「震災をめぐる障害者・病者の生活問題」に関する研究会

なぜ阪神淡路大震災の後も「災害弱者」という状況が存在し続けるのか、なぜ教訓は生かされていないのか、ということをまだ確信をもって誰も説明できないでいる。この研究会のメンバーは多かれ少なかれ、こうしたことに疑問を感じている。そして、この問題が解決されなければ、東日本大震災の教訓も生かされず風化していくことになってしまう。今はまだ、瓦礫問題や福島原発の放射能問題等がある中で、風化という言葉は不適切かもしれないが、確実に報道の数が減っている今こそ、人々の記憶にとどめておく必要がある。
本研究会は、2011年度から「障害者」「病者」の視点から見た震災の支援体制の問題点を中心に調べ、また、被災した福島県の在宅難病者を京都に招き、震災後、長く続いた停電に対してどのような対策が必要なのかを語ってもらうシンポジウムを開いた。2012年度はさらに各々のメンバー関心を置くテーマを現地に赴き調査し、その成果を公表している。2013年度はそれらの調査・報告をもとにさらに研究をメンバー全体で共有し、個々のメンバーの関心を深化させ、そしてこれまでの調査・研究をまとめることを目的とする。

震災と障害者・病者をテーマに研究しようとすれば、障害者・病者というよりむしろ社会の「生存」の在り方を考えなおさなければならない。東日本大震災では、障害者が健常者の倍近く死んだといわれている。災害が発生したとき、逃げ遅れやすい障害者・病者等を、どのように避難させるべきか、それは単に技術や制度の問題ではなく、障害者は社会のどの位置に置かれているか/置くべきか、という考察に他ならない。それは「あるべき世界」とはどういった世界なのかを示す手立てになる。

プロジェクト名 「震災をめぐる障害者・病者の生活問題」に関する研究会
プロジェクト代表者 立岩真也
年度 2013