フェミニズム研究会

前年度、本プロジェクトは、ジェンダーで分かたれた日常・学術の場における権力関係を分節化することを目的とした。本年度は、この権力関係が生みだす抑圧から、解放をはかるための理論・実践を考察することに目的をおく。

日常のそこかしこにひそむ差別や偏見は、人の生/性を抑えつけ脅かすものである。フェミニズムがその始まりからながく紡いできたおおくの知や実践は、差別・偏見のただなかにあって、これに抗して解体し、生きて在ることの幅を広げる「解放」の営みである。それは抑圧の最中で生じる人の生/性にかかる関係の苦しみにつぶさに目を向け、そうした苦しみに浸されても、人の固有の生/性の在りかたを手放すことなく豊かに活気づける試みでもある。本プロジェクトがめざす内容は、フェミニズムの紡いできたこの知や実践の枠組みについて、その歴史を敷衍しつつ、自らのポジショナリティを問いながら、模索していくものである。

フェミニズムは、「解放」を志向する実践・理論である。これまで生存学センターは、生きて在ることの技を、既存の社会的な実践(制度など)や価値を賢しく・力強く乗りこなして生きていくことの知や実践として、繰り返しアーカイビングし考究してきた。

本プロジェクトは、そうしたアーカイビング・考究する「器」にとどまらず、本プロジェクトそのものが、生存の技としての知や実践としてある。フェミニズムが日常に埋め込まれた差別や偏見(の構造)を暴き、これに抗する知や実践を生みだしてきた思想であることを踏まえれば、「異」が生の豊かな彩りとなる術・技を模索・発揮する知・実践・場として本プロジェクトはある。知や実践のアーカイブ化、もしくは体系化といった知の権力性に巻き込まれてこれに閉じこもるのではなく、あくまで本プロジェクトに関わる者たちが、その固有の生/性を豊かに活気づけられるような「異」を開陳できるプロジェクトとして本プロジェクトはある。この生きて在ることの術や技としての場であることを、生存学センターにもたらす効果として挙げておく。

プロジェクト名 フェミニズム研究会
プロジェクト代表者 小泉義之
年度 2014