パネルディスカッション

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パネルディスカッション(座長:池原毅和)

パネルディスカッション

東アジアにおける法的能力と成年後見制度の展望


(座長:池原毅和/弁護士、東京アドヴォカシー法律事務所所長)
陳俊傑(チョーズンパワー:香港ピープルファースト理事)
玄根植(韓国障害者人権フォーラム政策課長)
黄裔(リーズ大学博士課程院生)
孫迺翊(国立政治大学教授)
桐原尚之(立命館大学先端総合学術研究科院生、
日本学術振興会特別研究員(DC1)、全国「精神病」者集団運営委員)

(池原)いよいよ最後のセッションになりました。私の方で少し振り返りをしながら5~10分ほどお話をさせていただいて、その後、順次、パネラーの方にお話をしていただきたいと思っております。
東アジアの地域の中国、台湾、韓国、日本という国のそれぞれの状況を皆さんいろいろ興味深くお聞きになったことだと思います。聞いてみると、やはり成年後見制度については、大体それぞれの国がほぼ似た制度になっているということが一つあります。もう一つは、文化的に大きなキーワードとして、家父長制あるいは家族制度がかなりベースにあるということも分かってきたと思います。そして、その影響があるのかどうか必ずしもよく分かりませんが、成年後見制度の利用率自体がどこの国でも必ずしも多くはない。今、恐らく日本が最も利用率あるいは利用人数が多いですけれども、それでも利用可能性のある方全体からすると数パーセントの利用にとどまっていることが見えてきたと思います。
こうした中で障害者権利条約を見据えていくと、昨日私の方でもお話ししましたが、成年後見制度という能力制限を伴うやり方、つまり知的障害者や精神障害者、高齢者の方の行為能力を制限して誰か他の人が決めていくというやり方をやめてしまって、完全に撤廃して、新しい自己決定支援の方向へと切り替えていく一つの方向性は、障害者権利条約第12条が示しているわけです。ただ、残念ながら欧米諸国でも、ではそれが実現できているかというと、そうではない。そういう意味で言うと、いわゆる意思決定支援、自己決定支援と呼ばれる新しいものが、なかなか実践的な試みとしてもまだ見えていないということがそれぞれの国の共通項として見えてきたところではないかと思います。そういう中でもう一つ興味深いことは、日本と韓国で、どちらかというとむしろ国際的な動きとは逆に成年後見制度をもっと利用していこうではないか、拡大していこうではないかという動きも出始めています。
こういう中で、私たち障害のある人たちと関係をしている者、あるいは障害のあるご本人の立場として、どのようにして障害者権利条約のあるべき目的地まで到達するかということを、これから展望として考えていかなければいけないかなと思っているところです。
そういうところで、各国からのパネラーの方に出てきていただいておりますので、まずはそれぞれ、5~10分ぐらいお話をいただいて、もし最後の方で少し時間の余裕が出れば、フロアからもいろいろとご意見をいただきたいと思います。
それでは、最初のパネラーとして、香港からチョーズンパワーの陳俊傑さんにパワーポイントを使ってお話をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。
(陳)(発声)
皆さんにお聞きしたいのですが、私は先ほど何と言ったでしょうか。誰も聞き取れなかったのではないでしょうか。それは私の表現能力が悪いからだと思ったでしょうか、それとも自分たちの理解能力が足りないからだと思ったでしょうか。もし、私の表現能力の問題だと思われた方がいれば手を挙げていただけますか。私の問題だと思われた方、いらっしゃいますか。あら、いらっしゃいませんか。少しいらっしゃいますね。手を挙げていらっしゃいます。では、自分の理解能力が足りないと思われた方、拍手をしていただけますか(拍手)。
理解能力の問題であるかもしれません。
