法教育とは何か?

掲載日: 2022年03月01日

「法教育」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?なんとなく耳にしたことがあるという人もいるかもしれません。
ここでいう法教育とは、アメリカのLaw-Related Education(LRE)の訳語であり、法務省・法教育研究会「報告書」の定義では「法律専門家ではない一般の人々が、法や司法制度、これらの基礎になっている価値を理解し、法的なものの考え方を身につける教育」*1を指します。

写真1:佐藤伸彦『裁判員時代の刑事手続に関する法教育基礎理論序説』(2020、ナカニシヤ出版)

近年の法改正により、選挙権年齢や民法で定める成年年齢が18歳以上に引き下げられ、裁判員に18歳及び19歳も就くことができるようにもなったことなどから、学校教育での法教育の充実が必要だ、という指摘が見られるようになってきました*2

私は、法学部のゼミで「法教育」を研究テーマとして選んで以来、現在も主な研究テーマとしています。2020年9月には博士論文をもとにした『裁判員時代の刑事手続に関する法教育基礎理論序説』(ナカニシヤ出版)を上梓しました(写真1)。拙著は、「法教育とは何か」という関心をもとに、法教育の理論的な基礎づけを試みたものです。法教育の研究・実践に携わる多くの論者が、法教育の目的に「(法的な)市民的資質の育成」を挙げていることから、シティズンシップ教育の先駆けとなったイギリスにおける法教育のモデル論を参照し、法教育の固有性について検討しました。また、法化社会*3を背景とする法教育の普及・推進の取り組みに対し、法化を①「社会の法化」という社会・集合レベルと②「法的社会化」という個人・心理レベルの議論に区別して、②の「法的社会化」のレベルでも捉えて法教育を展開していく必要性を指摘しました。

写真2:法務省・法教育推進協議会が作成した法教育に関する教員向けの冊子教材。左から小学生、中学生、高校生を対象としたもの。{a href='https://www.moj.go.jp/housei/shihouseido/houkyouiku_kyouzai.html' alt=''}https://www.moj.go.jp/housei/shihouseido/houkyouiku_kyouzai.html{/a}{br}(法務省「法教育に関する教材」(2022年2月13日閲覧))

法教育は、SDGsの目標の「④ 質の高い教育をみんなに」、「⑩ 人や国の不平等をなくそう」、「⑯ 平和と公正をすべての人に」とも関連する取り組みでもあり、学校教育の現場をはじめとして広く社会に普及し浸透していくことが望まれます。学校教育の現場で法教育を担当する教員の養成も課題です。また、法教育の更なる普及・推進のためには、法曹志望者を含めた法律関係者や、司法福祉その他関連職に就いておられる方などにも関心を持ってもらえるような取り組みも不可欠であり、筆者自身も取り組んでいきたいと考えています。今後は、刑事手続以外にも、憲法や民事法はもちろん、社会保障法など様々な法分野の法教育の枠組みも検討し、法教育の理論と実践を架橋できるような研究に取り組みたいと考えています。

このほか、最近では、法教育以外にも、民事裁判経験者やADR*4利用者に対する意識調査・研究にも関わりました*5。これらは、法教育のあり方を考えていく上でも重要なものであります。

佐藤伸彦
(立命館大学大学院先端総合学術研究科
プロジェクトマネージャー(研究指導助手))

1. 法教育研究会「我が国における法教育の普及・発展を目指して―新たな時代の自由かつ公正な社会の担い手をはぐくむために」法教育研究会「報告書」(2004)2頁。
https://www.moj.go.jp/content/000004217.pdf

2. 裁判員についていえば、2022年1月10日のNHK視点・論点でも「高校生裁判員時代の法教育」がテーマとして取り上げられました。
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/459003.html

3. ここで「法化社会」とは、社会の変化によって生じる様々な問題に対して、「『法』を用いる必要が生じ、『法』を用いて対応する」(田中成明『現代法理学』(有斐閣、103頁))社会を指します。

4. ADRとは、Alternative Dispute Resolutionの略で、裁判外紛争解決(手続)のこと。

5. 例えば、渡辺千原・中部貴央・佐藤伸彦・平野哲郎「利用者から見た医療―ADR医療紛争相談センター利用者インタビューから描く実情と課題―」立命館法学2021年396号(2021)1-69頁(筆者は、Ⅳを担当)。

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