第Ⅰ部 軌跡 ー公開研究会の記録 2.公開研究会・協力企画の記録

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公開研究会の記録

公開研究会・協力企画の記録


フェミニズム研究会は2013年から2015年にわたって公開研究会を4つ開催し、協力企画として2つの企画に参加してきた。その記録を、「公開研究会」と「協力企画」に分けて掲載しておく。なお、イベントに参加している登壇者の所属については、イベント開催当時のものを掲載している。また、本センター報告の執筆者が登壇者としてイベントに参加している場合において、その所属は記載していない。執筆者の所属に関心のある方は、本報告書に記載している執筆者プロフィールを参照していただきたい。

1.「公開研究会」

◆第1回公開研究会
テーマ:フェミニズムという構え ―政治・権力・表象
日時:2013年2月23日(土)14:00〜18:00
場所:立命館大学(衣笠キャンパス)恒心館735号室(3階)
主催:立命館大学生存学研究センター

趣旨
2012年4月に「フェミニズム研究会」(2012年度立命館大学大学院先端総合学術研究科・院生プロジェクト)は活動を開始しました。この一年間、ジェンダーで分かたれる日常・学術の場における権力関係を分節化するために、フェミニズムの蓄積を“学ぶ”ことからはじめようという“入門的”プロジェクトとして活動を継続してきました。そのような〈知〉は、日常・学術における諸活動にエンパワメントをもたらしうるものであるという、「生存」の思想/実践としてのフェミニズムの出発点に立ち返ることが、この研究会の目的であったともいえます。
今回は、これまで研究会を積み重ねてきた成果として、外部から発題者をお招きし、フェミニズムをめぐる議論の場をひらきたいと考え、公開研究会を企画いたしました。
カナダでは2009年以降多くの大学の女性学部(およびプログラム)が、往来の「女性学」から「ジェンダー学部」や「フェミニスト研究学部」などの名称変更を迎えてきたといいます。今回は、そのプロセスにただなかで、大学院生として、また研究員として、議論にかかわってこられた池田直子さんをお迎えします。
池田さんがかかわってこられた、そのプロセス(ヨーク大学/2009〜2011年)には、名称変更が、たんなる「名前の問題」としてではなく、「女性学の歴史」という前提を再審議すること、また「女性」という概念と自分自身の関わりを問うこと、が示されていたということです。また、ひとつの共同体、「セーフ・スペース」の場として「女性学」を想定することにおける他者化や排除についての疑問が学生のあいだで活性化した過程でもありました。こうした揺らぎのなかに「女性学」をすえていくことの意味とはなにか、という課題がそこにはありました。
第一部ではこれらのプロセスと発表者自身の関わり、そしてこの議論とフェミニズムのつながりについての思いをうかがったうえで、第二部では、研究会プロジェクト・メンバーによる、それぞれの「立ち位置」からのフェミニズムを語ります。
本研究会は、オーディエンスのみなさまとも話題を交換できるような参加型を目指しています。多くの方々が、それぞれのフェミニズムを持ち寄りつつ、議論に参加されますことを期待しております。

登壇者・報告内容
*研究会紹介と趣旨説明者:谷村ひとみ(立命館大学大学院先端総合学術研究科)

*発題者1
 池田直子
  「女性学の「揺れ」とひろがり ―カナダでの経験から」
*発題者2
 山口真紀
  「‌フェミニズムの言葉・フェミニズムの記憶
―少女漫画『愛すべき娘たち』から」
 植村要(立命館大学大学院先端総合学術研究科)
  「『女性学年報』投稿原稿執筆と、コメントから考える」
 堀江有里
  「レズビアンというポジションからフェミニズムを読むこと」
*司会:堀田義太郎


◆第2回公開研究会
テーマ:フェミニズムとフィールド・ワーク
日時:2013年12月22日(日)14:00〜16:30
場所:立命館大学(衣笠キャンパス) 学而館第3研究会室
主催:立命館大学生存学研究センター

趣旨
フェミニズム研究会では、「フェミニズムとフィールド・ワーク」と題し、ヨーク大学(カナダ)大学院女性学部在学中の研究者である中川志保子さんをお呼びして第2回公開研究会を開催します。
中川さんはアメリカ合衆国の社会福祉政策およびシングルマザーたちが抱える貧困や階級差別、人種差別、性差別などの構造的困難、そして両者の関係性についてフェミニズム的視点から継続的に研究し、またフィールド・ワークを行われました。本企画では、ウィスコンシン州ミルウォーキー市における児童福祉とシングルマザー、そして彼女たちの運動について報告してくださいます。
参加者の皆さんと中川さんの問題関心を共有し、さらにはご報告を起点としてフィールド・ワークとフェミニズムのかかわり、その可能性についても考えることができればと思います。

