ロックトイン症候群の人びとの経験と語り

掲載日: 2021年07月01日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により混乱を極めた2020年、立命館大学ではCOVID-19感染拡大後の社会を見据え「Withコロナ社会 提案公募研究プログラム-Visionaries for the New Normal-」が立ち上げられました。学内の幅広い分野にわたる81件の多様な提案のなかから21件の課題が採択され、同年9月より各課題研究が始動しました。私がご紹介するのは、その採択課題のうちの一つ、「Withコロナ社会での持続可能なケア(代表:美馬達哉、先端総合学術研究科教授)」に関連して実施された研究の一部です。

図1 生存学研究所ホームページ内のアンケート調査用特設ページ

私たちの研究グループでは、2021年2月3日から3月7日にかけて、“ロックトイン症候群(locked-in syndrome, LIS)”と呼ばれる状態にある人びとの経験に対するウェブアンケート調査を実施しました。LISとは、認知機能はそのままで重度の四肢麻痺とコミュニケーション障害をもつ人びとを指します。LISには脳内で起こった何らかの原因によるものと、ギランバレー症候群や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの運動ニューロン病が進行して起こる場合とがあります。今回のアンケート調査では、FacebookのALSグループ等のSNSを通してリンクを拡散し、そのような症状を自覚する人びとに広く参加を呼びかけました。生存学研究所のホームページ内のアンケート調査用特設ページ(図1)では、視線入力やピエゾスイッチなどでパソコンやタブレットを操作するLISの人びともスムーズに参加の意思表示ができるよう、アンケートに関する説明書、同意書の表示から送付まで、氏名と居住地(市区町村)の入力以外はすべてワンクリックでおこなえるようデザインしました。アンケートには、LISの人びとの日常的な経験について問う設問に加えて、新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受けて、その日常がどのように影響を受けたかなどを問う設問がありました。18名のLISの方にご回答いただき、その結果の一部を、3月28日に開催したオンラインワークショップ「ロックトインを常態として生きる~withコロナ社会研究プログラムの成果から」で報告しました。

図2 オンラインワークショップ登壇者のスナップショット

ワークショップの開会挨拶では、松原洋子副学長/先端研教授よりご自身が2007年に主催されたALS生活技術研究会の紹介があり、今回のワークショップが生存学研究の大きな流れのなかに位置づけられました。続く趣旨説明では、ALSの気管切開を伴う人工呼吸器の利用率が一部の欧米諸国で極端に低く、ALS患者が長生きできない点について指摘されました。美馬達哉教授によるLIS入門では、手足が動かず目で意思を伝える状態の方の7割が幸福であるとアンケートに回答しているのに対し、健康な医学生や医療従事者のうちの56%は自分が慢性的にLISになるくらいなら死んだほうがましだと回答している、という対照的なデータが示されました。人工呼吸器を装着してLISの状態で生きることは、本当に死に匹敵するほど不幸なことなのだろうか、と疑問がわきます。そこで、本ワークショップでは、実際にLISの人びとがアンケートに対して時間をかけて一文字一文字綴った経験についての語りを紹介しながら、理解を深めていくことを目的としました。ワークショップでは図2にあるように、LISの人びともそうでない人びとも、デジタル、アナログの多様なコミュニケーション手段を駆使して、リアルタイムでの交流を行いました。このような企画は、図2の登壇者に加えて、文字通訳のNPO法人ゆにさん、英-日同時通訳のスピカさん、日-英通訳のロブさん、そして海外からの参加者や同時通訳者ブースを含む複数拠点でのzoomウェビナー配信を請け負ってくださったKYOTOGRAPHIEさん他、多くの方々の協力なしには実現し得ませんでした。ワークショップの詳しい内容につきましては、この場ではとても語り尽くせませんが、私はLISの人びとの多様な経験をもっと広く、たくさんの人びとに知ってもらうことで、インクルーシブな社会への道筋が見えてくると信じています。詳細はぜひ、YouTubeでのワークショップの公開動画をご覧いただけましたら幸いです。

姫野友紀子
(立命館大学生命科学部生命情報学科助教/立命館大学生存学研究所運営委員)

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