後藤 基行

生存をめぐる制度・政策
施設の中の生存と医療アーカイブズ

 私は、日本の精神医療供給が、なぜ入院中心の形態となっているかについて、医療社会学、歴史学、社会政策学的な観点から、一次資料を重視した研究を行ってきました。日本の精神医療には大勢の患者の長期入院という好ましくない側面があり、政府も制度改革をしようと努力してきましたがうまくいっていません。つまり、その良し悪しとは別に精神科病院は当事者にとって日々を生きて暮らす「生存」の場となっています。

 しかし、では、なぜ日本では精神科病院は「生存」の場であることをやめられないのか。私は、このテーマを通じて「他者を支える」責任のありようを考えたいと思っています。

 そして、このような研究は一次資料としての医療アーカイブズが重要です。しかし、日本の医療アーカイブズは極めて貧弱で、政策立案や遂行過程に関する資料の多くは廃棄され、医療機関作成資料はアクセス困難です。こうしたことからも、日本における実践的な医療アーカイブズ構築にも貢献したいと思っています。

生存学に関連した主な業績

主要著作・刊行物

  1. 後藤基行『日本の精神科入院の歴史構造―社会防衛・治療・社会福祉』東京大学出版会、2019年1月
  2. 後藤基行「日本における精神病床入院と生活保護―過剰病床数と長期在院問題の淵源」猪飼周平編『羅針盤としての政策史―歴史研究からヘルスケア・福祉政策の展望を拓く』勁草書房、pp.21-71 、2019年2月

主要論文

  1. 後藤基行、安藤道人「生活保護による精神科長期入院―1956年『在院精神障害者実態調査』原票の分析」『精神神経学雑誌』122(4) 、pp.281-301、2020年4月
  2. 後藤基行、中村江里、前田克実「戦時精神医療体制における傷痍軍人武蔵療養所と戦後病院精神医学―診療録に見る患者の実像と生活療法に与えた影響―」『社会事業史研究』(50) 、pp.143 – 159、2016年9月
  3. 後藤基行、安藤道人「精神衛生法下における同意入院・医療扶助入院の研究―神奈川県立公文書館所蔵一次行政文書の分析 」『季刊家計経済研究』(108) 、pp.60 – 73、2015年10月
  4. 後藤基行、竹島正、有馬邦正、立森久照「精神科医療に係る歴史的資料・物品の有無とその内容に関する基礎調査」『(独)国立精神・神経医療研究センター報告書』(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神保健計画研究部) 2015年度、pp.1- 8、2015年3月
  5. 後藤基行「日本におけるハンセン病「絶対隔離」政策成立の社会経済的背景 : 戦前期統計からの考察」『年報社会学論集』(24) 、pp.97 – 108、2011年

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