私たちは話をするとき、理解が必要なだけでなく、われわれがどんな能力が足りないのかということを考えねばなりません。私たちがそれを理解しなければ、われわれを理解することはできないのです。もし理解していただけないのであれば、私たちの意思が分かる、他の方を探していただきたいと思います。私たちの代理になる後見人ではなく、私たちの意思を理解してもらえる助けとなる人を探してほしいのです。はっきり言って、なかなか難しい課題を皆さんに突きつけていることは、私も十分承知しております。
ですので、多くの友人が法律という手段で問題解決をしようとしております。しかし、どうでしょう。まず、われわれの成年としての身分はまず否定されてしまいました。われわれは、他の人の助けがないと駄目だという児童、または老衰した人、またはペットになってしまったのです。
香港では、80年代後半から10年かけて、父親たちが後見制度をできるだけ勝ち取ろうとしました。1999年に委員会が設立されましたが、多くの家の家族は非常に失望を表しています。なぜかと言うと、多くの家族たちにはなかなか利用できない制度でした。この後見制度で、後見者が行使できる権利は6種類しかありません。しかも、どこで勉強するのかという問題や、財産の管理や、1万円までの使用制限があります。その期限も1~3年しかありません。香港政府はできるだけ家族によって自己解決するよう奨励しています。ラストリゾートとして、どうしても駄目なときにこの制度を利用してくださいということです。われわれは、この制度が実際は人権を剥奪してしまう制度であるということを認識しています。1999年のことでした。
しかし、われわれの被成年後見の身分はやはり理解してもらえません。ないがしろにされてきています。成年としての身分がなく、それによって今われわれの生活にさまざまな不便を来たしています。例えば私の場合、非常に困ったのは、自分で銀行の口座を持てない、管理できないなどのことがあったので、専門家が法律でもって解決しようとしています。今回はこれによってわれわれの決定権までも奪われてしまいました。
2016年、香港でこの後見制度の運営が始まって既に17年たちました。家族としてはできればもっと完備したものになってくれればと望んでいます。もっと完全に、われわれの各方面で日常生活におけるものを守ってほしいと望んでいます。単に自動的にわれわれの後見になるのではなく、もし亡くなっても引き続き人を探して続けて彼の決定を実行してほしいと望んでいます。われわれの残った人生を支援してほしいと思います。
皆さんはどうでしょう。私たちと相談したことはありましたか。今までわれわれの成年としての身分は、やはりないがしろにされています。一人の人として、私は自分で主張したいと思っています。私の参加は非常に大事であると思っています。法律は分かりませんが、たくさんの問題を自分だけでは解決できませんが、われわれの出現、参加によって、われわれの大人としての身分を認めてほしいのです。われわれに注目してほしい。関心を持ってほしい。われわれと一緒に議論をしてほしい。われわれに対して何をすればいいのか理解してほしい。われわれにとっても皆さんは何をしてくれるのかを分かりたいのです。
今年また、家族は後見制度を改革してほしいと要求しています。特殊信託を設立してほしいと提唱しています。それによって政府は特殊信託を設置する可能性を検討しています。
政府が引き続き専門家や家族に頼んでいますが、ここで一つの突破口がありました。私はやっと代表として誘われて、このグループに組み入れてもらえることができました。やっと討論に参加できたわけです。やっとわれわれも一緒に参加できたわけです。そうすることによって、再び法律でもって、法律によって作られた問題を解決することになりました。
でも、今回はやはり皆さまにとっても一つの挑戦でもあります。皆さんの表現能力の試練になるかと思います。試練に直面していると思います。ありがとうございました。
(池原) 次は韓国からの玄根植さんから、お話しいただきたいと思います。
(玄) こんにちは。玄根植と言います。私は韓国の障害者人権フォーラムという障害者人権団体で活動しています。ここに来るまで、意思伝達に問題があると思われ、父が伝達を代わりにしてくれるという障害者でした。言語障害があります。ところが大学に入って、父に反旗を翻しました。意思決定は自分がするのだと、父と長い間闘い、私が勝ちました。私の意思伝達は自分がするということに決定しました。ですから今は、全ての意思を私がお話ししています。私は、今日のこの法的能力とこの論議について総括的にコメントしたいと思います。
