第6章 「障害児の(母)親」の経験を語ってみよう

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第6章 「障害児の(母)親」の経験を語ってみよう



実際に2016年度の質的分析法実習で採用したデータとその分析結果をもとに、うえの式質的分析法のインプットからアウトプットまでの一連の流れを追ってみよう。

1.取り扱うデータの性格とアンケートの作り方

今回使うデータの性格を説明する。
公益社団法人京都市身体障害者父母の会連合会が会員に向けて実施した「障害児・者の母親の意識」についてのアンケート調査、質問紙による自由回答法、留め置き調査法で配布数212、回収数93、回収率44%。93票あればそれなりのデータが出るのと、しかもデータのユニット数が一つのコードで93前後なので、比較的手に負える分析しやすい数だといえる。
質問紙では事前に合計12項目をコード化したうえで、「その他」を設けた。回答には「よかったこと、困ったこと」というふたつの選択肢を提示したので、自由回答の内容を、P(ポジティブ)、N(ネガティブ)、A(アンビヴァレント、どちらともいえない)と分析者によってアフターコーディングをしてもらった。自由回答なので、ひとつのコードには複数の情報が含まれる。
フェイスシートは性別、年齢、婚姻上の地位、同居家族(現在)。学歴、職業、年収、障害を持った子どもの年齢、障害を持った子どもの現在の住居等は聞けなかった。長い家族歴を背景にしているため、過去と現在にわたって状況の変化があることが想定されるが、簡略な調査ではそこまで踏み込むことができない(質問票を1頁に収めてほしいという主催団体からの制約があったため)。

設問にしたがって情報ユニットを12のカテゴリーにわけた。
コード1:障害を持った子どもとの関係、コード2:他の子どもとの関係、コード3:夫との関係、コード4:自分の親・親族との関係、コード5:夫の親・親族との関係、コード6:近隣・地域との関係、コード7:医療機関・医師との関係、コード8:学校・教師との関係、コード9:行政、ケースワーカーとの関係、コード10:公共の空間での関係、コード11:制度・法律との関係、コード12:その他。
※調査票は巻末資料1(163頁)参照のこと。

アウトプットまでできてナンボ
何度でも言うが、1次情報をまとめただけで調査が終わったと思わないこと。93人×12項目×P/Nの情報量は、記録するだけで「ごくろうさん」というだけの量があるが、1次情報に依存してその結果をまとめたものは調査レポートであって、研究論文ではない。分析(すなわちメタ情報の生産)があって、初めて研究と呼べる。「見た、来た、書いた」では論文にならない!

2.ストーリーテリングの原則

ストーリーテリングの原則は、⑴表札(メタ情報)に当たる部分をひととおり一度は読むことと、⑵必要に応じて1次情報を適宜読み上げることである。そのなかで生まれた解釈やコメントは、すでにメタメタ情報(3次情報)の生産が始まっていると考える。その3次情報を漏らさず情報カード化する。それが次の段階の、考察や分析につながる。

3.ストーリーテリングの実践

問1「障害を持った子どもとの関係」を例にとろう。この問1は今回の設問の中では、一番核心的な部分である。

(1)要因連関図でストーリーを語る(プレゼン実例)
ST(語り手Story Tellerの略):障害を持った子どもとの関係について。回答はおもに、PとNと大きく分けられる。P(ポジティブPositive-ピンクの付箋紙)が67と、N(ネガティブNegative-緑の付箋紙)が49、そしてA(アンビバレントAmbivalent―両価的-黄色の付箋紙)が7。
そのなかでそれぞれが3つのグループに分けられる。3つのグループは、1.子どもを中心とした親の評価、2.子どもと親がどうあるべきか、3.社会に対して親がどのような意識をもったか。一番多い回答は、1の「子どもを通して親が成長できた」というものである。
そしてこれがキーだと思うが、「子どもはわたしのことを分かってくれている」という肯定的な回答があり、否定的な回答には、「(子どもと)コミュニケーションができない」がある。この2つは対立関係にある。
はなれザルに当たるのが、「(子どもが)結婚できてよかった」というもの。
N(否定的回答)の中には、最初の段階で障害を持って生まれたということが、「つらかった」。「成長した後も、障害児であることがつらい」とか、親と子どもの関係として、「産んでしまって申し訳ない」というのがある。医療的な方面では、「入院とか手術がつらかった」。否定的回答には、子どもの成長という視点が感じられない。
一方でP(肯定的回答)のほうは、Nのような事情があったけれども、それを乗り越えたのかと。でもまたNに戻ることもあるかもしれないというゆらぎが感じられる。というのも、「親が年を取るほど世話をつらく感じる」という回答があるため。精神的にも肉体的にもしんどい。それは社会的な資源がないことにつながるのではないか。社会との関係では「差別されてつらかった」とか、自己のコミュニティを確保できているかどうかが関係する。「自分が子どもをとおして成長できたかどうか」というように、社会との関係のなかで成長して、PとNを行き来しつつ、最終的には社会的資源のありようによって、親の意識は規定される面があるのではないか、というふうにまとめた。


(2)質的分析法の「発見」は1次情報をベースに
コメントセッションQ&A
うえの:今のプレゼン、かなり加工が入っている感じがします。
ST:そうです。
うえの:さっきのプレゼンであったように、揺れがあるのでは。たとえば、1枚のカードそのものが、PとNに分割可能だとか。同じサンプルがPとNどちらもありうるのでは。
ST:はい。分類に時間がかかったのは、そのことで、書き込みが多くて。3つくらいに分けて、そのなかでPとNがあるとか。それがかなり多かったですね。
Q:この要因連関図、PとNに完全に分かれていますね。Aが隅にあるのが気になります。テーマが大きくは、社会、子ども、親となっている中で、揺れの部分は、Aの内容に含まれているのではないか。それならAはPとNの真ん中に位置するはずですね。
ST:だから揺れが-PとN-とね、ひとつのカードの中にあるんですよ。
うえの:STさんは、PとNが明快に分かれたものをきちんと分けたんですね。ここで、1次情報にもどると、1サンプルの回答がPとNと両方に分かれているわけで、サンプルとしてはAとなる。STさんの要因連関図は、本来は、きれいな対立関係にはならないのでは。それが質的分析法での発見のひとつですね。こういう発見は、1次情報にもとづいていわないとダメ。だから1次情報のカードには、サンプルコードを必ず書き込む必要があるんです。1サンプルの中に、両義性があるんだと答えると、さっきの質問に反論できます。
また、「時間」という変数を入れていきます。たとえば「子どもを通じての成長」の次に「加齢にともなう負担の増加」というカードがあります。だから、本人のライフステージによる変化、というものもあるということになります。
Q:もう一度フェイスシートにもどって、揺れている人が子育て中なのか、子育てが終わっているのかに分けて数を分析するとか、年齢層に分けるとか。時間軸をいれるとしたらどうなるのかな。
うえの:たとえば、N側に集まっているカードは、サンプルコードのフェースシートを見ると、40代は少ないことがわかります。

