まえがき

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まえがき


長瀬修(立命館大学生存学研究センター教授)

 本報告書は、2016年9月22日、23日に立命館大学大阪いばらきキャンパス(OIC)にて「法的能力(障害者権利条約第12条)と成年後見制度」をテーマとして開催された「障害学国際セミナー2016」の記録である。
障害学国際セミナーは2010年に韓国と日本の障害学に関する交流と連携の機会として開始された。韓国は韓国障害学研究会(のちに韓国障害学フォーラム)、日本は立命館大学生存学研究センターが担い手となり、英文名称は “Korea Japan Disability Studies Forum”として開始された。
その枠組みが拡大されたのは2014年だった。2013年10月に立命館大学において生存学研究センターが開催した「中国と障害者に関する研究会」をきっかけとして、中国の障害分野の市民社会組織が加わったのである。それに伴い英文名称は”East Asia Disability Studies Forum”変更された。
2010年から2016年までの歩みを以下、簡単に紹介する。

2010年 開催地 ソウル 主テーマ 障害アイデンティティと差異の政治学
2011年 開催地 立命館大学(衣笠) 主テーマ 被災した障害者の避難をめぐる困難について
2012年 開催地 ソウル 主テーマ 差別禁止法
2013年 開催地 立命館大学(衣笠) 主テーマ 差別禁止―どこまで/どのように可能か/妥当か?
2014年 開催地 ソウル 主テーマ 障害と治療
2015年 開催地 北京 主テーマ 社会サービス/障害者の権益保護
2016年 開催地 立命館大学(OIC) 主テーマ 法的能力(障害者権利条約第12条)と成年後見制度

今回のセミナーでは、テーマとして障害者権利条約の実施における大きな課題として注目されている法的能力と成年後見制度を取り上げた。法的能力の問題は条約交渉過程において激しい議論の焦点となったほか、実施過程においても締約国の理解と取り組みが不足しているという理由で、条約の特定条文の詳しい解釈である一般的意見の第1号(2014年)のテーマとして取り上げられている。
東アジアにおける新たな展開として台湾からの参加が得られた点が、今回のセミナーの大きな特色である。台湾では障害学への関心が高まり、障害学会設立への動きがある。台湾の障害学研究グループと生存学研究センターは、本セミナー開催後の2016年11月27日に東華大学(花蓮市)で開催された台湾社会学会においても障害学セッションを開催した。
 東アジアの展開としては、ポスター発表とパネルディスカッションに香港からの参加が得られた点も心強かった。香港からの参加者はチョーズンパワーという香港のピープルファーストの組織のメンバーであり、広東語で発言する場面があった。
本報告は基本的にプログラムに従う形で構成し、基調講演、韓国・中国・台湾・日本それぞれのセッション、締めくくりのパネルディスカッションの報告と質疑応答を掲載した。また、ポスター報告の一部を原稿化したほか、台湾と香港からの参加者の英文ポスターをそのまま掲載した。
 基調講演と日本セッションは桐原、韓国セッションとパネルディスカッションは伊東、中国と台湾のセッションは長瀬がそれぞれ主に担当した。全体の編集は長瀬が担当した。会議は韓国語、中国語、日本語相互の同時通訳で行われ、当日の録音(通訳)や事前の翻訳資料を基に構成した。多言語での国際会議の記録であるため、編者の語学的力量不足もあり、限界があることを読者には了解を頂ければ誠に幸いである。通常はお願いする報告者・発言者自身による確認が、海外の報告者・発言者には言語的障壁によりできなったからである。
第8回を迎える障害学国際セミナー2017は秋に韓国での開催を予定している。

最後に、公益財団法人村田学術振興財団はじめ本セミナーの実現にご尽力くださった皆様に心より感謝申し上げる。

生存学研究センター報告

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