開催報告 生存をめぐる制度・政策 連続セミナー「障害/社会」第5回「中国における障害者権利条約をめぐる取組み」

掲載日: 2014年12月04日

 立命館大学生存学研究センターは、2014年10月20日(月)、立命館大学衣笠キャンパスにおいて、生存をめぐる制度・政策 連続セミナー「障害/社会」第5回「中国における障害者権利条約をめぐる取組み」を開催しました。

 このセミナーは、「障老病異」のある人びとを研究の対象とする本センターが推進するプロジェクト「生存をめぐる制度・政策」のアウトリーチ活動の一環として企画されたものであり、今回で第五弾となります。今回は、中国において障害者権利条約の履行に尽力したワンプラスワン障害者文化開発センター(以下、ワンプラスワン)の傅高山(Fu Gaoshan)氏、蔡聰(Cai Cong)氏、イネーブル障害学研究所の張巍(Zhang Wei)氏にご講演いただきました。

 最初に、傅高山氏から、中国における障害者(主に盲人)の社会的な取り扱いについて、自身の経験も交えながらの説明がなされました。傅高山氏は、学生のころ盲人には按摩しか雇用が開かれていないことを不満に思い、障害者団体に就職しました。当該団体の創始者は、健常者であり、当初は障害者は弱く、無力な存在だから助けてあげる、という姿勢でした。傅高山氏は、障害者も能力があることを示すため、障害者主導の障害者団体ワンプラスワンの設立に携わり、専門的なスキルを磨く支援に携わるようになりました。

 次に、蔡聰氏から、ワンプラスワン障害者文化開発センターが中国における障害者権利条約の国内履行のためにどのように行動したのかについて説明がなされました。とくに強調されたのは、中国の政治体制との関係から来る問題についてでした。

 最後に、張巍氏から、中国における知的障害者の問題で障害者権利条約に照らして違反となりうる事項についての説明がなされました。張巍氏は、弁護士であり、知的障害者の強制使役の問題などに取り組んできた実績があります。また、中国で17件の知的障害者組織の立ち上げにかかわってきました。そうした経験から、障害者権利条約履行の動きの中で、支援された意思決定の欠如、精神病院における屈辱的な扱いなどを問題にし、解決を求めるため政府に働きかけてきました。

 会場からは、中国の政治体制と障害者運動をキーワードとした質問が出されました。ひとつは、ワンプラスワンの資金源についてであり、これについては、欧州ヨーロッパ連合やヨーロッパの財団、米国が主な資金源であることがわかりました。

 中国では、自由な集会や結社が規制されており、大衆的な運動の形成は法律に抵触するため、文字通り命がけのものになってしまいます。そうしたなかで、公設半民営の障害者団体が中国的な運動をどのように進めていくかという点が非常に興味深い研究会となりました。

(本学大学院先端総合学術研究科院生である桐原尚之さんによる報告を掲載)