まえがき

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まえがき


渡辺克典

連続セミナー「障害/社会」は2014年5月より立命館大学生存学研究センター主催、立命館大学人間科学研究所「インクルーシブ社会に向けた支援の〈学=実〉連環型研究(基礎研究チーム)」共催にて開催されてきた。連続セミナーの開催趣旨については、人間科学研究所の刊行物である『インクルーシブ社会研究』第5号ならびに第11号に記してあるため、そちらを参照いただきたい。『インクルーシブ社会研究』は、冊子のほかウェブ上にも全文掲載されている。

インクルーシブ社会研究(立命館大学人間科学研究所)
http://www.ritsumeihuman.com/publications/index/cat_id/35

そもそも、この連続セミナーは文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「インクルーシブ社会に向けた支援の<学=実>連環型研究」プロジェクトの一環としておこなわれ、同プロジェクトが2016年3月で完了するのをうけてセミナーの継続について検討する必要が生じた。とくに、2016年4月より「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)が施行され、連続セミナーの位置づけも「変化」を要することが議論されたが、生存学研究センターの単独主催セミナーとして継続する方針となった。
ただし、連続セミナーを継続する上において、上記プロジェクトの完了に加えて2つの変化を抱えることになった。第1に、「立命館大学第3期研究高度化中期計画(2016~2020年度)」が策定され、研究拠点形成支援プログラムの規模縮小によるセミナー運営体制の見直しが必要となった。第2に、障害学国際セミナー(East Asia Disability Studies Forum 2016)が9月に本学大阪いばらきキャンパスにて開催されることになり、同時期の準備や運営に人的なリソースを割かれることが見込まれた。
以上のような変化の渦潮のなかで―あるいは渦潮のなかでのもがきとして―2016年度の連続セミナーは開催された。内容については、9月に開催する障害学国際セミナーに関連し、かつ、これまでの連続セミナーで取り上げてきた条約・法律と障害当事者参画をめぐる新たな課題について取り上げることとなった。
第8回「東・東南アジアにおける障害者運動の動向―中国、台湾、香港、そして知的障害者」は、条約や法制度の制定後の展開として読み解くことができる。連続セミナー第1回「障害者権利条約の成り立ちと位置づけ」に続いての登壇となる長瀬修氏の講演では、中国・香港・台湾や東南アジアの政治状況と障害者運動の組織活動について述べられている。日本の障害者をめぐる法制度や福祉・医療行政政策は、国際的な動向と無関係ではない。アジアあるいは東・東南アジアという視点から、「障害/社会」の在り方を考えるセミナーとなった。
第9回「成年後見制度/意思決定支援の論点」は、2016年5月の「成年後見制度の利用の促進に関する法律」施行を背景とし、また、障害の「社会モデル」をめぐる課題(立岩・参考資料の注1を参照)を取り上げるものともなっている。とくに第9回目については、『インクルーシブ社会研究』第11号に収録されている第7回「精神障害のある人への法制と成年後見制度の課題」ならびに別冊として刊行予定の障害学国際セミナー2016の報告書も参考にしていただきたい。依頼論文として掲載されている「決定を認められてこなかった人たちからの代理意思決定への批判―国連障害者権利条約採択までの過程から」では、障害者権利条約における意思決定をめぐる議論を追うことができる。
以上のように、本号では日本のみならず関連する国々との関係と成年後見制度促進をめぐる現在の課題を取り上げることができた。もちろん、「障害/社会」をめぐる課題はまだまだ多い。連続セミナー「障害/社会」では、可能な限りそれぞれの課題を丁寧に取り上げていきたいと考えている。

追記:2017年2月に第10回が開催される予定となった。

生存学研究センター報告

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