東アジア障害学セミナー(障害学国際セミナー)で、今年、集中的に論議されたテーマが法的能力と成年後見制に対する内容でした。これは障害者権利条約第12条の法の前の平等という認定についての論議でした。今回のセミナーで、人間の法的能力、行為能力がどこまで認められるのか、認めなければならないのか、それを制限あるいは保護する成年後見制度がどのレベルまで来ているのかを検討する、非常に重要な機会であったと思います。非常に良い場所を作ってくださった日本の生存学研究センターの関係者の皆さんと、発表してくださった韓国、中国、台湾の皆さんに感謝の意を表したいと思います。
障害学の次元において、障害者の法的能力を人間の認知能力のどの基準まで認めるかについての問題は、非常に哲学的な論争まで呼び起こす可能性があります。ここでお話が出ました法学、政治学、社会学、その他の多くの論議を全て含まなければならないと思いますが、結局は最終的に人間とは何かという問いもできる問題だと思います。非常に難しくて大きいテーマではありますが、さまざまな論争を通じて、私たちの思考、認識はより広く、そして豊かになっていくことでしょう。
韓国では2013年から成年後見制度が施行されました。権利条約批准の前に、一部の障害者の親の団体が主導することによって、成年後見制度が論議され、準備されてきました。簡単に言うと、発達障害者の両親が障害者の意思決定権を代理、代替することができる法的根拠が必要であったので、施行されたわけです。しかし、この制度は障害者当事者の自己決定権を否定する代理意思決定制度です。施行されて3年で、さまざまな問題が発生しています。
その一つは、昨日、台湾のセッションで発表されたように、被成年後見人の投票権の剥奪です。これは今までの禁治産者制度から成年後見制度に変わり、2018年まで被成年後見人は投票権を行使できないことになってしまったからです。韓国の選挙管理委員会では、この事案に対する改善意見を出しています。ところが、これが2018年に改正されるか、されないかは、未知数です。
もう一つは、後見制度が障害者を保護するというよりも、当事者の自己決定権を剥奪し、経済的な搾取や不当な決定などを行い、社会的に悪用される可能性があるということは事実です。この点は結局、2008年に施行された韓国の障害者差別禁止法と衝突することにもなります。国連障害者権利条約第12条にもあるように、障害者は法的能力を他の人と同等に享有することができるという点を認めなければなりません。それ故、障害者に対する代理意思決定制度を、助力人(アシスタント)による意思決定支援制度に変えなければできません。韓国の一部障害者団体で、民間の支援人あるいは助力人などを教育して輩出し、モデル的に活用していますが、まだ公式的な制度として導入されているものではありません。
今日、最後に言いたい言葉は、障害者も人間であり、普遍的な市民の一人だという原則を必ずきちんと守っていくならば、私たちにはまだ未来があるだろうということです。ありがとうございました。
(池原) ありがとうございました。非常に示唆に富むお話をいただきました。それでは次にリーズ大学で研究をされている黄裔さんにお願いいたします。
(黄) ありがとうございます。この2日間、たくさんのことを申し上げてきました。イギリスでヨーロッパの法律を学んできました。日本、韓国に関しては、法律体系は似ていると思いますが、言葉の問題がありまして、あまり日本、韓国のことについては知りませんでした。けれども、この発表を通じて多くのことを知ることができました。
先ほど座長がおっしゃいましたが、この2日間、日本と韓国の後見人に関する法律全体に関しては、今、第12条とは逆行していると日本の先生からも紹介されました。中国でも同じです。しかし、私はそんなに悲観的ではありません。なぜなら、法律全体に関しては第12条に抵触しているかもしれませんが、皆さんの報告の中で、日本と韓国自体の法律について、非常に啓蒙を受けました。