(3)時間要因は、年代、世代、時代の3つ
うえの:時間要因には3つの要因があります。覚えておいてください。年代(年齢)、世代、時代です。年代と世代は違います。世代と時代も違います。障害児を産んだのはいつの時代かということがNの含意に関係しているかもしれません。
調査票では、30代は40歳未満のカテゴリーに含めています。データが不完全なところは、入所時と在宅時別のカテゴリーがないということです。それともう一つ、今回は、障害の程度をたずねていません。
Q4:人工呼吸器つけている児童とかね。
うえの:尋ねづらいので、そのカテゴリーはとっていないのでしょう。
Q:1次データでは、「親同士の友だち」という表現をしているのでもう少し細かく分類していって、ご本人さんたちがネットワークでつながっているあて先がどこなのか、という分類はもう少し可能かなと思います。
うえの:本人の使っている用語は?

※「本人の使っている用語」を「当事者のカテゴリー」(英語ではfolk categoryとかnative category)という。当事者のカテゴリーは最大限尊重すること。

ST:「友達」という用語が多いし、「いろんな人」というのもありますね。
うえの:じゃあ、そのふたつを下位に分けたらいいです。
ST:そうですね。実は、切り貼りが大変だったのです。
うえの:切り貼りをちゃんとやっていないグループがたくさんあるね。
Q:シングルはどういう分類になっているのですか?
ST:印をカードにつけなかったな。
うえの:印をつけてなかったの?
ST:そうですね。
うえの:えー!他のグループは、つけているのに。
ST:時間がなくて。(みんなクスクス笑い)
うえの:PとNの分散は離別とどういう相関関係があるか考えるためにシングルは番号に印をつけます。あとで印をつけておいてください。

(4)文脈情報がたくさんあると読み取れる情報が増える
ST:他の子どもとの関係ですが、Pが45、Nが28、Aが12なので、肯定的要素が多かったように思います。全体的に見て親としては、きょうだいの関係は良好だとみています。結婚して子どもを育てるときの、プラスになっている要因もあります。
ほんとに肯定的な意見が多かった中で、一方で多かった意見は、「障害児に手がかかりすぎて健常児の方にかかわってあげられず淋しい思いをさせた」というのも、比較的多い意見です。
関係性は親に話を聞いているので、きょうだいに尋ねているわけではないので、わりと肯定的にとらえている親が多かったということが結果です。なにか質問、コメントありますか。
Q:障害を持った子どもが年長か年少かは、ここのアンケート結果にはかかれていないのですか?
ST:妹とか兄とかいろいろでした。
うえの:フェースシートの家族構成でわかります。障害児のあとに子どもを産んだケースは多いです。障害児を産んだ後に産んだ子どもが複数のケースもあります。だから障害児を産むことが、必ずしも子どもを産むことを思いとどまらせる要因にはなっていないようですね。
ST:また、「淋しい思いをさせた」のと、「きょうだいの関係は良好」というのは、先生とも話をしたのですけど、実際はきょうだいに聞いてみないと、負担をかけたのかどうか、全然わからないですね。
うえの:親のリアリティと子どものリアリティはまったく違います。今回のアンケート調査は親がどうみているか、という回答ですね。
また、きょうだい関係ではなく、親と障害のない子どもとの関係をきいているので、きょうだい間の関係がどうなのかは、親の判断しかないから実際にはわかりません。
ST:回答には、「良好です」、「良し」、「普通です」とか、シンプルな意見しかないですね。
うえの:「普通」というのは、よく出てきますね。(一同笑い)
ST:何が「普通」なのかわからないけど。聞かれたことに、単純に答えている場合が多いです。関係性をきいているので、「普通」と答えています。
Q:わたしの後輩がきょうだいにインタビューして出した結果と、そんなに変わらないですね。Pな結果だったのですが。限られた数なんですけどね。なので、おおむね違和感なく、STさんのストーリーを聞かせてもらいました。
うえの:きょうだい本人対象のインタビュー調査の結果とも整合する、とメタ情報に書いておいてください。
他の調査や研究を知っていて、こういう解釈が出てくる背景を、文脈情報といいます。文脈情報がたくさんあれば、そこから読みとれる情報量は増えます。
また、回答に応じるサンプルという時点ですでに、肯定的なサンプルと考えられます。だから、サンプルバイアスもあります。(父母の会に)疎遠な人たちは、しゃべりたがらないかもしれないし、そもそも回答に応じないかもしれません。

(5)サンプルにジェンダーバイアスあり
うえの:夫との関係で、圧倒的に多いのが、「子育てに非協力的」です。それが夫婦間の葛藤を産んで、夫婦関係はもう終わっている。そこで意見が合わずに、離婚に踏み切ってしまう人もいる。実は妊娠中に障害を持った子どもが生まれることがわかって、その時点で離婚した人もいます。
Pも結構あって、「子育てに大変協力的」、「身体的介助もやってくれる」。ただ、そういう夫の協力を引き出すために、妻が夫に要求した結果ということもあるでしょう。
こういう条件がそろうと、「子どもを授けてもらった幸せ」があると言っている人もいますが、どうやら、「幸せ」とはっきり言っている人は少数で、あとは「問題がない」「波風が立たない」ということを幸福と言っている可能性があります。
ただここで、時間の経過があって、「高齢化に伴って夫が変化した」というデータがあります。その分、サンプルの年齢が高いかと思います。今後の心配としては、養護と介護、Wケアの負担がでてきます。それから年齢が高いせいで、死別者が相当います。そんな中で、ひとつここに特異なカードがあるんですが、働く母親が自分を責め続けています。その結果として、夫に強いことが言えないという可能性が考えられます。

