第1章 インタビューをしてみよう

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第1章 インタビューをしてみよう



1.インタビュー切り上げ時のキーワード「さっきも言ったけど」

インタビューはデータコレクションの基本のき。それを学んでみよう。
インタビューの1セッションは、たいてい1時間~1.5時間(経験則)。ライフヒストリーを聞く場合も含め、インタビューやグループディスカッションでは長くても最長2時間まで。100~150程度の情報が取得できる。
2時間以上インタビューが継続している時は、実は話題が転換している。「さっきも言ったけれど」という話し手の語りが出てきたときは、反復が始まっているサインである。したがって、インタビューの切り上げ時のキーワードは「さっきも言ったけれど」である。
うえの式質的分析法は、自分のとってきたデータのみならず他人のとってきたデータも分析できるという強みがある。100以上のインタビューサンプルを共同で分析できる。ほかのひととすれば情報の共有ができる(汎用性が高まる)。

(1)半構造化自由回答法によるインタビュー
語り方よりコンテンツ(メッセージ)重視

ケースインタビュー→サンプリング実施。
例:立命館大学大学院先端総合学術研究科(以下、先端研と略)に進学している私とは誰なのか?というお題を、うえの式質的分析法で分析する場合について考えてみよう(第8章で詳述)。
1問1答方式(構造化)ではなく、半構造化自由回答法という面接で実施する。

※半構造化とは?
比較のために必要な最低限の質問事項を事前に決めておき、回答者の答えによってさらに詳細に尋ねる簡易な質的調査法。
※自由回答法とは?
1問1答ではないということ。インタビューとアンケートの2種類ある。インタビューの場合、ある質問に対して2次的、3次的に派生的な質問を行なって、相手の答えを引き出すこと。答えが逸れていっても故意に引き留めない。聞き手には聞きたい事、語り手には語りたいことがある。何が重要なのかは聞き手ではなく語り手が判断する。聞かれなくても語り手が自ら語ることは、語り手にとって重要な情報である。
アンケートの場合、選択肢を選ぶのではなく、自由回答で記述してもらう方式。詳しくは、本書に掲載しているアンケート用紙と本書第6章を参照。
半構造化自由回答法では、質問内容を事前に相手に見せないし、インタビュー調査のときも「次の質問についてお聞きします、問い1、問い2」というふうにはしない。話の接ぎ穂のしやすいところから入っていって、話が飛んだり戻ったりどのようにしてもいいが、終わった時、あらかじめ準備した質問がすべて問われているという状態になっていればよい。
インタビューには熟練度合いがあるので、最後に、「いままでのやりとりで聞き漏らしたことがあれば、補足しておたずねすることもあります」と伝えてインタビューを終了する。基本的に主導権は語り手の側にあると考える。
ここまでがデータコレクションである。

(2)インタビューのコツ
・誘導しない
・yes/no questionをしない
・聞き手はしゃべりすぎない
・人の話を聞くのがインタビュー
・聞き手がコメントを言わない
・意見交換する場ではない
・‌1次情報のクオリティは、聞き手の力量に依存する(語り手は尋ねられなかったことには答えない)。その次に記録者の力量に依存する。
・相手に興味を持つ

2.テープ起こしをしない

うえの式質的分析法では情報をユニット化するとき、テープ起こしをしない(テープ起こしの過程をスキップする)。
テープ起こしは慣れた人で、インタビューに要した時間の3倍ほど時間がかかる(慣れてない人で5倍かかる)。ここでたいてい達成感を味わって挫折してしまう。そしてこの時点では、まだ分析ははじまっていない。調査者は情報のコンテンツ、つまりなにが語られたかを知りたいのであって、いかに語られたかを知りたいわけではない。コンテンツを情報ユニット(情報の単位化)にしていくことが重要なので、テープ起こしはしない。
助手がいるときは、語り手が語っていることを助手は情報ユニットのカードに書いていって、インタビューが終わった時に情報ユニットの採集も終わっている。
単独でインタビューするときは、音源を再生しながらリアルタイムでストップをかけないで、情報ユニットを採集する。テープ起こしをするわけではないので効率がいい。1つの語りがおわるまでに複数の情報ユニットが含まれることがある。
リアルタイムに情報ユニットを作るときは、必ず誰の話なのかという主語を入れていく。
テープ起こししたものは、情報の自立性が損なわれている。意味がとおらない情報が結構ある。文脈から取り出すと、意味がとおらないものが多いので、テープ起こししたものは扱いにくい。人間は文脈のなかで話をしているので省略もあるし、多くを言わないのでテープ起こしからの判断は難しい。

Q:テープ起こしをしたほうが、文脈がわかるような気がするが。
うえの:テープ起こしをした文章から1センテンスずつ文章を採集していく場合、その文章の文脈が分からないと、主語が誰なのかわからない事態が出てくる。自身のことを語っているか、第3者のことを語っているかわからない場合がある。
Q:いわゆる依存症のご家族や依存症のご本人のインタビューの場合、主語なしの語りがとても多い。その場合、主語が言えない、主語を言わないということ自体に意味があると思うが、そういう場合はどのように扱えばいいか。
うえの:要約はかまわないが、できるだけ当事者の発言に忠実に記述すればよい。おなじ繰り返しがあれば、それを2つのカードに書き写す。聞いたまま、情報化すること。ポイントは、このときは、ライティングマシーンになればよい。「何度も繰り返すが」と言われたら、何度も同じことを書く!

生存学研究センター報告

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