高等教育における障害学生支援の実践――「オンライン授業」は何をもたらすか

掲載日: 2020年08月01日

私は、大学等で学ぶ障害のある学生(以下障害学生)の学業や生活を支援する京都の民間団体で活動しています。聴覚障害のある学生が授業に参加する際に教員の話などの音声を文字にして伝える「文字情報保障」、肢体不自由の学生の通学・学内移動や在宅生活をサポートするヘルパーの養成・派遣、障害学生支援に関する各種研修や相談事業等に関わっています。

今年度に入り、多くの大学でオンライン(遠隔)授業が実施されています。これまでの障害学生支援の取り組みの大部分は、対面型の授業の現場で行われてきました。オンライン授業については、障害学生自身も、教職員や障害学生をサポートする人々も経験が少なく、私自身も障害学生等からの相談を受け、試行錯誤しながらより良い方法を模索しているのが現状です。そうした取り組みのなかで、オンライン授業がもたらす可能性や課題が少しずつ見えてきています。

障害学生にとってのオンライン授業の大きなメリットの一つは、場所や時間に縛られず授業に参加できることです。障害学生のなかには、心身の状況により、移動の制約がある学生、決まった日時に継続的に通学することが難しい学生が多くいます。大勢の学生に混じって長時間過ごすことが難しい学生もいます。対面型の授業の前提である「場所」や「時間」の制約が取り払われることで、授業参加の障壁が取り払われる学生は少なくないようです。

一方で、たとえば視覚障害学生の状況をみると、オンライン授業に使われるシステムがスクリーンリーダー(画面読み上げソフト)の読み上げに対応していなかったり、教材がスクリーンリーダーで読むことのできる形式で提供されなかったり、パソコンやスマートフォンの操作に時間がかかることを考慮せずに授業が進行されたりして、授業への参加に際して困難に直面することが少なくありません。そうした課題の解決策について、現時点ではまだ視覚障害学生の間でも、大学の教職員の間でも十分に共有されていないのが現状です。また、肢体不自由の学生からは、「どこでも授業を受けられるようになり便利になった反面、外に出る機会が減ったことが気になる」という声が上がっています。通学やキャンパス内の移動をしなくても授業に参加できるようになることで、大学等の施設のバリアフリー化が進まなくなることを懸念する学生は少なくないようです。

障害学生支援は、障害学生が他の学生と同じように学び学生生活を送ることができる環境を整える取り組みです。障害学生支援の視点で見ると、オンライン授業は、これまで授業に参加することに困難のあった学生に新たな可能性を開きうる取り組みとして評価できると言えます。他方で、学生が自らの学びにおいてオンライン授業を適切に活用できるように環境を整備しなければ、学生の学びの機会を制限することに繋がりかねない現実も見えつつあります。新型コロナウイルス感染症感染防止対策の一環として一気に広まったオンライン授業。学びの主人公である学生にとってより効果的なものとして活用されるよう、「障害学生支援」の実践を通して発信していきたいです。


安田真之(NPO法人ゆに)


写真1:点字端末でメモを取る様子。


写真2:パソコンでZoomミーティングに参加し、点字端末でメモを取る様子。

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