Q:夫が今回のアンケートの問いに答えるというケースはないのですか?
うえの:父親の回答が1例ありましたが、妻に死別されたケースでした。夫婦のアンケートをしようとおもったら、質問票を2通り作って別々に書いてもらわないとならないでしょう。それにおそらく、夫の回収率はぐんと下がるでしょう。複数の当事者がかかわる経験については、調査票をそれぞれ別に用意しないといけないのですが、そういう調査をしようとおもったら、ものすごくテマがかかります。
Q:そうなると、回答者数に男女差があるということですね。
うえの:もちろんです。だからサンプルバイアスには、ジェンダーバイアスがあります。そもそも今回の回答者の圧倒的多数は、女親ですから。そのわりに、Pが多い。ここに出てきている回答は、障害の有無にかかわらず、性別役割分担が一般的であることがわかります。
Q:夫とうまくいっていると思いたいとか、DVを受けているけれどDVを感じなくて、「当たり前」「普通」と思っている人もいますか。
うえの:推測の根拠としては、「普通」、「世間並」というキーワードがやたらと多いことですね。ということは、夫婦間の幸福のスタンダードが著しく低いのかもしれない。この回答はすごいですね。「あてにするからはずれるんだ」と、最初からオレに期待するなと宣告されているケースです。

(6)「普通」という怪しいキーワード
うえの:自分の親・親族との関係については、次の問5の夫の親・親族との関係と比較しながらきいてください。有効回答数79、P65、N26、その他が6でPが圧倒的です。ここに集まっているのは、「援助と協力があった」、援助と協力の中に、「愛と理解」があり、「配慮とやさしさ」があり、「経済的援助」もあり、自分が働き続けることに対する「就労継続の援助」もあった。なによりも大変ありがたかったのは、障害を持った子も持たなかった子も平等にかわいがってくれた。そういうことがあるから、大事にしてくれてとてもよい関係を作ったというのがあります。あと、「普通に良い関係」というのも結構ありました。この「普通に良い関係」という「普通」というキーワードがよくでてきますが、怪しいね。もしかしたら、期待値がものすごく低いという背景があるのかもしれない。きょうだい親族の関係も比較的Pが多くて、自分のきょうだいたちも力になってくれているとか、両親のきょうだいたちとその子どもたち、つまりいとこや、甥姪からの援助にしても、いつも理解して、気にかけてくれているというのがあります。自分の親に対しては、かわいがってくれた反面、心配かけたという負い目があり、親は、愛情からでしょうが、娘の自分を心配してくれたと。
Nですごく多いのが、「親から我が子の障害を理解してもらえなかった」、「みじめな思い出しかない」、「親とは疎遠になった」、「親はかかわってこないし、こちらもかかわってほしくない」というケースもあります。もうひとつここに加齢がかかわってきまして、親のケアと子どものケアのWケアの負担がでてくる。その中で親に対しては、「ちゃんと親を見送れてその恩返しができてよかった」というのと、「自分に余裕がないので、親にちゃんとしてあげられなかった」という回答が両極的にでてきます。そこに、親やきょうだいと死別する、親がいなくなるという状態がつながってきています。「特にない」というのもあります。

Q:「何も思わない」というのは?
うえの:「特になし」もありますね。
Q:「特になし」というのが、健常児の親ではなく、障害児の親に対して、「特にない」というのが、あやしいなと思ってしまうんです。
うえの:「特にない」というのは、この要因連関図ではAに分類されているけれど、もしかするとNかもしれない。あるいは特に問題がなければ、Pかもしれない。
Q1:「普通」というのも最初にきいたときは、肩の力が抜けた感じでいいなと思ったんですけど、こうやっていくつかでてくると、力が抜けて自然体というのではなく、答えたくないというような気もしますね。
Q2:夫は自分がしんどくても調子がよくても、目の前にいる子どもの介護がかかわるので、どうしても夫婦間でバトルになっていく。親の同居が入ってきたら、親との関係ももっと違うかも。夫の親か、自分の親かでも異なりますね。
うえの:自分の親と夫の親では非対称性があるから、この質問票では「親と」って書くときに、夫の親と自分の親とをちゃんと分けてあります。

(7)分析では自分の体験や感想を織り交ぜないこと
ST:夫の親との関係。Pは39、Nは23、Aは25です。Pでは、「子どもを可愛がっている」、「子どもの介護をしてくれる」、「障害を受け入れてくれる」、「心理的サポート協力」、「見守り中心」、「親戚ぐるみで協力」、「うまくおつきあい」、「同居で協力」、「理解と協力」などがありました。
それと対立する形で、「障害を受け入れない」、「嫁のせい」というのがありました。「嫁のせい」って言われたときに、「いや、わたしのせいではない」というふうに。また、もともと嫁姑という大きな壁があったという意見がありました。あと、現在介護が必要な状態にあって、いろいろ大変という状況です。
このような流れがあって、こういう親とどうつきあうかというところでまとめてみました。まず、うまくお付き合いをする人たち、あといろいろ工夫してお付き合いをする人たち、対立的にうまくかかわれないのでいろいろ悩んでいる、努力して一生懸命改善しているという人たちもいます。だけど、集まるときにひどくその子にたいして気を遣ったりだとか、世間体を気にしたりするようで、ちょっと関係が難しかったりします。
また、夫方の親の中には、そもそも関わる気がないという人もいて、そこからだんだん疎遠になっていく方たちもいました。こういう感じの流れでした。
ST:わたしは意外だったのですが、Nは少ないんですよね。なんでこんなにNが少なくてすんだのか。
うえの:語りたくないっていうのもあるんじゃない?
ST:それもあるかも。
Q:前から気になっていることがあるんです。1つ1つカードはみていないのですが。障害の子どもを産んだとき、母親ががんばっちゃって、父親が拒否っているというか、非協力的というのがある一方で、母親自身も産んでしまった責任を感じているのではないか。
Q2:それは、今質問した方の思い込みなのか、実際にカードにでているのか聞きたいです。
うえの:いまの意見は完全な推測ですね。証拠のある例は、たった1例だけで、「自分が仕事してきたことが原因だろうか」という事例のみ。「自分がもしかして、子どもに障害を負わせた原因を作ったのではないか」というのは、ありません。このデータにはないですね。
Q:わたしの場合、母がずっと孫が元気に産まれてくるまで心配だった、五体満足で出てくるかが心配だったっていうことをよく言っていましたね。
うえの:コメントでは、自分の体験と感想は言わないでください。必ずデータにもとづいて言ってください。推測はいいけど、推測はデータから離れることもある。ありうるけれど、今回のデータから言えないことは言ってはいけません。

