With コロナの語り

世界はコロナウイルス感染症の渦中にある。そのグラウンドゼロは死亡者であるが、その場の最も近くにいるのは罹患者であろう。むろん罹患者数は多く、罹患体験は決して珍しいものではない。しかし、その経験を生活誌として生成することのできるものは、そう多くはないだろう。本プロジェクトが行おうとする内容は、渦中の当事者と当事者研究や質的研究を行っている研究者の協働によって、特に「渦中の生活誌」を生成しようという試みである。
 
自宅療養と宿泊療養施設退所後の「健康観察」期間(約一か月間)に湧き出した、当事者自身の「何だか変だ。腑に落ちない。モヤモヤ/ザワザワする」のはなぜか?を「渦中の生活誌」の生成を通して明らかにする。
  
研究枠組みとしては、「経験の言語化」を採用する。調査枠組みはとしては、「ライフストーリー・レビュー」を採用する。外部研究協力者として、「ライフストーリー・レビュー」の研究を行っている高松里の協力を得ることができるので、この機会を活かした実践研究を行う。まず、『ライフストーリー・レビュー』では、「これまであまり語ってこなかった過去の経験について、他者の協力を得ながら光を当て、その経験の意味を考えること」の効果として、「人は一貫したライフストーリーを持つときに、心理的に安定している」とされているが、「渦中の生活誌」を生成しながら、1)「過去の経験」の内、ほぼ渦中にある人の経験を「生活誌」として生成するには、これまでの方法がそのまま使えるのか、何らかの修正が必要なのかの検討を行う。また、2) ほぼ渦中にある人にとってどのような効果があるのかの2点を、当事者と研究者の協働によって検討する。

文責:立岩真也

研究代表者 所属・職位:先端総合学術研究科教授
氏名:立岩真也
研究課題 コロナウイルス感染症罹患経験当事者の生活誌生成
チーム名 With コロナの語り