小川さやか

生存のエスノグラフィー

私はこれまで、タンザニアの零細商人マチンガがグローバルな資本主義経済の末端において、流動的で匿名的な都市の人間関係に適合しながら、いかにして互いの生を保障しあう独自の商慣行と共同性を創出・変容させていくのかを「狡知」を切り口に明らかにしてきた。現在、生存学研究センターの研究に関連して、以下の二つの研究プロジェクトを実施している。第一の研究では、「瀬戸際(危機/窮地/分岐点)」において、制度や秩序に回収され難いかたちで日常的に繰り広げられている行為・実践(はったり、ごまかし、愛想笑い、逆切れなど)と狡知、および狡知が発動される場の力学を通文化的に明らかにすることを通じて、ギリギリの人間行為・実践を理解するための新たな視座を提示することを目指している。第二の研究では、「その日暮らし」の多様な可能態を民族誌的な事例から収集・分析することで、生産主義的な主体観、未来優位の時間の観念に基づいて「その日暮らし」を放擲しようとする、私たちの生のあり方を再考する視座を提示することを目指している。

生存学に関連した主な業績

著書

  1. 小川さやか2011『都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌』世界思想社
  2. 小川さやか「タンザニアにおける古着輸入の規制とアジア製衣料品の流入急増による流通変革」吉田栄一編『アフリカに吹く中国の嵐、アジアの旋風―途上国間競争にさらされる地域産業』アジア経済研究所, 千葉, pp.83-112, 2007年。
  3. 柳澤雅之、小川さやか「第4章 フィールドでインタビューする」柳澤雅之編『京大式フィールドワーク入門』NTT出版, pp.57-74, 6月, 2006年

論文

  1. 小川さやか「もう一つの使い捨て文化―東アフリカにおける古着の流通・消費―」『アステイオン』No.77(サントリー文化財団)pp.116-133, 10月,2012年。
  2. 小川さやか「タンザニア都市零細商人の瀬戸際の狡知―ウソと時間をめぐる一考察」『歴史と民俗』第28号(神奈川大学常民文化研究所)平凡社, pp.97-125, 2月,2012年。
  3. 小川さやか「ウジャンジャの競演/共演空間としてのタンザニアのポピュラー音楽「ボンゴ・フレーバ」」『くにたち人類学』(一橋大学)No.3. pp. 22-46, 5月, 2008年。4)Sayaka OGAWA “Earning among Friends: Business Practices and Creed among Petty Traders in Tanzania”, African Studies Quarterly (Florida University Online Journal) Vol.9, Issue 1&2, 7000 words. 9月, 2006年。
  4. 小川さやか「都市零細商人の経済活動における連帯と生活信条-タンザニア、地方拠点都市ムワンザ市における古着の信用取引を事例に」『アフリカ研究』(日本アフリカ学会)No.64, pp.65-85, 3月,2004年 。

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