(8)ユニークケースはケース分析を
ST:近隣・地域との関係について。有効が78で、Pは59、Nは19、Aは8ということで圧倒的にPのほうが多かったです。特に特徴的だったのが、「関係はよい」というのがとても多かったです。関係はよいというのは、障害者であることをまず、知ってもらえているということでした。それ以外にも、別のグルーピングのなかでは、お母さんだとおもうのですが、自ら積極的に変わって来たということを、あえてここの関係のときに答えた人が多かったです。
否定的な意見では、関係ない、関わらないというところもありました。関連して障害に対する偏見が具体的にいくつか上がっていました。差別や偏見、具体的に、「つらかった」、という意見もありました。「つらい」ということばをあえて挙げている人がでてきていて、偏見がつらくて、つらいから関わらない。
積極的にかかわっていくなかでいい循環をしたということと、関係を作ってこなかったことがかかわれないという悪循環の関係を作って来たのかなと思いました。
Aについては、「世間並みのお付き合いです」、「特に問題ありません」という回答を、あえてAに入れました。制度的な回答は、Aには混ぜませんでした。
最後に着目したのは時間軸の関係で、年月によるかかわりの変化というのがでてきまして、かかわりも経時的な変化をしてきているのだと、このなかからみえました。
グルーピングしていた時に気づいたこととして、実は働いている主婦の場合、子どもが小さいときは、地蔵盆とかで近所の人たちと関わるんですけど、だんだんかかわらなくなるのは障害児の母と実は同じです。リハビリが忙しかったと書かれている人がいますが、仕事が忙しいと近隣との関係ができなかったりするので、どうかかわっていくかということが、実は近隣との大きな関係を作っています。そういう意味では、障害のあるなしを抜きにしても、このような関係性は共通しているところがあるのかもしれません。以上です。何か質問がありましたらよろしくお願いします。
Q:最初の話の中に、地域と積極的にかかわって来たと言っている人が何人かいましたが、同じ人ですか?辛い経験をした人が、地域と積極的にかかわってうまくいったというような人は結構いるのでしょうか。いないのか。
ST:同じ人ではないですね。
うえの:積極性があるのはシングルマザーですね。
ST:そうですね、2人。
Q1:みんなシングルなんだ。夫を教育した方はどうなっていますか?
ST:積極的にかかわっていますね。
うえの:それもシングルマザー?
ST:違います。
うえの:やっぱり積極性のある人は、夫に対しても、地域に対しても、そうなんだ。この人はユニークケース(他の人たちと比較できないケース)かもしれないですね。そうなると、ケース分析をすればいいでしょう。この人は夫との関係はどうで、親との関係はどうで、地域との関係はどうで、とか。
質問を作った時、「近隣地域」って非常にあいまいな言葉だと、回答する人が困ります。考えてみたら、この質問を投げかけている会そのものがピアグループとして「近隣地域」のカテゴリーに入っているかどうかは、回答からだけではジャッジできません。別に「父母の会との関係は?」って設問を作ればよかったんだけど、そもそも「父母の会」主宰のアンケートですから、ネガティブな答は書きにくいでしょうし。広い意味の「地域」の中に、ピアが入るのか、それともピアは「地域」とは別なのか。検証しないといけませんね。

(9)問題は後になって出てくる
ST:医療機関・医師との関係について。有効回答数が78、P62、N16、A6です。Aがかなり少ないのが特徴かと思います。生まれたときから障害児だったので、医療と関係せざるを得ない。信頼と感謝があったので付き合えたのか、つきあっているうちに信頼と感謝が生まれたのかわかりませんが、信頼と感謝に関するP回答がたくさんあります。医師や医療一般に対する感謝もあれば、長期の25年以上とか40年にわたる患者と医師の関係が良好なものであったと推測される回答もたくさんあります。単にお付き合いしていたというだけではなくて、非常に目立ったのは、関係性に関する「良い」という回答で、P回答の中でこれが一番多かったです。Pといえども微妙なPが一つあります。「かかれる医療機関がある」という回答です。
どうしてかかれる医療機関があるということがP回答になるかといいますと、「受診拒否にあいました」、「病院探し、医師探しに苦労」された方、「通院先に連れて行くのが大変」などといったN回答があるからです。
先ほどのP回答の中には、家族の意見を尊重してくれた、親の考えを尊重してくれたという意見がありました。もうお子さんがなくなっている方が1人いて、「最後まで喜ばせてもらって看取ってやることが出来ました」というハッピーエンド。「言葉にできない」、「言えません」と言う方は、ハッピーエンドと不幸な結末という両極端があるのではないかとおもいました。
結論は、医療機関にかかれるか、かかれないかというところに関係性の問題があって、結局はどこかへかからないと重心児は生きていけないわけです。受診できれば良い関係を作ることも出来るし、ハッピーエンドも迎えることもできるかもしれないけれども、それ以前のところでしんどい思いをされている方がいます。ただ数でみると、そういう状態が続くと生きていけないからだと思いますが、少ないという結論が導けると思います。以上です。
うえの:Pの人は、ドクターハントにも成功していますね。
Q:探しているんや~。
うえの:そうそう、ドクターハンティングやっているのよ。
Q:しんどかったけど今は変わったという回答は、数がおおいですか?
うえの:あるある。「医者を探すのには苦労したが、今は良い先生をみつけた」。この回答から、医療のプロは何を教訓として受け取りますか?
A(医療関係の参加者):絶望を与えているっていうのに責任を感じますね。そのときのご本人さんの状況を全然くみ取れていないですね。
A2(医療関係の参加者):そうですね。わたしが一番主張したいのは、本当に障害の程度とか、医学モデルでは切り取れない人たちなんですよね。それを医療者がわかってみてあげなくてどうするのかを言いたくて、いまの論文をかいているんですけど。いったんドクターをみつけたらものすごく安心して。ドクターたちも、ほんとに親身になって、病院を変わっても何十年経ってもその子に会いに行ったりとか、かかわりをもっています。
うえの:その違いは何で決まるの?医学教育の中にはそういう人間的なコミュニケーション力の養成はないんでしょ?偶然性の要因?
A2:偶然性の要因が高いですね。
うえの:パーソナリティとか?
A2:それもあります。
Q:今の話からいうと、最初にかかったところがNなところだったかもしれないけど、探し回ってちゃんとみつけたからPが多くなったということですか。
うえの:そうそう、だから現状は結果として肯定的です。
ST:最初からPな医療機関にあたった方もいらっしゃるんですけど、探し回っていまはハッピーという方もいらっしゃいます。あと、20歳の壁、子どものうちは小児科で診てもらっていたけど、20歳になったら精神内科か精神科に替わって下さいといわれてつらかったと。大きな病院のなかで科が変わるのなら引継ぎをちゃんとすれば辛い思いをさせずにすむと思うんですけど、大病院を使っていたかどうかわからないんですけども、もしも大病院で替わってくれといわれてつらい思いをしたのだったら、引継ぎが行われていなかったという問題なのかなという気もしています。
また、大病院でも専門外の、例えば眼科・耳鼻科の医師など、障害のある人もいるという理解がなく、医療以前の常識を疑う人もいたという回答もありました。
うえの:障害者は病気にもなれないって。
Q:NからPになるときに、社会資源はどこからでていましたか?
うえの:口コミです。
ST:そうですね。口コミです。
うえの:問題は後になって出てきます。

