東アジアにおける生存学拠点形成

代表者:長瀬修(衣笠総合研究機構・教授)

目的

障害者の地域での自立生活をテーマとして、昨年度2020年10月に京都で開催予定だった障害学国際セミナーはコロナの影響によって開催を延期せざるを得なかった。しかし、コロナに迅速に対応し、7月にはすでに東アジアにおけるコロナと障害者をテーマとしてオンライン(Skype Meet Now)で障害学国際セミナーを開催した。従来、日本語、韓国語、中国語で開催してきたが、初めてのオンラインという試みであったために、英語のみで開催した。日本の傍聴者には、手話と文字も提供した(中国のパートナーは中国語の手話と文字通訳を中国の参加者に提供した)。オンラインでの国際会議に情報保障を確保するという先駆的な取り組みに成功することができた背景には、当研究所の橋口研究員率いるオンライン事務局の貢献が大きかった。

さらに獲得した国際交流基金と村田学術振興財団からの助成金を活用して、2021年2月には再度、東アジアにおけるコロナの影響と障害者をテーマとして、今度は日本語、韓国語、中国語で障害学セミナーをオンライン(Cisco Webex)で開催し、3か国語の同時通訳(RSI X)そして日本の参加者向け(Zoom Pro)に日本の手話・文字の提供に成功した。オンライン事務局の貢献は再び非常に大きかった。特筆すべきは、オンラインを活用した初めての米国とマレーシアからの参加である。このように、コロナ禍においても、両セミナーにおいて、タイムリーなコロナの障害者への影響分析を行うとともに、地域のネットワーク維持拡大が実現できた。本プロジェクトは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、いっそう重要性を増している「誰も取り残さない」理念に基づくSDGs、特に不平等の是正とインクルージョンを掲げる目標10の実施促進の一環としての位置づけも忘れられない。

目標

障害学国際セミナー(2022年2月25日-27日)の開催
国際交流基金2021年度知的交流会議プログラムに申請し200万円の助成が決定している。コロナ禍において施設での集合生活の弊害が改めて明らかになった結果、さらに重要性を増した「障害者の地域における自立生活」(障害者権利条約19条)をテーマとする。

障害者権利委員会の傍聴
東アジアにおける障害者権利条約の実施を把握するため、今年度に東アジアで唯一想定されている日本の審査が行われる予定の障害者権利委員会(国連人権高等弁務官事務所があるスイスのジュネーブで開催)の傍聴を行い、障害者権利条約全体の実施および日本の初審査両方の動向を把握する。障害者権利委員会は日本審査を8月に予定しているが、コロナの影響により2022年3月に延期の可能性が高い。

メンバー一覧

リーダー

  • 長瀬 修(衣笠総合研究機構・教授)

学内教員(専任教員、研究系教員等)

  • 小川 さやか(先端総合学術研究科・教授)
  • 大谷 いづみ(産業社会学部・教授)
  • 立岩 真也(先端総合学術研究科・教授)
  • 美馬 達哉(先端総合学術研究科・教授)
  • 富永 京子(産業社会学部・准教授)
  • 川端 美季(衣笠総合研究機構・准教授)

学内の若手研究者(博士後期課程学生)

  • 橋口 昌治(衣笠総合研究機構・専門研究員)
  • 高 雅郁(先端総合学術研究科・博士課程後期課程)
  • 欧陽 珊珊(先端総合学術研究科・博士課程後期課程)
  • 中井 良平(先端総合学術研究科・博士課程前期課程)

その他の学内者(補助研究員、非常勤講師・研究生・研修生等)

  • 酒井 春奈(障害学生支援室・支援コーディネーター)

客員協力研究員

  • 吉野 靫(衣笠総合研究機構・客員研究員)

その他の学外者

  • 張 万洪(国立武漢大学法学部・教授)
  • 張 恒豪(国立台北大学社会学部・教授)
  • 呉 達明(香港大学School of Professional and Continuing Education・准教授)