西 成彦
生存のエスノグラフィー
専門は比較文学です。そもそもは先進中華文化圏や先進欧米圏の文学と日本文学の比較という観点から日本に定着した学問ですが、ポストコロニアル批評の台頭とともに、たとえば欧米植民地主義と日本植民地主義を対比した文学研究や、植民地主義や冷戦やグローバル化にともなう人間の国際移動に付随した文化現象を扱う学問として、日々、進化の途上にあると言っていいでしょう。その進化にどこまで貢献できるかが、ぼくの残された課題だと思っています。そこには、日本植民地時代のマイノリティ文学や、戦後の在日文学の研究、日系移民の文学など、「マイナー文学」としての可能性を秘めたものも含まれることになり、マイノリティ研究や、人間の移動にともなう言語習得に関わる社会言語学との接合なども必要になってきています。また現代の徴候としての「生存の危機」を現代文学がどのように描いているかにも関心があり、生存学研究センターの若手強化型プロジェクト「生存学と文学」などを通じて院生と共同研究も進めています。ポーランド語やイディッシュ語の小説を翻訳するのも自分いしかできない大きな仕事のひとつと思っています。
生存学に関連した主な業績
著書
- 西成彦『エクストラテリトリアル/移動文学論Ⅱ』作品社、2008年。
- 西成彦『世界文学のなかの『舞姫』』みすず書房
- 松井太郎『うつろ舟』(西成彦・細川周平=編)松籟社
- 西成彦『ターミナルライフ/終末期の風景』作品社
- アイザック・バシェヴィス・シンガー『不浄の血』河出書房新社、2013年。
論文
- 「カンナニの言語政策」、『立命館大学産業社会論集』第48巻第1号、2012年。
- 「アメリカ大陸は東欧ユダヤ人と先住民が出合う場所〜『密林の語り部』試論〜」、『れにくさ』4号、東京大学現代文芸論研究室、2013年。