(10)誰の経験を分析するのか-今回は親の経験
ST:学校・教師との関係で、有効回答数57、P50、N21、A3です。かなりPが多いですが、Pでも、こどもの将来につながるような進路だとか、社会で生きるということを考えてくれたというような、子どもを大事にしてくれたという人が結構多くて、卒業後も教師との関係がつづいているというのがあります。
と同時に、子どもを大事にしてくれた、親が心配していること、相談したいことに対応できる教師もいて、「子どもを大事にしてくれた」=「親を大事にしてくれた」ということかなと言えると思いました。ただそのときに、恵まれたというのが非常に多いんですね。裏返せば、恵まれない場合もある。
それに対して、教師の質が悪い、問題だ、教師の差がありすぎるというのも同じことだと思うんですね。個々の教師の資質に差がある、全面的な否定というより、いい教師もいるが、外れたというようなかたちで、教師に恵まれたとか教師の資質とか同じ問題で、当たったかはずれたかということを表しているとおもいます。 そのなかで、はずれに当たりすぎたという人と、そもそも学校は相談できる場ではないという全否定が出てきています。
ただ年齢層が非常に高いということもあって、学校がはるか昔のこととなっている場合が考えられます。漠然と学校との関係が良好とかは年齢層との関係があって、学校にものをいうような世代ではなかったりすると、あるものをそのまま受け入れるしかないというような思いで、良好といれたかもしれません。
学校も中学はよかったというように、学校もあたりはずれがあって、学校がよかったというのは子どもが楽しくかよってよかったというのがあって、地域との関係でも「交流した」という肯定的なものと、地域の学校では「お邪魔虫になっていました」という否定的なものと両方でてきています。
「学校、教師との関係」なので、どうしても教師との関係がメインになってきます。ここでは、子ども同士の関係が全然でてきません。
うえの:それは当然です。質問票では親の経験をきいています。子どもの経験をきいているのではありません。
ST:親が子どもたちのことを相談するとか、子ども同士の関係を親に相談するとか、ということも多いと思うので、そういった子ども間の相談が、親と教師の関係ででてきません。
うえの:まず学校で何が起きているか、親は観察する機会がないでしょう?そしておそらく、子どももそれを訴える力がありません。
ST:でも、何もないということはあるのでしょうか?会話とかケンカしたとかあるのでは?
うえの:親にしてみれば、教師からの報告以外に情報がない。
ST:でも、知ることができないということ自体が、わたしは親の訴えなのかなとおもう。
うえの:このアンケートの決定的な限界は、親の経験についての調査だということで、子どもの調査ではないことです。
ST:親の相談というかなりの部分が子どもの学校での、子ども同士の関係であったりとか。
うえの:子どもが親に訴えるから?
ST:そうなんですよね。訴える力がある。
うえの:(ここでとりあげている子どもたちは)不登校という拒否もできません。子ども同士の関係は、健常児より作りにくいかも。教師と1対1の関係になりやすいんじゃない?
ST:なりやすいです。なりやすいことに対して、健常児から文句がもちろん出てきます。
うえの:重度の障害ってどの程度かわからないけど、たとえば親が、自分の子どもの友だちの名前を5人あげられるかっていうと、健常児でも難しいでしょう。
ST:健常児でも難しいと思います。
うえの:障害児だともっと難しい。
ST:あと、はなれザルとして、「養護学校が遠いので、大変でした」という立地的なもの、送迎、「送らないといけないので大変」というのがありました。

