東・東南アジアにおける障害者運動の動向―中国、台湾、香港、そして知的障害者 質疑応答

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東・東南アジアにおける障害者運動の動向―中国、台湾、香港、そして知的障害者

質疑応答


会場:今回の改選で新しく改選された中に女性がお一人もいらっしゃらないという話ですが、国連の障害者の障害者権利条約に関する委員に求められることは、国際法の専門家であることでしょうか。あるいは、むしろ障害者の状況を知っている、自分の国で物事を前に進めるために何をしたらいいかを知っているじゃないかとも思ったんですが、どうなんでしょうか。

長瀬:はい。私と石川准さんは、障害学会の初代会長が石川さんで、私が初代事務局長でした。あと倉本智明さんを含め、この3人で障害学会の呼びかけ人をやったという関係もあります。日本から障害権利委員会に委員を出しましょうというのは、多分私が言いだしっぺで、3年以上前に言いだしたこともあって、石川さんの選挙運動には非常に深入りをしました。昨年の12月から4回、一緒にニューヨークに行って、選挙活動をやりました。それで私も委員をどうやって選ぶのかということがわかってしまいました。あまり専門性とか人格というのは関係がありません。その候補者を推薦した国の政府が、どれだけ真剣に候補者を当選させる気があるのか、ないのか。それにかかっています。今回の場合も、石川さんは最下位と4票差で薄氷をふんでの当選でした。外務省は、非常に危機感を持っていて、幸いなことに危機感を持っていて、投票日が火曜日でしたけれども、その前の週の金曜日に全公館に「この選挙は決して負けられない」、各大使館はそれぞれ最後の働きかけをやれという命令を出して、それで多分ぎりぎり滑り込んだじゃないかと思います。
今回の選挙でイギリスのダイアン・キングストン(Diane KINGSTON))という委員会にとても貢献をしている女性が落選をしました。私は勝手に彼女はトップ当選をすると思っていました。次もしくはその次の委員長にもなる、それだけの貢献をされている方であって、彼女が次点で落選したので非常にがっかりしました。翌日、本当に残念だったというお話を本人にしましたら、いや今回イギリス政府は障害者権利委員会を重視していないのは重々承知していたし、落選の危機はあるかもしれないけども、それでもリスクをとって私は立候補したんですよというふうにおっしゃっていました。私はイギリス政府には憤慨しました。反面、他の委員会とかいろいろな選挙がある中で、どこの委員会に重点を置くのかというのはその国が決めることです。女性を増やすために例えば再来年の次回選挙で6条の女性障害者の条文をつくった功績がある韓国には是非、女性障害者を出してほしいと思います。すでに韓国の障害者運動にはお願いしています。そういうかたちで各国がなるべく女性障害者をたくさん出すということがないと、女性を増やすということには全くつながらないと思います。今回も17名の候補者のうち、3名しか女性障害者はいませんでした。しかも当選確実と思われる、私が勝手に思っていただけなんですが、イギリスの他に、新人だけどものすごくいいと思われたコスタリカのエリカ・アルバレズ・レミレス(Ericka ALVAREZ RAMIREZ)さんという日本の自立生活運動とも関係のある方含め、3人とも枕を並べて落選でした。ただもっと、そもそもの話をすれば、政府が指名した候補者しか立候補できないという仕組み自体が、本当に大きな欠陥だと思います。ただ、それはもう本当に条約を変えるというようなかたちになりますので、次善の策としては各国の障害者組織が女性の障害者をまず擁立するように各国内で働きかけをする。そして自分の国が女性候補者を真剣に押すように各国の障害者組織、市民社会組織が頑張ることがない限り、この非常に悪いバランスというのは続いてしまうんではないかと心配しています。以上です。

会場:日本と近い国がどういう状況なのかなということを知ることができて、興味深かったです。ただ、アプローチが政治的な話のアプローチなので、個人の生活という面から、例えば、生まれつきの全身性の脳性麻痺の障害者20歳ぐらいの人がその国でどう生きているのか、暮らしているのかなというところ、所得とか介助とか教育とか外出がどれぐらいできるかとか、雰囲気を教えていただけたらなと思います。
長瀬:大変重要なご質問ありがとうございます。申しわけありません。そういう具体的なイメージは私を持っておりません。中国に行く時でもほとんど北京ぐらいしか行っていません。あとはセミナーなどで南京、武漢、広州ぐらいに行っていますけれども、そういう障害者の具体的な生活の場面に関する知識は残念ながらほとんどありません。それは韓国についても台湾についても香港についても一緒ですので、是非9月のセミナーに参加していただいて、各国の方に是非聞いていただきたいというのが大変申しわけないお返事になりますけれども、私からできるお答えです。申しわけありません。

