作業療法(学)の現代史を描く

掲載日: 2013年05月01日English

enlearge image (to back to press x)日本における作業療法の現代史enlearge image (to back to press x)障害受容再考――「障害受容」から「障害との自由」へ

私は作業療法士という仕事をずっとしてきた。この度(2013年3月)、『日本における作業療法の現代史――対象者の「存在を肯定する」作業療法学の構築に向けて』(以下『作業療法の現代史』とする)というタイトルの本を生活書院という出版社から出版させていただいた。

2009年には『障害受容再考――「障害受容」から「障害との自由」へ』(三輪書店)(以下『障害受容再考』とする)という本を出版していただいていたので、単著としては2冊目になる。

大学院に入学したのは、かれこれもう15年ぐらい前のことで、昼間は作業療法士として社会福祉施設に勤めながら、夜間の大学院(東洋大学大学院)で研究に取り組み始めた。以来、問いを持ち、調べ、考えることをしてきたが、私の中に「研究の現場」と呼べる恰好良いものがあるか…とちょっと悩む。問いを持つことも、調べることも、考えることも、どれを取っても別に私でなければできないというものでもない。問いは、研究の独自性を方向づける重要なものであるが、私の場合、リハビリテーションの現場で使われる「障害受容(できていない)」という言葉への違和感から、なぜそのように用いられるか、という問いが出発点であったが、同じような問題意識を持つ人も少なからずいたように思う。それらを考え併せても「研究の現場」は誰とでも地続きだと思えてならない。

だが、新しい本とともに2冊の本は、やはり私でなければ書かなかった本のようにも思う。「障害受容(できていない)」という言葉に疑問を持ち、疑問に答えるフレームを考えたり見つけたりし、現実に異なったアングルを与えるという作業が案外と大変なのだと思う。特に医療現場というのは枠組みが強固なので余計にそう感じたのかも知れない。今はそういう研究も決して少なくなくなったし、立命館大学大学院先端総合学術研究科のようにそれを奨励してくれる研究サポートの場もあるから、勇気づけられお尻を叩かれながら自分の研究の道をおぼろげながらも進むことができると思う。とはいえ枠組みが強固ということは、その中にいると違和感は蓄積されていくのだけど、時にそれは自分の感じ方が変で間違っているのかも知れないと思えてくるし、そもそもそんな些末な自分の違和感などどうでも良いのではないかとさえ思えてきてしまうということでもある。だから研究することの本質は、徹底して自分の感覚を大事にして、自分のアングルからとらえる世界を言葉で表現すること、その意志を持ち続けることだと思う。

『作業療法の現代史』の内容は、実は夜間の大学院(東洋大学大学院)に入学する前、夜間の大学(東洋大学)の卒業論文で取り組んだ内容を引き継いでいる。その卒業論文のタイトルは『作業療法の理論枠組みに関する研究』だったが、今にして思えば研究時間的にも研究遂行能力的に時代的にも時期尚早だった。付け焼刃で作成したお粗末な出来だった。

立命館大学大学院先端総合学術研究科博士予備論文(以下「予備論文」とする、後に『障害受容再考』として出版)の提出を終えて、博士論文はどうしようかと迷っていた。予備論文の内容を深めて博士論文に仕立てるのが順当かとも思ったが、何か違うことをやってみたいと漠然と感じてもいた。そんな時に指導教員の立岩真也教授から「作業療法の現代史を書いてみたら?」と言われ、視界が大きく開けた感じがしたのだった。

そのように感じた理由は大きく2つあった。その1つが「卒業論文の不完全燃焼をここで完全燃焼させたい」という思いである。もう1つが『障害受容再考』で描いたリハビリテーションや作業療法は一面に過ぎない、もっと全貌は違う、という思いである。

このように『作業療法の現代史』は不完全燃焼や不足に向き合って出来たものだが、一方で、その作業は自分に生まれた違和という感覚を見捨てないという過程でもあった。そこ(だけ)は自分が自分に感謝している(卒業論文から10年は経過していたので…)。

この本では、現在となってはそう単純には批判し難い、だけど批判的検討の良い題材になる作業療法学やリハビリテーション学の発展史を描いたつもりであるので、ぜひ関心を持ってご一読頂けたら幸いである。新たな不足もあると思うので忌憚のないご批判もお待ちする。

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