(11)1次情報はカテゴリー化できるものは落とさない
ST:行政・ケースワーカーとの関係です。有効回答数が73、P36、N32、A5です。昔はまったく今みたいになされていなくて、現在は満足しているひとというのがありました。「親切に対応してくれた」のは、行政なのか、ケースワーカーなのか書いていないですね。いろいろ相談にのってくれるという意見もこれも誰が相談に乗ってくれるのか書いていないです。前は良い人でなくても、今は良くなっているケースもあります。ケースワーカーとの関係はいい、事業所は理解してくれるというのもありました。ケースワーカーと行政と両方世話になったというのが2件、相談しやすい行政にあたってよかったという感じですね。
行政でNなのが、家庭の事情をわかってくれないというのが3件ありますね。また、Aは、ケースワーカーに相談するときに、相手による場合もあります。
さらに「普通」というのがあって、何が普通かわかりません。あと、どっちつかずの対応をされたというのがあります。また、「会うことがないので困る」、「関係ない」とかありますね。
困っていることとして、親しくなるころにケースワーカーが変わることです。そして、本人が働きかけないと動いてくれないという意見もかなりありました。本人が働きかけるのも、大事なのかもしれないですね。そして、苦情を言うとケースワーカーに逆切れされたケースがありました。
Q:「苦情」というのは、本人のことばなのか、今カードを作った人が書いたのですか?どっちですか?
ST:本人が言っています。ご自身で「苦情」と言っていますね。
Q:苦情と述べざるをえないことをされたんでしょう。
ST:それから、「父母の会で世話をかけています」という、父母の会の対応に関するカードがあります。
うえの:そういうのはちゃんと、カテゴリーを独立させて別にしておけば?なんていう表札なの?そのメタカード。
ST:「その他の支援にお世話になっている」という表札です。父母の会なんですよ、これが。「福祉事務所や支援センターが相談に乗ってくれています」というカードと、一緒にしたんですね。
うえの:じゃあ、メタカードのカテゴリーを分けて、明示的にちゃんと書いておいてください。行政の制度的な支援か、それとも自助グループの支援かを分けること。
ST:福祉事務所や支援センターがどういうカテゴリーを指すのかわからない。
A:基本、行政ですね。
うえの:「行政」として、わけておく。ちゃんと1次情報にあるのに、指摘されて初めてわかるなんて...。

(12)「特になし」は「無関心」の場合もあり
ST:制度・法律との関係は、問9の「行政・ケースワーカーとの関係」とも関係するのですが、有効回答数62でほかの回答より少ないです。Nが50という大きな数を示していて、Pが17、Aが11。Aの中にはもしかすると、全部Nととらえていいのかもしれないので、ほとんどの人がNな意見を持っているということを念頭に置いて聞いていただけたらと思います
要因連関図では、昔はもっとつらかったというところからスタートして、今は制度や法律は時代と共によくなったという意見があります。また、運動して改善したと考えている人もいて、ともに闘って仲間が出来たというPな意見がありました。
シングルの方が3人ほどPのほうに入ってらっしゃるのは、ちょっと意外な事実かなとおもいました。「日本でよかった」と言う意見が衝撃的でした。日本の制度に現状は満足しているのでしょうか。
にもかかわらず、N回答は現状についてのお話ですね。圧倒的に社会資源が不足している、という意見があります。金、人、モノ、環境が足りていない。お金が足りていないというのは、ケースワーカーさんとか施設の役員さんの賃金面を気にされている方もいらっしゃれば、自分たちに入る手当てが足りないということを、しっかり言ってくださっている人たちもいますし、人が足りないというのはヘルパーさんが足りないとか、そういったことがメインですね。
モノ、環境が足りないというのは、具体的なモノが足りないというひとと、施設を含めた環境が不備であるというような内容が訴えられています。
こうした意見はとても具体的です。このひとたちは、制度について理解しようとか、わかっているからこそ、こういうことが言えると思うんです。
一方で、漠然とよくわからない、漠然と不満があるというひとたちが多いですね。制度や法律がよくわからない、ほとんどのひとが、わからない、わからないなんです。むずかしくてわからない。で、よくわからない理由として考えられるのは、もしかしたら、手続きが非常に難しすぎる、ということかもしれない。
対制度になると、意見が言いやすいのか、ちゃんと障害者のことを考えてほしいとか、厳しい意見が多かったです。対人だと、対制度みたいに厳しく言えないかもしれないけれど、対人も漠然としつつも非常に厳しい意見が多かったです。
その結果、多くの方が、自分自身の将来が不安というよりむしろ、子どもの将来が心配と言うような意見が多いです。
これを踏まえると、最低限現状維持のため、そして今後もっとよくしていくために声を上げていきたいというひとたちがいます。このひとたちは、決して今がとてもいいといっているわけではなく、もしかするとNに入れてもいいくらいです。わたしはこれを「無関心」(Aのカード)としました。「特になし」っていう回答を、わたしはこの問題においては、「無関心」と考えていいと個人的には思っているんですけど。もしかするとAではなく、Nにしてもいいかもしれません。
また、さっきの問9の結果を見ておもったのは、やっぱり先に人ありきなんだなというふうに思ったんですね。親御さんたちは社会に向き合うときに最初に学校の先生であり地域の人でありケースワーカーさんであり、その人たちを通してやっと制度をみるので、情報の降り方を工夫しないと周知できないのではないかと思います。
うえの:たしかに、人を通じて制度を知るわけだから、行政の水際作戦のように、窓口担当者の当たりがまずくて申請書の受理なんかしてくれないときに、もし制度を知っていれば、「あんたのやっていることの法的根拠は何か」と言えるでしょうが、それができなければ、拒否られるのは制度のせいだとおもうでしょうね。制度リテラシーまでは、いきつかない。人を通じて制度を知るという、そこは現場の実感でしょう。
ST:そうだと思います。やっぱりそのとき質問がしたいと思うんですよね、わからなかったら。そこまで説明してくれる人を望んでいるのではないかなと。スタッフの質を言っているのかもしれません。
うえの:制度リテラシーがあると、日本の制度は組み合わせるとけっこういいところまで行けます。だから「日本でよかった」というのは、ウソではありません。
ST:たぶん、ちゃんと情報にアクセスできた人がいいと言っているとおもいます。
Q:このピンクのカード(ポジティブ)のひとたちは、自分で調べているんですよね。
ST:ピンクのカードのひとたちは全員、自分で調べていますね。「障害のある子も学童に入所できるよう、排除条例を撤廃する運動に関わり、実現することが出来たことが良かった」。
うえの:重心児の学童保育自体がまだ20年前くらいの話だから。このPのひとたちは闘って制度を手に入れたんでしょうね。
ST:はい、ここでも積極性があります。
うえの:積極的な人がアンテナをはって情報をゲットするんですね。

