栗原彬
生存の現代史
〈生存と共生の政治社会学〉を統合的な研究テーマに、一方で参加型調査を重ね、他方で注は二の理論化を試みてきた。水俣、高畠、釜ヶ崎での調査の継続とともに、2011年3月11日以降、東日本大震災および福島原発災害の研究に向かわないではいられなかった。
生存学研究センターの仕事として、福島、水俣、沖縄の比較分析から、これらを通約するものとして、①国策としての生権力ナショナリズム②重層的な植民地主義③財政官学の特権集団④隠ぺいと忘却の政治⑤依存と従属の心性⑥受難者の生存と共生の技法⑦受難者のヴァナキュラーな言葉を析出した。
日本ボランティア学会およびNPO法人水俣フォーラムの活動を通じて知り合った人々との相互学習も、私の学問の構成に大きな影響を落としている。10年にわたる立命館大学大学院先端総合学術研究科の共生論史の授業で出会った院生たちとの討論からも多くの知的刺激を得たことを記しておきたい。感謝と共に。
生存学に関連した主な業績
著書
- 『講座 差別の社会学』全4巻、弘文堂
- 編著『証言 水俣病』岩波新書
- 共編著『越境する知』全6巻、東京大学出版会、
- 単著『「存在の現れ」の政治』以文社
- 共著『3.11に問われて』岩波書店
論文
- 「「新しい人」の政治の方へ」『年報政治学』2007-II 排除と包摂の政治学』日本政治学会編、142-162ページ、木鐸社、2007年12月
- 「銀紙の星」『ミルフイユ03 土に着く』8-18ページ、せんだいメディアテーク、2011年3月
- 「21世紀の「やさしさのゆくえ」『<若者の現在>政治』小谷敏・土井隆義・芳賀学・浅野智彦編、204-248ページ、日本図書センター、2011年5月
- 「原発危機の政治学」『PRIME』第35号、3-9ページ、明治学院大学国際平和研究所、2012年3月
- 「「生きづらさ」を超えて」『「生きづらさ」を超えて:こども発達臨床研究センターシンポジウム報告書』6-25ページ、北海道大学大学院教育学研究員子ども発達臨床研究センター、2013年3月