東アジアにおける生存学拠点形成
代表者:長瀬修(衣笠総合研究機構 教授)
初年度である昨2019年度の本欄で記した、障害学国際セミナー2019を10月11日から13日まで中国湖北省の武漢にて「全員のためのインクルーシブな社会」を全体テーマとして成功裏に開催した。一部のポスター報告者が折からの台風19号の影響で不参加となったのはとても残念だったが、その後のまさに武漢での新型コロナウイルス感染症の蔓延そして封鎖を振り返ると幸いなタイミングだった。中国と台湾の政治的緊張関係から、多少不安のあった台湾からの参加も確保されたのも幸いだった。2020年は実際に集まることができないことを考えると、東アジアの障害学コミュニティの形成途上において、実際に会って話し合い、飲食を共にすることの重要性を噛み締めている。また、政治的、軍事的に不安定要素の多い東アジアにおいて、協定に基づかない緩やかな連携の枠組みを維持、継続すること自体が課題であることを改めて感じた。そして北朝鮮を含め、さらなる将来的拡大をビジョンとして持ち続けることも欠かせない。
本プロジェクトは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、いっそう重要性を増している「誰も取り残さない」理念に基づくSDGs、特に不平等の是正とインクルージョンを掲げる目標10の実施促進の一環としての位置づけも忘れられない。
障害学国際セミナー2020は、2020年9月25日から27日まで「障害者の地域での自立生活(障害者権利条約第19条)」をテーマとし、朱雀キャンパスで開催予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染症の日本を含む東アジアにおける蔓延によって2021年への延期を余儀なくされた。2020年度内、すなわち2021年1月から3月に開催可能かどうかは、2020年9月時点で判断予定である。新型コロナウイルス感染症に関する取り組みを最優先するという研究所の本年度の方針に従って、新型コロナウイルス感染症と障害者というテーマで、東アジアを対象とする英語でのオンラインセミナー開催の可能性を模索している。このように引き続き、東アジアにおける生存学・障害学の国を超えた連帯、交流推進の中心的な役割を担い続けることを目指す。
メンバー一覧
リーダー
- 長瀬 修(衣笠総合研究機構・教授)
学内教員(専任教員、研究系教員等)
- 小川 さやか(先端総合学術研究科・教授)
- 大谷 いづみ(産業社会学部・教授)
- 立岩 真也(先端総合学術研究科・教授)
- 美馬 達哉(先端総合学術研究科・教授)
- 富永 京子(産業社会学部・准教授)
- 川端 美季(衣笠総合研究機構・准教授)
学内の若手研究者
専門研究員・研究員
- 吉野 靫(衣笠総合研究機構プロジェクト研究員)
大学院生
- 伊東 香純(先端学術総合研究科・大学院生)
- 高 雅郁(先端学術総合研究科・大学院生)
- 欧陽 珊珊(先端学術総合研究科・大学院生)
その他の学内者(補助研究員、非常勤講師・研究生・研修生等)
- 酒井春奈(障害学生支援室・支援コーディネーター)
その他の学外者
- 張 万洪(国立武漢大学法学部・教授)
- 張 恒豪(国立台北大学社会学部・教授)
- 呉 達明(香港大学School of Professional and Continuing Education・准教授)