例えば、1日目に韓国の高先生がおっしゃいましたが、今、韓国の後見制度の一部に関しては、特定の代理人の権利を制限しているようなことがありました。ですので、私は、こうした役割、その活動の範囲がどのように実行されるのかということに非常に期待しています。しかし、後見制度ではあるのですが、その範囲を制限されている、つまり第12条に抵触しない方向に進んでいると思うのです。また現在、実践の中では、非常に実行されている率が少ない。ですので、第12条に抵触していることもあるけれども、もし100が抵触していたとしても、1つがもし抵触していないのであれば、ということは、どのようにして第12条を履行していくのかということの非常に助けになるかと思うのです。
また、韓国と日本では、専門家がお金を取って後見人になっているというお話も聞きました。このことにつきましても非常に勉強になりました。つまり、家庭を中心とした後見を飛び越え、抜け出して、社会で後見する方向に進んでいると。ですので、これについても期待が持てると思います。今後、より発展していくのではないでしょうか。このような支持者、支援者をどのように選択していくのか、そして支援者間での責任をどのように分担していくのか、家庭また家族とどのように関係を保っていくのか、バランスを取っていくのか。今後、この面につきましてはさらに発展、成長していくであろうと私は期待しております。
また現在、どの国の地域も法律は良くないと思うのですが、改良も見られます。ですので時間的に見れば、現在のこの法律を利用しつつ、良い部分を使いながら、可能な限り実行していく、可能性を探っていく必要があると思います。そして新たな法律が出たときに、どのようにこれを利用していくのか、どのように解釈するのか。ですので、この面に関しまして、私たち共通の認識として討論していけばいいかと思います。
本日の報告につきまして、障害者の法律能力は第12条で認められていますが、支持者、支援者によって決められる部分もありますので、このサポート体制をどのように整えていくのか、どうなっているのか。私はイギリスで勉強していますが、まだイギリスにも明確な概念はありません。ですので、各国がその法律の体系の中でこのサポート体制、そこの参与する人々の人数、そうしたものを一つずつ洗い出していって評価していく必要があります。そして一つのサポート体制がどのようなものであるのか、全体を構成していく必要があると思います。
国という観点から見ますと、さまざまなサポート体制が各国にはあるはずなので、障害者はその中からできるだけ自分たちに適するものを選べばいいと思います。そして今の法律を使って、規則を使って、より良い実践をしていくことが価値あることだと思います。ですので、この上におきまして各国の皆さまと意見を共有できればと思います。
また香港の方の発表も聞きました。香港の方は、サポートというのは皆さんが必要としていることだとおっしゃいました。条約第12条には障害者の権利をうたっていますが、権利ではあるけれども、非常に人間関係が重視されるということもおっしゃいました。むしろ人間関係を助けてほしいということですね。
(池原) それでは次は台湾からのご報告です。国立政治大学の教授をされている孫迺翊さんからお願いいたします。
(孫) 皆さんこんにちは。孫迺翊と申します。台湾国立政治大学の法律学部に属しています。
昨日から日本、中国、韓国、また香港からも法律に関する報告、また実務経験を共有させていただきました。たくさんの共通点もあったかと思います。台湾にとっても多くの示唆を得られ、考えさせられました。特に法律に携わる人にとっても、批判的な示唆もありました。法律の研究や制定にとっても、長い目で反省も含めて考えてほしいと思います。以下、三つに分けてお話ししたいと思います。われわれにとって、特に台湾にとっての話です。
まず、成年後見制度に関して、台湾では成年後見制度を研究しています。また、日本と韓国の民法に詳しい方、学者も、現在の後見制度は実は国連障害者権利条約(CRPD)に実は抵触しているきらいがあると言っています。後見下に置くと宣告されると、完全に行為能力はなくなる、剥奪されます。これは問題があります。後見制度の行為能力に関しては変える必要があります。
