開催報告 生存をめぐる制度・政策 連続セミナー「障害/社会」第4回「障害者権利条約の国内的実施と障害者政策委員会」

掲載日: 2014年12月04日

 2014年10月4日(土)、立命館大学朱雀キャンパスにおいて、生存をめぐる制度・政策 連続セミナー「障害/社会」第4回「障害者権利条約の国内的実施と障害者政策委員会」が開催されました。川島聡氏の講演を中心に、障害者権利条約第33条国内における実施及び監視(national implementation and monitoring)の解釈から、同条約の国内的実施について行政機関や障害者政策委員会の役割について議論が進められました。

 川島氏は、第33条の監視(monitoring)が障害者権利条約の国内的実施を監視するための仕組みを規定したものであると解説した上で、イギリス、ドイツの監視体制と比較させながら詳細に説明をしました。特に関心を集めたのは「独立した仕組み(independent mechanism)」が日本の制度ではどのように解釈されていて、その独立性をどのように担保するのかについてでした。日本では運営面における独立という解釈で障害者政策委員会が設置されていると説明する一方で、そのメンバーの選抜は政府の裁量に任せられ独立性が担保できていないと言及しました。また、救済申立などを担う政府から独立した保護機関を設置することが必要だと強調しました。

 会場からは、三権からの独立が国家からの独立そのものを示すわけではないとの指摘がなされ、その限界が示されました。三権から独立していればその効力が保障されるというわけではありません。ドイツの国内人権機関は、三権から独立しているがために、かえってそれらとの関係が弱まり影響力が発揮できていないということです。

独立した仕組みとしてどのようにその効力を発揮させていくかということも重要ですが、障害者運動が連帯しながら保護(protect)の手段を勝ち取ることこそが実体に重きを置いた有効な取り組みであることが、全体の議論から導き出されたひとつの答えでした。

 今回のセミナーも、障害者権利条約の基本である“Nothing about us without us!”(私たち抜きに私たちのことを決めるな)の実現に向けて、社会のあり方そのものを問い返す貴重な機会となりました。

(日本学術振興会特別研究員PD・本センター客員研究員長谷川唯さんによる報告)。