感染症研究会

本プロジェクトの目的は、COVID-19の流行と対策を踏まえ、20世紀以降の感染症の歴史およびその対策や報道を整理し、感染症対策のあり方とその社会的影響を検討することである。2020年世界的パンデミックとなったCOVID-19によって、日本のみならず世界中で様々な問題が生じた。こうした問題には、たとえば医療資源配分や感染者に対する差別・誹謗中傷などがあげられる。しかしこれらはCOVID-19そのものが新たにもたらしたというより、従来すでに存在していたものの、潜在化/不可視化されていた問題が現れたに過ぎない。COVID-19の政策をはじめ、広く感染症に関する歴史を整理することは、これまでの国や地域の政治の仕組み、科学・医学のあり方、そして社会背景そのものを問い直すことにもつながる。そこで本プロジェクトでは各メンバーのそれぞれのアプローチから、国内外のCOVID-19を初めとする感染症の歴史とその対策のあり方とを整理し分析する。

本プロジェクトの研究内容は、主に次の2点からなる。(1)日本におけるCOVID-19の政策に至る感染症対策の立案過程・実施過程を整理する。(2)これまでの感染症、特に20世紀から21世紀の感染症(たとえば結核、SARS、新型インフルエンザ等)流行に関する歴史を整理し、当時の人々が流行した感染症に対してどのような対策をとろうとしたのか、直接的および間接的なものも含め検討する。
COVID-19流行においては、国や地方行政が対策を講じ続けている。国の対策は地方行政の対策にも大きく影響を及ぼすものであるが、政策には一時的なものもあり、国の対策を一貫してまとめ整理する必要がある。昨年度からこの作業にはすでに着手している。引き続き、こうした作業を通じて、日本のCOVID-19をはじめとする感染症のガバナンスのあり方を俯瞰し、政策評価を行う一助としたい。加えて、最近は世界的にCOVID-19のワクチン接種がすすみ、また変異株が現れ、政治や科学・医学、社会において新たな様相をみせつつある。こうした状況に対し人々がどのような対策を公的および私的にとるのか、とってきたのか、これまでの感染症の歴史やその対策から検討する。そのうえで、COVID-19がいかに、感染症史のなかに位置づけられ得るのか考察することとしたい。

文責:川端美季

研究代表者 所属・職位:衣笠総合研究機構・特別招聘准教授
氏名:川端美季
研究課題 COVID-19と近現代における感染症の制度史
チーム名 感染症研究会