報告要旨
母子家庭の抱える貧困は、女性が男性から独立して世帯を持つことが有する、様々な権力関係を転覆する可能性ゆえのものであり、フェミニズムにとって重要な一課題である。アメリカ合衆国では1996年の福祉改革後ワークフェア政策の実施とともに、児童福祉が民営化して拡大し、貧困ビジネスとして(特に非白人の)シングルマザーとその子どもたちが貧困を理由に切り離され、搾取・抑圧されているにもかかわらず、この事実は構造的にほぼ無視され、数少ないシングルマザーの活動組織のみがそれと闘っているというのが現状である。公開研究会では、その一団体であるウィスコンシン州ミルウォーキー市にあるウェルフェア・ウォーリアーズにおける、児童福祉とシングルマザーたちの関係性、そして彼女たちの運動について、「フィールド」・ワークを行った経験とその結果を報告する。 (中川志保子)

登壇者・報告内容
*報告者:中川志保子
  「‌フェミニズムとフィールド・ワーク
―アメリカ合衆国のシングルマザーと児童福祉」
*コメンテーター
 金友子
 山口真紀
*司会:堀江有里


◆第3回公開研究会
テーマ:‌クィア理論と文化・表象・社会運動―映画『United in Anger 〜ACT UPの歴史』上映会とトークセッション
日時:2014年1月19日(日)14:00〜18:00
場所:立命館大学(衣笠キャンパス) 充光館301
主催:立命館大学生存学研究センター
協力:クィア・スタディーズ研究者ネットワーク(QSRN)
   ‌日本学術振興会科研費プロジェクト「文化・社会運動における『アイデンティティの政治』の再文脈化」(基盤研究(C))
   FAV連連影展

趣旨
「クィア理論」は、理論と実践の連動のなかで発展してきたフェミニズムの流れを受けながら、社会に存在する性別二元論と異性愛主義という規範がつくりだす諸現象について考察し、社会構造を読み解く分野として発展してきました。
今回は、その「クィア理論」の出発点のひとつでもあり、多大な影響を及ぼしてきた合衆国でのエイズ・アクティヴィズムについて考える機会をもちます。
第一部では、1987年にニューヨークに設立された「ACT UP」の活動記録映画の上映を通してその時代背景を読み解きます。また第二部では、クィア理論の気鋭の研究者お二人に時代背景や学問的な位置づけを中心にご講演いただく予定です。
このような作業を通して、性に関する規範から外れる〈生〉を育む人々に対する抑圧や差別の問題やそれに対する抵抗の身ぶりを考察すること、規範が生み出される社会のあり方を問うための思考を紡ぎだす場になれば、と考えています。

登壇者
*ゲストスピーカー
 菅野優香(小樽商科大学)
 清水晶子(東京大学)
*司会:堀江有里

図:クィア理論と文化・表象・社会運動【省略】


◆第4回公開研究会
テーマ:‌境界を揺るがす
    ―映画『トークバック』上映会・坂上香監督を迎えて
日時:2014年10月20日(月)16:00〜20:00
会場:立命館大学(衣笠キャンパス) 創思館1階カンファレンスルーム
主催:立命館大学生存学研究センター
共催:‌立命館大学人間科学研究所「インクルーシブ社会に向けた支援の(学=実)連環型研究(基礎研究チーム)」
協力:立命館大学国際言語文化研究所ジェンダー研究会

趣旨
2014年度は「境界を揺るがす―映画『トークバック』上映会・坂上香監督を迎えて」という表題で、エンパワメントと表現活動(パフォーマンス)を主題に、本映画の監督である坂上香さん、劇団態変のパフォーマーである金滿里さん、演劇論を専門にされている池内靖子先生をお呼びして公開研究会を開催する。
日常にひそむ差別や偏見は、人の生/性を抑えつけ脅かすものである。フェミニズムがながく紡いできたおおくの知や実践は、差別・偏見のさなかにあって、これに抗し、生きて在ることの幅を広げるものである。それは人の生/性にかかる関係の苦しみにつぶさに目を向け、人の固有の生/性の在りかたを手放すことなく豊かに活気づける試みでもある。そのフェミニズムの大きな意義の一つに、当人の痛みや苦しみをいかに社会や見知らぬ他者に拓くことができるか、「その動揺までをも含んだ、作法についての思索」がある。
本企画は、その作用・思索の実践として表現活動(パフォーマンス)に注目し、女だけの演劇団体を扱った坂上監督の映画『トーク・バック』を上映する。この映画に登場する演者たちは、差別や偏見にさらされ苦しんできた己の過去と対峙し、それを観客に向けて力強く表現することで、自身に引いた/引かれた境界線を揺るがし、個人の内にある力を練りだしている。
本企画は、映画を起点として、個人的な体験を他者や社会に「開いていく」フェミニズムの可能性について参加者それぞれが自らに問い返しながら引き継ぐ契機となる。この意味において、本企画の目的は様々なディシプリンを持つ院生や研究者が集まる生存学研究センターの学的意義にも与するものである。

登壇者
*講師:坂上香(out of frame)
*メインコメンテーター:金滿里(劇団態変)
*コメンテーター:池内靖子(立命館大学)
*司会:山口真紀

図:境界を揺るがす【省略】


2.「協力企画」

◆‌生存学研究センタープロジェクトA-3 生存をめぐる制度・政策 特別講義・合評会企画
テーマ:ジェンダー研究の新機軸―エスノメソドロジーからのアプローチ
日時:2014年2月22日(土)14:00〜18:00
場所:立命館大学(衣笠キャンパス) 学而館第3研究会室
主催:立命館大学生存学研究センター