他の改革で言いますと、韓国や日本の経験に学び、例えばケース・バイ・ケースで家庭裁判所に採決してもらう場合もあれば、後見宣告と補助宣告の他に、できれば特定後見もプラスして最低限の関与にしてもらうと。昨日からもアジアの家父長制度、台湾も同じですけれども、大きな影響を受けております。法律においても、できるだけ条約の精神を生かして、できれば改正していきたいということです。条約に沿って改正する他、実際に運営面で、例えば後見者や補助者の方が障害者を本当に尊重していただけるか、これは非常に大事です。また、お互いに本当に民主的な方法で議論できるか、話し合いができるか、決定を出せるのかということに鍵があります。やはり世界の考え方も社会の考え方も変えてほしい。
高先生がおっしゃっていたとおり、条約が強調しているのは、自主的な決定です。台湾など東アジアの他の国にとっても非常に参考にしたい成功の事例があります。またそれぞれの、例えばモデルを作ることとか、それぞれの経験を積んでいくことで初めて、徐々にこのような後見を減らしていく、できれば補助的な役割を増やしていく、家庭以外に何かリソースを投入すればいいのか、どうすればより良く運営できるかという経験を積むことによってできるでしょう。以上は成年後見制度に関しての見解でした。
2番目です。後見制度は、今はまだ第12条に規定されているリーガルキャパシティの議題がなかなかカバーできません。先ほどの日本の経験からも分かるように、例えば治療を受けるかどうかといった身体的な決定権は、今の枠組みではなかなかカバーしてもらえません。台湾において、例えば、心身障害を持っている成年の女性で、自分で身の回りのことができない方などで、親が高齢で施設に入れないといけないとき、多くの施設はその女性に、まず子宮の摘出手術をしてほしい、そうしないと施設には入れないと言います。こういった手術は実は存在しています。やはり法律がどのようにして規定してくれるのか。自分でこの心身障害者を守る、あるいは介護者の負担を軽減することを考えてきたのですが、今はむしろ自分たちの体のことをもっと考慮してほしい。また、代理の役割を減らすには、国からも介護者、家庭にもっと多くサポートをしていただきたい。それがないとできないのではないでしょうか。
台湾ではここ2年、特殊な問題ですが、昨日の報告にもありましたが、精神障害者の方の場合、例えば訴訟手続き、あるいは行政手続きにおいて汚名を着せられる場合があります。なかなか保障を得られない場合があります。台湾はここ2年間、無差別殺人事件がありました。今年3月にも台北で小さな女の子が殺害されるという被害がありました。何度かこのようなケースがあると、精神障害者に対して皆さんは恐怖を感じます。今年の4月、その事件が終わってから間もなく、私が勤めている大学でも、長い間キャンパスを独り言を言いながらぶらついている一人の精神障害者がおりましたが、警察官がいきなり学校の中に入ってきて、その方を病院に送りました。なぜなら、この精神障害者について通報を受けたと。長い間ご飯を食べていないから健康を危惧して病院に送ったという理由でした。しかし、その精神障害者は明らかに行きたくないと反対の意思を表していました。それを学生が携帯電話で撮って、一部始終をネットにアップしました。台湾の人権協会は、呼び出し尋問法に基づいて、病院に送られた精神障害者に裁判所で尋問したとき、自分は入院したくないという意思をはっきりと示したので、これは法律の要件に抵触している、直ちに釈放しなさいという要求を出しました。ですので、これは手続きの自主的な意思の表示の重要性を表しています。そのケースからもお分かりとかと思います。社会が人々に対してどれだけ包容力があるのか、どれだけ尊重するのかという問題提起になったと思います。
3番目に考えたいのは、台湾にはまたもう一つ特殊なところがあるということです。台湾は国際社会で排除されていて、国連に入れません。にもかかわらず、2014年、台湾の国会で、障害者の権利の条約施行法を採択しました。そうすることによって、人権条約が国内法として効力を持つようになりました。今、政府はその法律の審査をして、NGO団体もそうした報告草案を用意しています。ナショナルレポートです。それが採択される前、実は障害者の権利条約の内容はあまり詳しくは検討されていませんでした。民間にしても政府にしても認識不足、認識の差異があります。昨日の報告の中にも、台湾社会に対して、皆さまもお感じかと思いますが、多元的で多様的な考え方が存在しています。台湾にとってもこれから障害者に対して家族、本人、障害者団体など、違う分野の学者たちも含めて、お互いできればもっと深い意味での理解が必要ではないか、お互いもっとコミュニケーションを取った方がいいのではないか、必要ではないかと考えています。
