美馬達哉
生存をめぐる科学・技術
医療と生存の人文学
私は、さまざまな難病を扱う神経内科の臨床を行うと共に、社会学を中心とした手法で、医療や生きることに関わる人文学的研究を行っています。そのなかで特に3つの点に着目して研究を進めてきました。一つは「リスク」です。病気などのものごとを予測して、それを予防的にコントロールしようとすることをある種の権力であると考えるからです。二つ目に、哲学者M・フーコーらのいうバイオポリティクスという観点に注目して、医療や生命や身体を考える上での理論的枠組みとてもちいることです。これは、個人ではなく集合としての社会や人口をどう扱うかという問題に関わります。三つ目は移動とグローバリゼーションという視点です。「日本」のような国民国家を前提とせずに、さまざまな現象を考えていくことを目指しています。
生存学に関連した主な業績
著書
- 『<病>のスペクタクル』人文書院、2007年
- 『脳のエシックス 脳神経倫理学入門』人文書院、2010年
- 『リスク化される身体 現代医学と統治のテクノロジー』青土社、2012年
- 『生を治める術としての近代医療』現代書館、2015年
主要論文
- 「断たれた帰鮮の望み――ある安楽死を読む」平田由美、伊豫谷登士翁編『「帰郷」の物語/「移動」の語り――戦後日本におけるポストコロニアルの想像力』平凡社、2014、p.p.81-99.
- 「医療専門職論再考――陰謀のセオリーを超えて」現代思想 42巻13号、青土社、2014年9月、p.p.90-106.
- 「さらばアルツハイマー――認知症の一世紀」現代思想 43巻6号、青土社、2015年3月、p.p.114-130.
- 「リスクで物事を考える」桐光学園中学校・高等学校編『高校生と考える日本の問題点』左右社、2015、p.p.244-258
- 「スポーツを手がかりに考えるエンハンスメント」森下直貴編『生命と科学技術の倫理学――デジタル時代の身体・脳・心・社会』丸善出版、2016、p.p.72-89.