑談しているときは「普通」のひとのように思われていたのが、韓国や中国のことになると、まったくのやましさ、後ろめたさを感じることなくヘイトスピーチを繰り返している。そこに罪悪感はなく、むしろ正義感をもって行なっているようであり、「不気味さ」を感じたというエピソードは印象的でした。
山本さんからは、京都朝鮮学校襲撃事件裁判が勝訴にいたったものの、京都朝鮮第一初級学校はなくなったこと、地域住民との関係性が破壊されてしまったこと、ヘイトクライムによって受けた傷や日常の回復の難しさを指摘いただきました。
堀田さんからは、アメリカの大学でのヘイトスピーチ事件やそれにたいする対策としてのスピーチコード制定の試みや、ハラスメントとヘイトスピーチの差異について論じて頂きました。
質疑では映画でヘイトスピーチを行う側への取材があったことが高く評価されたこと、ヘイトスピーチに対する規制をどのように考えればよいのか等について、活発に議論がなされました。
最後になりましたが、この場を借りて、ご報告いただきました佐々木監督、平木さん、山本さん、堀田さん、そして参加者と開催にご尽力いただいたみなさまに御礼申し上げます。

(本研究センター専門研究員 中倉智徳さんによる開催報告を掲載)

関連リンク