来年(2017年)、台湾政府は国連の専門家に来てもらい、台湾のナショナルレポートを審査していただくわけですが、そのときにできればたくさんの注目を集めたい、注視していただく、注目を集めていただく。これは本当の保護なのか、実際差別なのか、どうやって家父長制度から支援付き意思決定にシフトできるのかという問題も目指して、私たちはできれば専門家の方々のご意見を借りて、批判的な思考をもたらしていただければと望んでいます。
(池原) それでは最後に、日本から桐原さんお願いします。
(桐原) 全国「精神病」者集団の桐原です。僕が最後である理由は、僕が一番短くしゃべるからです(笑)。もう一つ言いたいことがあります。これはパネルディスカッションなのですか。
(池原) その予定なのですが、時間的にはかなり厳しいかもしれません。
(桐原) あと10分で僕の発言時間が短い以上、パネルディスカッションにはもはやならないと思うのですが、手短に思ったことを述べると、今回の「障害学国際セミナー」は、障害学ということで何回かやっています。そして共通のテーマとしては、ずっと障害者権利条約についてなどをやってきました。
障害学は、社会モデルという考え方があります。この社会モデルというのは、当たり前とされてきた考え方を障害という観点から問い直すことです。では、当たり前になされてきたことをなぜ疑うのか。この社会は、障害者を隔離収容したりして、障害者のいない状態の中で障害者でない人によってルールや規範が設計されてしまった。だからこそ、障害者にとっては、自分たちの存在を含めていない本当に不便極まりない社会となってしまっているわけです。そうした社会が当たり前とされている社会なわけです。そこに障害者を含めていこうとすると、まずは、当たり前を疑うところから始めていかなければなりません。こういうふうにして問い直していくわけです。
今回、この障害者権利条約の第12条の、疑うべき当たり前とされてきたことは何かというと、法律や自己決定という大きなものとなります。こうした大きなものを相手にするから、法律自体、障害者に合わせて解体もやむなしという態度で取り組まなければならないのではないかと思います。
明確に成年後見制度は廃止されなければならないと思います。ですけれど、世界中のどの国を見ても、成年後見制度が廃止された国はありません。障害者権利条約の障害者権利委員会もいろいろな国に勧告を出しています。成年後見制度をなくしてくださいと勧告しています。でもなくなりません。ですから、やはりこうやっていろいろな国の人が集まって意見を交換していくことが、廃止に向けた国際的な動きの近道になるのではないかと思います。今回の国際会議では、成年後見制度についての各国の情報をシェアし、廃止に向けた意思を確認できて本当に良かったなと思っています。ありがとうございます。
(池原毅和) いいまとめをしていただいてありがとうございます。7分ぐらいしか時間がありませんが、フロアの方から少しご意見をいただければ、あるいはご質問でもいいです。では、どうぞ。
(フロア) 私は立命館大学先端総合学術研究科の院生で、桐原さんと同級になります。社会人院生で、本業はジャーナリストです。
まず一つ、今の台湾の先生にお伝えしたい日本の最近の大変気になる動きがあります。相模原事件の直後に、確か神戸で精神障害があると思われている女性が逮捕されるという事件がありました。この方は以前付き合っていた男性に対してストーキング的な行為をしていて、「殺す」などと言っていたのです。それで、措置入院になって措置解除されて、すぐにまた逮捕されました。逮捕された理由は、動物を虐待したからというのです。この方はそういうご趣味があって、例えばネコを焼却炉で焼き殺す一部始終を動画サイトに上げるなど実際になさっているのです。私もネコが大変好きですので、これは本当に心が痛むことなのですが、でも日本で動物愛護法の罰則というのは非常にゆるゆるで、ないに等しいような、非常に軽い罰しかないのですね。それもかなり昔の話で、それを理由にして措置解除と同時に逮捕というのは、どうも私から見ると全く理解のできない話です。先ほど先生が言われた、台湾の大学の中にいた精神障害者の方が警察に連れて行かれてしまったというようなことは、日本でも特に相模原事件の後で目立っていますので、引き続き情報の交換をさせていただければと思います。これが一つ目です。
