「PLAN75」トークイベント・プロジェクト

研究目的、内容

本研究は、75歳以上の高齢者の生死の選択を制度化することで高齢者問題の解決を図ろうとする架空の近未来社会を描いた映画「PLAN75」の解析を通して、安楽死・尊厳死の合法化と社会構造の関係を考究するものである。 研究チーム代表の大谷いづみに、配給会社ハピネットから、同作品のプレスシート/パンフレットの記名原稿の依頼があったこと、さらに遡って、2019年2月、生存学研究所主催のシンポジウム「安楽死のリアル」において、大谷が「プラン75」の前作「十年 Ten Years Japan」を紹介したところ、フロアにいた関係者と名刺交換したことがきっかけとなっている。 他方、大谷は週数度の訪問介護を必要とする障害当事者であり、教員チームメンバーの斎藤真緒もまた、障害を持つ子の親であることを公開しており、人を死に導くような制度や社会構造についての疑問や懸念についても教育研究過程でしばしば指摘してきた。にもかかわらず、近しいゼミ生が生死の選択を可能にする制度を肯定する場面にしばしば直面しており、この経験は、早川監督が「PLAN75」を制作するにいたった動機とも通底することから、今回の研究の着想を得たものである。

生存学研究所にもたらす効果

本作品は、第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品され、5月28日、長編映画新人監督賞であるカメラドール・スペシャルメンションを受賞し、その注目度が上がっていることから、本作の上映と早川監督を招いてのトークイベントを開催することは、学生・院生等、広くZ世代にむけての発信効果が期待される。 自宅での動画配信が日常化した現在、一堂に会した大画面で視聴し、本作品が持つ余白の解釈がオーディエンスに委ねられた上で、脚本・監督を手がけた早川氏によるその意図やカンヌでの手応えなど制作者サイドの話と、Z世代のオーディエンスとの間で、世代や立場を超えた往還が行われる。これを、社会学研究科の教学との連関においておこなうことは、生存学研究所にとって、学部・研究科の別を超えた新たな教学展開と位置づけることができる。

文責:大谷いづみ

研究代表者 所属・職位:産業社会学部・教授
氏名:大谷 いづみ
研究課題 少子高齢社会のリスク言説と安楽死・尊厳死表象に関する歴史的・社会的研究
チーム名 「PLAN75」トークイベント・プロジェクト