オンラインセミナーにおける「情報保障」の試み――障害学国際セミナー2020報告

掲載日: 2020年10月01日

2020年7月18日(土)に、障害学国際セミナー2020がオンラインで行われました。障害学国際セミナーは、日本、韓国、中国、台湾の各グループによる持ち回りで行われており、順番通りであれば、今年は9月末に京都の朱雀キャンパスで開催される予定でした。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の影響によってオンライン(Skype Meet Now)での開催となり、テーマも、「東アジアにおける新型コロナウイルス感染症と障害者」となったのです。

オンラインでの国際セミナーの開催も、昨年までは馴染みの薄いものでしたが、今回のセミナーではさらに、Skypeで行われるセミナーの動画を転送し、Zoom Proで配信するということも行いました。COVID-19の流行がなければ、各グループのパネリストや関係者、会場に来られる方々が京都に集まり、全員が質問や発言ができる形でセミナーは行われる予定でした。それがかなわなくなったので、セミナーだけはオンラインで行おうという話になったのですが、それだと人数制限のため、参加者の少ないセミナーになってしまいます。それではもったいないということで、オンラインで行われるセミナーをオンラインで配信してはどうかということになったのでした。ただしセミナーは英語で行われるので、英語から日本語への同時通訳が必要であり、さらに手話通訳と文字通訳の同時配信も求められます。

そのような案を、6月16日(火)の最初のミーティングで聞いたオンライン事務局は、まず「一体どういうことなのか」を理解することから作業を始めました。そして図を書きながら、情報の流れや人の配置などについて共通の理解を構築していきました(写真1参照)。その際、事務局内や、通訳を担当する関係各社とのやりとりが基本的にメールで、会って確認するということができない状態だったので、理解にズレが生じないことに気を配りました。実際、一度も会わなかった関係者の方が多く、事務局のメンバーでさえ、初めて配信の拠点となる生存学研究所の書庫に集まったのは前日でした。

一方同時に、参加可能な人数やデータ通信量などの処理能力を考慮しながら、使用するサービス・アプリ、機材の選定などを進めました。動画配信のための機材を購入してからは、それが問題なく機能するかを二度テストし、問題なしと判断してから7月9日(木)に「オブザーバー参加の募集」を開始しました。ソフトに関する準備はメールなどでできますが、動画転送のための機材やパソコン、情報コンセントなどハードの準備は、実際に機材のある場所に人が行かないと不可能なので、両者の”緩急”の違いに戸惑うことが何度かありました(写真2参照)

当日、やはり機材のトラブルは起きましたが、柔軟に対応してもらうことにより大事には至らず、目指していた「英語で開催される国際会議において日本語への同時通訳を付け、さらに手話と文字通訳を付ける試み」を実現させることができました。セミナー全体のコーディネートを行った長瀬修教授によると、今回のような試みは、日本では初めてではないかとのことです。実際、どのようにすればいいのか分からないので、短い期間で様々なことを調べ、細かい地味な調整を繰り返す試行錯誤の日々でした。本当にできるのか、最後まで分からないという緊張感もありました。しかし実現し、一度方法が分かってしまえば、それほど難しいことではないことが分かりました。「情報保障」という考えを持ち続けることは重要ですが、同時に「情報保障」と呼ばれなくとも当たり前に用意されることになってほしいと思いました。

橋口昌治
(立命館大学衣笠総合研究機構生存学研究所 専門研究員)

完成形に近づいてきた段階の図。この時点では質問も受け付ける予定でした。

パソコンをセッティング中。写っているのは事務局メンバーの安田智博さんです。
パソコンセッティング中の写真

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