(13)ストーリーが作りにくいケース
ST:公共の空間についてです。公共って誰ととらえているかわからないということが途中で問題になってきて、誰をあて先に書いているのかということをまず分けたうえで、NとPを考えることにしました。当事者が「世間」と、「空間」とかいてあって、「設備が悪い」とか、「エレベーターが使いにくい」とかたくさんでてきていました。図で、「民」とかいているのは、「飲食店に入りにくい」というのがあったので。「冷たい目で見られた」、「理解がない」とかあったので、このような構図のうえで、PとNを考え、当事者が世間に対して、もっとこうしてほしいという矢印と、当事者から「冷たい目で見られた」、「理解がない」といった方向性に矢印をおいてPとNをつけてみました。
うえの:おお!すばらしく、分析的。こういうのを分析的といいます。
ST:数で多かったのは、空間について尋ねているので、「設備が使いにくい」、「トイレが使いにくい」、「入りにくい」、「移動がしにくい」、「公共機関が不便」ということがでています。官がやってくれていることに不満を抱きつつも、受け止めていて、「バリアフリーが進んでいる」とか、交通機関が整い、便利ででやすくなったという好意的な評価もあります。
一方、働きかけているけれど中立的な立場で、公共空間について語っている方がいました。
公共の空間なので、あて先があいまいなことがあって、Nで多かったのが、「障害者についての理解がない」とか「気を遣う」、などです。
それに対して、当事者からの働きかけでPにとらえているひとたちがいました。
さらに働きかけるというよりは、自分の側の受け止め方を変えてしまうとか、ありがたいときもあるけどしんどいときもあるというケースバイケースとして受け止めている方がいました。と同時に、「自分たちがもっと出かけていって訴えたほうがいいのではないか」という働きかけがありました。
Aは、公共の空間での交通機関については、「マイカーにしています」、つまりしんどいので公共機関はつかわないということ、そして「特になし」「あまり関係を持っていない」にみられるように、関係自体をもつことをやめてしまったということもありえるのではないかと分析しました。
おそくなりましたが、有効回数51で、たぶんみなさんの中で一番少なかったのではないでしょうか。無効42、P23、N28、A9で分析しています。以上です。
うえの:民間の施設は?
ST:民間はエレベーターのある施設だとか、スーパー、レストランです。
また、公共といってもJRは不便で、京都駅までいかないとバスかタクシーがない、という意見があります。
うえの:私鉄の方がマシっていうこと?
ST:そこまでの違いはなかったような気がします。民をいれた理由は、保育園、飲食店、スーパー、公共施設ということばがでてきたので、官だけではちょっと議論できにくいからです。
うえの:民ってマーケット(市場)です。
ST:店の設備とかですね。赤ちゃんのベッドとか。「駅や施設にユニバーサルベッドがあるトイレが足りない」とか。
うえの:それは、公共です。民の情報はないの?民がもしないとしたら、そもそも民の場面を避けている可能性がありますね。
ST:民をどうしても入れないといけないのは、レストランとか飲食店ということばが出てきたので、サービス業かなとおもって。
うえの:そういう情報がレアだということ?
ST:レアです。今回は、公共の空間において、という設問なので、みなさんみたいに、「~してほしい」、「~されたい」という意見はなかなか語りの中にでてこなくて、ストーリーが作りにくかったです。
うえの:最初にどういう設問を設けたらいいか、困ったんですね。社会学者にとって空間というは、ソーシャルスペース(社会的空間)のことで、フィジカルスペース(物理的空間)のことではありませんが、普通のひとにはそういうふうにはうけとられないから。
ST:そうなんです。それで分析をしているうちに、公共って誰なのかと思いました。あて先は誰だろうって。公共といえば、「マイカーばかり」というような、移動手段としか考えていない回答がありました。
うえの:「公共空間」とは、匿名性のあるパブリックスペースにおいてという意味なんですけどね。
ST:近隣、地域の関係は、問6ですね。
うえの:問6の近隣とは、匿名性がないことが前提なんだけど。
ST:これまでの質問の残りとしての公共なんですね。この問11。
うえの:そう。件数が少ないことも含めて、パブリックスペースという相互作用が起きるような場や機会そのものを、避けているという気がしますね。
ST:施設がないので、困っているということがたくさん出ています。
うえの:施設がほしいってかいてありますか?
ST:不便とか邪魔者あつかいされた体験が具体的にでています。
Q:Pの中に、要望すればちゃんと作ってくれたというのがいくつかありましたっけ?結構いまは、要望すれば作ってくれるんですよね。
うえの:昔に比べればよくなりました。でもそれは、自然によくなったのではなくて、誰かが変えてくれたからです。自分たちが変えてきたというカードは?
ST:そういう語りはあまりなかったです。空間においてなので、関係性というききかたをしていないので、あまり動きがないという感じです。苦情を言ったから改善してもらったとか、そういうのはなくて、せいぜいこうしたらいいんじゃないという程度でした。
うえの:事実上、首都圏の交通アクセス運動を展開したのは当事者団体で、父母の会ではないんですね(※)。車イスで出て行った当事者が運動を起こした。父母の会は子どもたちを外に連れ出すということを、あんまり積極的にやらなかったかもしれません。
Q:父母の会の方々にとっては法律が出来て結果がふってきたというようなそういう感覚なのかなと感じました。
うえの:闘ってとったものじゃないという?
Q:そうです。時間がたったらよくなった。
うえの:そうですか。

※‌なお、京都市父母の会は、設立当初から交通アクセス運動を積極的に行ってきた。首都圏の当事者運動とは時差があるかもしれない。今回の調査ではそのデータがないため、異なった文脈情報からまちがった推論が行われることもある。あくまで1次情報をもとに分析するため、存在しない情報については推論の幅が大きくなる。

