まえがき

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まえがき

 1970(昭和45)年,日本は人口比における65歳以上の割合が7%を超え,「高齢化社会」の時代に入った.
 現在では,高齢化率もさることながら平均寿命も世界一を争うほどの長寿国と言われるようになった日本において,高齢者を巡る様々な政策,取り組みが官民問わず行われてきた一方,年金や介護といった様々な問題が高齢化の波とともに解決すべき課題として浮かび上がってきている.
1970年1月4日付の『朝日新聞』社説は,次のように書いている.

老人問題はわが国の大きな社会問題になってきている.⋯⋯ところが,老人をとりまく環境はきびしくなるばかりだ.核家族化が進行し,扶養意識が低下している.働きたいと思っても,なかなか仕事が見つからない.せっかくの貯えも,物価騰貴で減価してゆく.高齢者になればなるほど,健康上の悩みがふえてくる.社会からもうとんぜられ,孤独感に襲われがちである.この状態で“生きがい”を見出すことはむずかしい.問題は政府だけで解決できることではないが,政府が老人対策としてやらねばならぬことは多く残っている.

 同社説では以下,雇用の問題,所得保障の問題として年金,さらに「老人の所得水準では買えないサービスを改善すべきである」として住宅と医療を挙げ,前者の具体策として老人ホームの整備を求め,後者は老人医療サービスの改善を求めている.日本は戦後の高度経済成長を経て,世界第2位の経済大国へと発展していく過程で,「一億総中流」などという言葉も生まれたように,生活は豊かになった.その一方で,同社説(および,この時期の社説のいくつか)は「物価騰貴」云々の部分を除けば,現在でも通用しそうでもあり,高齢者を巡る様々な問題(に限らず,貧困の問題全般に言えるのかもしれないが)の根っこは,40年前と現在とで意外とあまり変わっていないようにも見える.
本センター報告は,立命館大学生存学研究センターのセンター報告第19号である.「高齢者」「老い」を巡る様々な問題,テーマのうちのいくつかについて,老い研究会の院生や研究生らが,それぞれ専門としている分野や,それぞれの視点から論じたものである.
 2011年3月,老い研究会は,天田城介・北村健太郎・堀田義太郎編『老いを治める──老いをめぐる政策と歴史』を生活書院より刊行した.前掲書籍の出版以降,老い研究会は,立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点(2007〜2011年度),科学研究費補助金若手研究(B)「戦後日本社会における〈老い〉と〈高齢化〉をめぐる表象と記憶の政治」(2008〜2011年度,代表:天田城介),立命館大学研究推進プログラム「老いの戦後史──戦後における高齢者政策を可能にした政治経済体制と批判精神による変容」(2011年度,代表:天田城介),生存学研究センター若手研究者研究力強化型(2012年度)および立命館大学先端総合学術研究科院生プロジェクト(2012年度)の研究資金を得て,以下の日程で研究会を開催し,運営してきた.

第17回老い研究会 2011年04月23日(土)11:00〜13:00
第18回老い研究会 2011年07月02日(土)10:00〜16:00
第19回老い研究会 2011年08月27日(土)10:00〜16:00
第20回老い研究会 2011年10月29日(土)10:00〜16:00
第21回老い研究会 2011年11月19日(土)11:00〜16:30
第22回老い研究会 2012年02月18日(土)10:00〜17:00
第23回老い研究会 2012年04月15日(日)10:00〜17:00
第24回老い研究会 2012年10月07日(日)09:00〜13:15
第25回老い研究会 2012年11月23日(金)09:00〜15:00

研究会は,各自のテーマを発表し,出席者で検討する形で進められた.それから1年8カ月,その間の研究会の進捗状況,原稿執筆の進度は必ずしも順調と言えるものではなかった.それでも,ここにきて前掲書籍に続く「老い研本第2弾」につながる道筋が見えてきたのではないかと思われる.
最後になりましたが,研究会の運営を支えてくださった生存学研究センターをはじめとする立命館大学の事務局スタッフのみなさん,素晴らしいセンター報告に仕上げていただいた生活書院の方々に感謝申し上げます.

2013年2月
小林宗之

生存学研究センター報告

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