病/障害をめぐる当事者運動研究会

治療や入院の長期化や隔離は、当事者に社会での生活を行う術を奪い、術が奪われた状態を障害とすることで福祉的ケアの対象にするともいえる。しかし、ケアを行なう専門家たちはそのことについて自覚的であるとは言えない。例示すれば、精神障害者の多くは治療を受けながら福祉的ケアを利用し地域生活を行っている。しかし、入院治療時における行動制限や権利はく奪など行為を経験している者も少なくないが、福祉的ケア従事者はそれらの経験に関して積極的関心は示さない。
他方、当事者の運動は病と障害の関係について何を示すのか。水俣病問題の歴史的経過において、初期にはその患者運動が障害者運動団体「青い芝の会」との交流を持っている。しかし、水俣病患者運動において「身体を返せ」という主張がなされていたように、障害者運動の障害受容という主張を受け入れることができなかったことから、継続的な連携が実現しなかったという歴史的事実が確認できる。また、ハンセン病に関しては活発な当事者運動が繰り広げられている。しかしながら、差別是正や環境改善を求めるその根底には「ハンセン病は可治の病である」という主張がある。そのため「病の治療」という議論は置き去りにされている。
本研究の目的は被害当事者の「病」と「障害」がどのように位置づいており、それがどのような社会的な状況によって変化したかについて明らかにすることにある。

プロジェクト名 病/障害をめぐる当事者運動研究会
研究課題 病/障害と福祉の争点──水俣病・ハンセン病・精神障害の当事者運動に注目して
プロジェクト代表者 立岩真也
年度 2012