(14)「その他」は回答者に開かれた問い
ST:その他なので、テーマがないのに、いくつかにまとまっていることがおかしいと思っています。全体的には、93のうちの有効回答数が44なんでそんなに多くはないです。なおかつP13と少ない、N24と少し多いです。有効回答数が44で合計が46というのは、カードを分けたからです。
横に時間軸です。まず障害のある子の親になるところから、ストーリーは始まります。そのときに「健康な子に産んでやれなかったこと」というものすごく心にひっかかったというその他と、にもかかわらずよかったこととして、「時間や命の重みというか、自分の都合で奪ってはいけないとしっかり思えるようになった」というような、そこら辺がまず自覚的になることから始まっていくのかなと思いました。
その後、どのように歩んできたかということになりますが、「親が強い心と行動力で子どもを育ててきた」という親の姿がPになる。
努力された中で、障害のある子どもを受け入れてくれた保育園にも巡り合えたという、よいことがあったにもかかわらず、現在の課題としては、どこかに連れて行ってあげたいとかやりたいことはいっぱいあるけれど、身は一つなのでそのジレンマがありますというようなのがあります。さらに、国策として父親や夫がかかわってこないのかというのがあります。とはいえ、「サービスやヘルパーの支援制度が、以前よりましになってきた」という流れがあります。
でも、いま制度的な不備としては2つに分かれています。1、介護という生活レベルの話と、2、医療ケアが入ってくると困り度が増すということです。その流れの中で、親御さんなので、将来の不安がでてきて、大きいキーワードとしては、「わたしの死後の心配」があります。また、父母の会は役には立ったけれど、限界があったという話がでています。父母の会に入っているけれど、しんどいという意見もあります。
この不安に対して将来をどう考えているかについて、「親も子も年齢重ねる分、不安になる」というのがあります。政策提言も含めて、「親の年齢も高くなり、将来的に生活の保障をどう確保できるのか...ここ数年で次のステップを考えないといけないと思っている」という意見があります。これはあくまでも提言なので、Aである黄色のカードを使いました。もうひとつ深刻なのは、今は子どもを支えるのはわたししかいない、将来を考えると不安だけどしっかり考えないといけないという、誰もいないからなんとかしないと、という話になっています。
移動の自由の限界は、インフラとかヘルパーさんが原因で動きがとれていないというものもあれば、インフラの整備によって生活圏は広がるという意見もあります。それらをふまえ、では、どのような望む社会かというと、「障害が有っても無くても親も子どもも元気で生きがいの持てる生活、〝豊かな人生″を望みます。必要な努力は惜しみなくしますが、それが報われる時が必ず来ますように‼」という、まっとうな意見です。ほかにも、「安心して過ごせる社会とケアの充実をお願いします」という中立な意見があります。このような不安や提言があるなかで、「先の不安よりも今日の一日をただ懸命に共に歩んできた現在の心境です」というのもあります。
最後にわたしが言いたいのは、介護者ご自身が先に物忘れ世代に入ってしまっているというのがあります。子どもが生まれた、親になっていろんなことをしてきた、いろんな課題を考えてきた。でも目下の課題は、自分たちのことをなんとかしないといけないということだとおもったので、初めは子どもと親の関係、妻と夫の関係といった問題が、大きな問題のなかのひとつとしての問題に絡んでくるようなことが、「その他」のなかでもいえるのではないかということです。以上です。
うえの:不安な将来は、すでに現在、ということですね。
ST:そうです。
うえの:でもわたし、今のストーリーに騙された感じがするけど。将来の不安は、自分が死んだ後の不安というよりも、自分自身の老後の不安というのもあるでしょう。
ST:それももちろんあります。親の年齢も高く、将来の不安をどうするか、という提案としてでています。
うえの:将来的に子どもの生活保障をどうするかでしょう?自分自身に対する不安と子どもに対する不安を切り分けたら、自分に対する不安はどのくらいでているの?だれの将来なのかしら?
ST:親も子もっていうのと、子どもに対してというのもあります。
うえの:自分の老後を考える余裕がないっていうことですね。
ST:いままだね、動けているからね。
Q:ききかたが「その他」しか、ないじゃないですか。そうすると何を書いていいかという指示がないので、すごく分散してこざるをえない。なので、「その他」をなぜ作ったのかが質問者の意図としてもっときちんと示せば、こちらのききたいことが、「その他」できけるだろうと思います。
Q:それに関連して、「その他」というのは、自由回答ですよね。
うえの:はい、自由回答です。
Q:そうすると、テーマは各問で決まっているわけですよね。問1~問11まで。でも問12はテーマそのものも自由に回答するということですね。ただ、いままできいていると、この「その他」の部分のほとんどは、それまでの問1~問11に入るのではないの?
うえの:そうですね、どこかにはいるでしょう。
Q3:だから、それ以外のものはどこにあるんですか?
うえの:とてもいい質問です。選択肢付きの質問票の場合でも「その他」を加えるのはお作法です。なぜなら、選択肢がこれ以上存在しないという網羅性を保証できるとは限らない、という可能性について開かれている、いいかれれば、設問者が考え付かない想定されないカテゴリーを回答者は答えるかもしれないという期待のもとにおかれたものです。でももしSTさんが述べたように、問12の回答がすべて、問1~問11に収まるとすれば、これらの回答は、問1~問11のカテゴリーに完全に収まるものだったということになります。ということは設問の設定が網羅的であったことを証明することになります。
ST:他の問で答えないかもしれないにもかかわらず、この「その他」でくりかえし言っていることは、そのひとたちにとってはとても重要なことだと思えるようなことを書いているからということがあります。それと、一つ忘れていたことですが、問12では、アンケートの対する要望がありました。「アンケートの設問が余りにも漠然としていてとても書きにくかったです。もう少し選択肢があれば書きやすかったかも...」というような。
うえの:でも最初から、長いのは不可、A4用紙で1枚のみという主宰者の設定した制約がありましたから。
ST:それともうひとつだけありました。「文章にするのが苦手なため、失礼します」という謙虚な方もいらっしゃいます。やっぱり自由記載というのも、このような方がいらっしゃるので、番号で選ぶだけというのもあったほうがいいかも。
うえの:そうですね。とはいえ、選択肢法は発見が少ないのでつまらないですね。
ST:いずれの問題も、先ほどの公共の問題に関係しているかもしれないし、医療の話がでていたという意味では、分類は問1~問11のどこかに入りますね。
Q:ここにあげた「その他」ですでにコード化された質問以外のものがでてくる可能性があるところですよね。
うえの:自由回答法はアフターコーディングです。
Q:関係についてが前提なので、わたし自身の関係については問1~問11には示していないから、問12にでてきたのではないでしょうか。
うえの:もうひとつの父母の会独自アンケートがありますが、「あなた自身について」という問いが、彼らのこだわりです。いずれでてくるそのアンケート結果と、今回の結果とを突き合わせてみると、どういう対応がでてくるか。楽しみです。
一同:なにがでてくるか。意外になにもでなかったりして。
うえの:回答に、プライオリティ(優先順位)がでてくるでしょう。いつでも自分を後回しにするのが母親の役割ですから。

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