もう一つは、これは皆さんにお話したいのですが、昨日今日、何回か発言をされた当事者の女性がいらっしゃいます。この方は精神的に良いコンディションではなくなったことを理由に、お子さんを取り上げられてしまって、それでもう10年近く時間がたっているのですが、実はこのようなことは、もう本当に日本の至る所で起こり続けています。最近も、夫から暴力を受けている女性が子供を二人連れて家を逃げました。精神科に通っていたので、夫は精神科に働きかけて、精神疾患を理由にして子供を自分の元に取って、お母さんを排除しようとしています。夫に捕まったら精神医療によって自分は子供と別れなくてはいけないから、これから心中すると言っている状況です。何とか死なせないで、とにかく子供だけでも安心できる人に託してほしいと、つながっているわずかな方が説得を続けている状況です。こういったことがたくさん起こっていて、本当に障害の問題を解決することで、例えば障害があるかどうか今は明らかになっていないシングルマザーなど、そういったたくさんの方が救われると思っていますので、さらなる広がりをもって検討と事例へのご関心をお願いできればと思います。長くなりました。ありがとうございました。
(池原) ご意見ありがとうございました。成年後見の法的能力の問題というのは、常に、今ご発言のような精神障害の人に対する偏見など、そういうものの影響も非常に受けやすい分野の問題だと思います。もうお一方、ご質問、ご意見がありましたね。
(フロア) 台北大学からまいりました。質問が二つあります。昨日からの報告では、国連障害者権利条約の第12条の要求に基づいて、東アジアではまだできていないようなものや、またロジックに基づいて考えてきたかと思いますが、もちろん権利条約は西洋の個人主義に基づいたものかと思います。この2日間の討論を通して問題がありましたが、つまりこの個人主義の枠組み中で、多くの問題が出てきましたが、そのロジックから離れた場合はどうでしょう。離れたらいかがでしょうか。立岩先生の報告を聞いて、大変啓発されました。
まず二つの質問のうちの一つです。もちろん後見制度を廃止すればいいというわけではないですよね。共同の支援に立った場合、支援の資金面はいかがでしょうか。日本の報告からも個人的に支援した場合、金銭の問題が絡んできます。この資金の問題、他の問題はどうやって解決すればいいでしょう。これが一つ目の問題です。
二つ目です。東アジアにはコミュニティの強さ、家庭の力があります。家庭の力に対してコミュニティに基づいた自治でしょうか。それから地域による自主性、完全に個人ではなく、共同的な自治によって法制化できないでしょうか。また、東アジア自身による制度を何か考え出すことは可能でしょうか。以上、二つの質問でした。
(池原)時間がほぼ迫ってしまったので、今のご指摘の点は非常に重要な問題だと思います。私自身も今回の2日間、皆さんとのお話を通じて思ったのは、ある意味、東アジア地域では、まだヨーロッパに比べるとコミュニティというのが完全に崩壊しているわけでもないし、良い部分と悪い部分がありますが、家族の存在もヨーロッパやアメリカとはやはり違う部分があって、こうしたものの一つの力を利用していく、使っていくというのも新しい方向の一つなのかなという印象を受けたりもしました。
申し訳ありません、時間がもう12時になってしまいましたので、このセッションはこれで終了させていただきたいと思います。司会の方にバトンタッチしたいと思います。よろしくお願いいたします。

陳 俊傑
チョーズンパワー
(ピープルファースト香港)
23.9.2016 日本大阪
【省略】

生存学研究センター報告

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