趣旨
生存学の研究対象は、人々の生とその技法に応じて多様であり、したがってそれらに迫るアプローチも多様である。
立命館大学生存学研究センターでは、全国の各専門領域から気鋭の研究者を招聘し、生存学への応用的アプローチをひろく学ぶための特別講義を開催している。
今回の特別講義の講師は、社会学者の小宮友根氏である。同氏には、ジェンダーにエスノメソドロジーという方法からアプローチすることの意義についてご講義いただく。
また第二部として、同氏の著書『実践の中のジェンダー:法システムの社会学的記述』の合評会企画も実施する。山口真紀氏と藤原信行氏からのコメント、それにたいする小宮氏からのリプライ、そして全体討論をつうじて、同書のうちに生存学への多様な応用可能性を探りあてたい。

登壇者
*講師:小宮友根(明治学院大学社会学部付属研究所)
*コメンテーター
 山口真紀
 藤原信行(立命館大学衣笠総合研究機構)
*司会:安部彰(生存学研究センター)
◆院生プロジェクト「映画を通じて問いなおす『記憶』の形成」企画
テーマ:映画『基地の町に生きる』上映会 × トーク
日時:2014年10月20日(月)16:00〜20:00
会場:立命館大学(衣笠キャンパス) 創思館1階カンファレンスルーム
共催:‌立命館大学大学院先端総合学術研究科・院生プロジェクト「映画を通じて問いなおす『記憶』の形成」
  立命館大学国際言語文化研究所ジェンダー研究会
協力:‌立命館大学生存学研究センター若手研究者研究力強化型プロジェクト・フェミニズム研究会

趣旨
立命館大学大学院先端総合学術研究科・院生プロジェクト「映画を通じて問いなおす『記憶』の形成」は、人々の〈記憶〉を表出する作品を鑑賞することで、記憶の歴史の描かれ方、記憶の継承のされ方、記憶の変転の有り様を、文学、社会学、人類学といった領域横断的な知見から考察することを目的として、2013年度より活動している。これまでいくつもの作品を通して、見る側の〈記憶〉についての思考を喚起させてきた。本企画は、「基地の町」で生きる女性たちの姿を通して、「自分の中にある基地の語りの記憶」を喚起させることからはじめたい。
生まれた時から「基地」はあった。常に賛成と反対に二分される基地の語りには、いつも「アメリカ」があり、その先には必ずアメリカに相対する「何か」があった。時代は移り、「何か」が絞りにくくなった今も、沖縄には基地が居座り続けている。「私の記憶」として、私の中にこびりついている二分化された「基地」の語りとは、だれの、何のための語りだったのか。その地点に立ったうえで、今の「基地」問題を参加者とともに考える企画としたい。 なお、今回の企画は、立命館大学生存学研究センター若手研究者研究力強化型プロジェクト「フェミニズム研究会」と、立命館大学国際言語文化研究所ジェンダー研究会の協力とともに実施する。
本企画は、米軍基地の街で生きる女性たちの証言を集めたドキュメンタリー映画を上映する。また、映像鑑賞後には、沖縄や京丹後の米軍基地建設に対する抵抗運動の歴史や現状について研究をつづけてこられたお二人のコメンテーターを招き、トークセッションを実施する。秋林こずえさん(同志社大学)には、軍隊と性暴力をめぐってジェンダーの視点から、また大野光明さん(大阪大学)には、米軍基地の歴史と現在をめぐる社会運動の視点からコメントをいただく予定である。映画上映とトークを通して、米軍基地をめぐる〈記憶〉が、どのように分断されてきたのか、また、わたしたちがどのようにその〈記憶〉を継承しうるのかについて考えることが本企画の目的である。

上映作品紹介
『基地の町に生きる』
監督:ホシノ・リナ/米国/2011/65分/日本語字幕

米軍基地と隣り合わせに住む7人の女性たちの物語。彼女たちは、持ち前の知恵とリーダーシップと優しさで、その土地とそこに住む人々への愛情と尊敬、未来を担う世代への希望を原動力に、それぞれの地域で活動している。映画の舞台は、サンアントニオ(テキサス州)、ビエケス(プエルトリコ)、ハワイ、グアム、沖縄、韓国、フィリピン。それぞれの地域で米軍基地が生み出したのは、環境汚染、売買春、暴力、地域と文化への冒とくだった。彼女たちの闘い、喪失、勇気を通じて、この状況を変えていこうとするコミュニティーの物語が描かれる。(映画紹介から)

登壇者・報告内容
*コメンテーター
 秋林こずえ(同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科)
  「軍隊と性暴力をめぐってジェンダーの視点から」
 大野光明(大阪大学グローバルコラボレーションセンター)
  「米軍基地の歴史と現在をめぐる社会運動の視点から」

生存学研究センター報告

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