立岩:他よろしいですか。どうぞ。

会場:スライド内容とは直接関係しないかもしれないのですが、イギリス政府はCRPD委員会をそんなに重視しないように見えるようなお話をされたかと思うのですが、詳しく教えていただきたい。というのも、イギリスの国内法とEUの共同体法の関係や、イギリス政府のEUの雇用平等委員会に対する関係にも齟齬があるようで、国連に対しても似たような接し方をしているのかどうか。イギリスの政府と国連の委員会との間で、イギリスとEUとの間で似たような齟齬が生じているのか、そうじゃないのか、教えていただきたい。

長瀬:はい。重要なご質問ありがとうございます。まず、今回のダイアン・キングストンの落選に関しての部分ですけれども、私も十分には把握していないんですが、全般的にまず想定できるのはイギリスの場合は、単に優先順位を障害者権利委員会に置かなかっただけという場合もありえると思います。ただもしそうでなくて、今おっしゃったように対EUと同じような権利委員会との距離感というので、障害者権利条約の選挙に重きを置かなかった可能性というのも当然あるというふうに思います。キャメロン政権はまもなく終わりますけれども、現在の保守党を中心とする政権がそもそも障害者権利条約にあまり熱心ではないということはうかがっています。頭があまり整理できていないですが、イギリスだけじゃなくて、締約国全般と障害者権利委員会の関係というのは、先ほどちょっとご紹介申し上げた14年の12条に関する一般的意見で、現在の例えば日本の成年後見制度にとくに後見類型に象徴されるような全面的な法的能力の剥奪によるかたちでの保護というのは、もう全然駄目というふうにはっきりと解釈をいたしました。それには意見を出したほぼ全ての締約国は反対だったんです。でも条約委員会は完全に支援付き意思決定に移行しなさいという意見を出しました。締約国全般、しかも比較的頑張っている締約国の中でも、委員会の示している方向性がある意味ラディカルと捉えられてきているような雰囲気は感じることがありますので、イギリスがその他の国と同じように委員会と距離を取っている可能性もあり得るとは思います。
ただしイギリスの場合にはさらにもう一つややこしい事情がありまして、これは公表されてはいないのですが、イギリスは選択議定書にも入っていて、そのことによって「調査」が行われました。保守党政権による障害者予算の大幅な削減、そのことが選択的議定書に基づいて訴えられたことによって、調査がはいっています。そのため、イギリスの審査はもうとっくに行われるはずだったんですけれども、まだ行われていません。ストップがかかっています。その調査の方が動かない限り、事前質問事項もないし、審査もないというかたちで、棚上げ状態になっています。そのことももしかすると影響しているかもしれません。ただ、そこは直接的にちょっとつながるかどうかわからないのは、委員は自国の審査にはタッチしないという大原則がいずれにしてもあるのです。ただ一部の国は、委員を出しておくことによって、牽制する。自国の審査には、その委員は自国の選出の委員は直接タッチすることはできない。だけども、委員を出しておくことによって、他の委員への牽制をするという意味で、逆に、積極的に委員を出す場合も残念ながらあるわけなんです。それを考えると、逆というふうにも考えられます。
ご質問のポイントのイギリス政府と障害者権利委員会との距離感が個別にどうかという情報は持ち合わせていません。ただ、締約国全般と、とくに12条の解釈をめぐってちょっとした溝が生まれてきているというのはあるのではないかなと思います。例えばノルウェーはもうすぐ審査だと思うのですけれども、審査の時に12条の解釈についてうちの解釈はこうなんだよというのを正面からやりたいと、ある担当者は言っていました。その担当者が審査の時までもちろんいるかどうかわかりませんけれども、そういった動きも締約国側の一部にはあります。ただそれが具体的にEUとイギリスと障害者権利委員会の関係に影響を与えているかどうか存じ上げません。

会場:12条に関する一般的意見について、後見人をたてることも全部駄目という、締約国の多数派じゃない側のすごくラディカルな側、イニシアティブをとった国って例えばどこでしょうか。それが例えばフランスとかドイツとか、いわゆるEUの核の国であればさきほどの話すごくストレートにつながるのですが。

長瀬:条約交渉の時も、政府側はそういう解釈はできない、権利能力は認めるけれども、行為能力は認められないという立場の政府ばかりでした。ただ、WNUSP(World Network of Users and Survivors of Psychiatry)、世界精神医療ユーザーズ・アンド・サバイバーズ・ネットワークのような市民社会側が働きかけをする、ロビー活動をするということで、12条は成立しました。ただそこには解釈の余地はもちろんあるようなかたちで、玉虫色のようなかたちで条文自身はつくられています。例えば日本政府は採択直後に日本政府の解釈としては12条には行為能力は含まれないという趣旨のステートメントを出しています。ですから、政府側で12条の一般的意見のような解釈をそのとおりだと言っている政府は条約交渉の時もなかったですし、12条の一般的意見についてドラフトが出された段階に意見を求めた時に権利委員会の解釈どおりだというふうに意見を出した国もなかったと思います。

立岩:前半の話、いろいろもっと聞きたいことおありだと思います。後半の第9回目が短く終われば聞いていただくかたちですすめていきたいと思います。長瀬さん、ありがとうございました。

生存学研究センター報告

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