東アジアにおける生存学拠点形成
代表者:長瀬修(衣笠総合研究機構・教授)
目的
ロシア連邦によるウクライナ侵攻を受けて「国際連合憲章に定める目的及び原則の十分な尊重並びに人権に関する適用可能な文書の遵守に基づく平和で安全な状況が・・・障害者の十分な保護に不可欠であることに留意し」とする障害者権利条約(前文)の文言と「平和と公正をすべての人に」とするSDGsゴール16は、台湾海峡や38度線を含む東アジアにおいても改めて重い意義を持つ。①ダイバーシティとインクルージョンを文言として含み、②R2030とも深く関係するSDGsの目標10「不平等・格差是正」の取り組みの一環である障害者権利条約は、障害学国際セミナーでも継続的に大きなテーマとして取り上げられている。すべての人のすべての人権保障の取り組みの一つのピースとして存在する障害者権利条約の実施の研究にも取り組む障害学国際セミナーを通じた東アジアでの障害学ネットワークの形成強化は平和、安全、公正とつながる。
目標
本年度は2023年秋以降に韓国で開催される障害学国際セミナー2023に向けて、①障害学会大会国際化と障害学国際セミナーの連携強化と②障害者権利条約の東アジアでの実施の把握に注力する。
①障害学会大会国際化と障害学国際セミナーの連携強化
2022年9月17日に京都(同志社大学)で開催される障害学会第19回大会は「知的障害者の脱施設化」をテーマとする。当研究所は同大会の主催者として、プログラム、運営(ハイブリッド)両面で大きな役割を果たすが、その際に2010年以来、当研究所が主導してきた東アジアの障害学国際セミナーとの連携強化に努める。具体的には、同学会大会に初めて全プログラムへの日英同時通訳を導入し、東アジアそして全世界の英語話者の参加を可能とする。同セミナーには障害学国際セミナーの韓国、中国、台湾のパートナーを招聘し、今後の障害学国際セミナーの発展について協議を行う。また、韓国、中国、台湾との連携強化のために、それぞれの障害学会大会や、障害学関連の会議に積極的に出席する。なお、障害学会大会には米国の障害学会(SDS)会長の中村かれん会長の参加も予定されていて、SDSとの連携も強化する。
②障害者権利条約の東アジアでの実施の把握(障害者権利条約締約国会議・障害者権利委員会の傍聴)
R2030と深く関係するSDGsの目標10「不平等・格差是正」の取り組みの一環である障害者権利条約は障害学国際セミナーでも継続的に大きなテーマとして取り上げられている。2022年度は条約実施の国際的把握に重要な国連本部での障害者権利条約締約国会議が対面で開催されるほか、東アジア地域では日本の初回審査、中国と韓国の2回目(2・3回合同)の審査が障害者権利委員会によってスイス・ジュネーブで8月下旬に予定されている。また、台湾を統治する中華民国政府は独自に国際審査委員会を設置し、2回目の審査を8月上旬台北で予定している(長瀬リーダーは英国、オーストラリア、カナダ、韓国の専門家と共に委嘱され、互選により2017年の初回審査に引き続いて審査委員長)。そうした過程を把握し、分析を行う。なお、前述の障害学会大会には、基調講演者であるリトアニアのヨナス・ラスカス教授は障害者権利委員会副委員長であり、日本の審査において中心的な役割を果たす国別報告者を韓国のキム・ミヨン氏と共に務めている。これらの調査研究は科研費・基盤(C)「東アジアにおける障害者権利条約の実施と市民社会」(代表者・長瀬修、2018年度~2022年度)等と連係し、加えて引き続き外部資金にも積極的に申請を進める。すでに村田学術振興財団に申請を行った(申請者は立岩所長)。
メンバー一覧
リーダー
- 長瀬 修(衣笠総合研究機構・教授)
学内教員(専任教員、研究系教員等)
- 小川 さやか(先端総合学術研究科・教授)
- 大谷 いづみ(産業社会学部・教授)
- 立岩 真也(先端総合学術研究科・教授)
- 美馬 達哉(先端総合学術研究科・教授)
- 富永 京子(産業社会学部・准教授)
- 川端 美季(衣笠総合研究機構・特別招聘研究准教授)
学内の若手研究者(博士後期課程学生)
- 高 雅郁(先端総合学術研究科・博士後期課程学生)
- 欧陽 珊珊(先端総合学術研究科・博士後期課程学生)
- 中井 良平(先端総合学術研究科・博士後期課程学生)
その他の学内者(補助研究員、非常勤講師・研究生・研修生等)
- 酒井 春奈(障害学生支援室・支援コーディネーター)
- 吉野 靫(先端総合学術研究科・研究指導助手)
その他の学外者
- 張 恒豪(国立台北大学社会学部・教授)
- 張 万洪(国立武漢大学法学部・教授)
- 呉 達明(香港大学School of Professional and Continuing Education・准教授)