あとがき

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あとがき


上野千鶴子

立命館大学先端総合学術研究科での特別招聘教授の任期、5年間にわたって実施してきた大学院演習の特別実習を、受講生の方たちがアウトプットにしてくださいました。長時間にわたる実習をすべて録音し、その音源を書き起こして、5年間にわたる蓄積をそのあいだの微妙な変化とともに記録し、受講生の質疑まで含めて、こんなにわかりやすいノウハウ本になりました。口頭で伝えてきたことが、こんなかたちで記録になるとは、わたしにとっても望外のことでした。期せずして、立命館大学うえのゼミ、5年間の実習記録となりました。言い出しっぺの受講生の方のお力がなければ、できなかったことです。ありがとう。
うえのゼミには正規の院生以外に、もぐりがたくさんいらっしゃいます。すでに学位を取得したのに、いつまでもゼミから出て行かない人もいます(笑)。大学や専門学校の教員として教えているひとたちもいます。そういう人のなかには、うえのゼミで教わったノウハウのおかげで論文が書けた、という人もいますし、習得した質的分析法を、さっそく自分の教壇で応用して学生に伝えている人もいます。こうやってうえのゼミのDNAが、子世代、孫世代に伝わっていくのは、とてもうれしいものです。
本書ではタイトルにKJ法の名称を使いませんでした。KJ法はKJ法普及協会によって商標登録された名称ですし、わたしのノウハウが正統なKJ法に合致しているかどうか、わたし自身もよくわからないからです。それだけでなく、質的分析法にはデータ処理の標準化だけではなく、個性もあらわれます。こういうノウハウは、各人が使いこなすうちに、少しずつヴァージョンが変わっていくものです。ですから「うえの式」と名づけました。実践過程で、それぞれのみなさんが、「一宮式」「茶園式」と個性的なヴァージョンをつけくわえていってくださればよい、そしてそれが研究者集団の共有財産になればよい、と思います。

5年間、隔週京都へ通いました。ゼミは始まれば終わりが見えない長丁場。よくぞ、うえのにつきあってくださった、と院生諸君には感謝のことばもありません。
それぞれに当事者としての現場を持った、がんこでこだわりのある院生諸君は魅力的で、ゼミでのやりとりは刺激的でした。こんなにたのしい時間を、人生の終わり近くになって持てたことは、わたしにとって恵みでした。
受講生のみなさんが、そして本書を手にしたみなさんが、質的分析法というツールを手にして、研究の世界にとびだしていかれることを祈っています。

2016年秋

生存学研究センター報告

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