資料 東日本大震災による停電対応に関する福島県・宮城県の患者会報告と関連通達

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◆日本ALS協会福島支部 ALS患者被災状況の聞き取り調査(2011)

・停電に対し、行政の災害時マニュアルは役に立たなかった。
・行政のマニュアルは「緊急連絡先の確保」が軸になっているが、電話が使えない。
・やはり電気が心配だった。長時間停電したら、発電機があってもそんなに長く動かし続けることはできないし⋯⋯。そうなったときにはどうしたらいいのか。震災後、保健所から、「人工呼吸器を使用している患者さんは優先的に難病拠点病院に入院できる」と連絡があったが、自宅から遠いので家族が通うのが大変なので断った。
・電気とガソリンが心配。ガソリンがないからと訪問看護師やヘルパーが一時期来なくなってしまった。断水していると清拭も洗濯もできないし、吸引カテーテルを洗うこともままならない。そんな中で医療的なケアがないのはとても不安だった。
・心配なのは常に電気。人工呼吸器、酸素、吸引器、エアマット、ネブライザーは我が家の在宅療養に最低限必要な設備。ネブライザーを1日に3〜4回使わないと痰が固くなってしまって危険。
・精製水や衛生材料は自費で購入をしているが、今回の震災からしばらく店が閉まっていたし、手に入れるのが難しい状況だった。震災当日のように電話がつながらないときには人が来てくれるまで待つしかない。いつ来てくれるかわからないし、停電もどれだけ続くかわからないなかで、その間にバッテリーがなくなってしまったらどうしたらいいのか、非常に不安。
・病院には自家発電があるが、緊急入院の受け入れは難しいと聞く。もし県外に搬送されてしまったら自分がついて行かなくてはならず、子供たちと離ればなれになってしまう。そうなったら子供たちのことも心配。
・非常時の「自助」(バッテリー、自家発電⋯⋯)などは頼りにならない。平時から作動点検とメンテナンスが必要。非常時だからではなく、平時から改善しなければならない取り組みがたくさんある。
・非常時に一時的に入院するのは難しい。入院してもコミュニケーションも取れず必要な医療のデータもなく危険だった。救急搬送中に死亡例もあるらしい。→呼吸器ユーザーに取って、移送はコミュニケーションが閉ざされることを意味し、非常にリスクが高い。
・入院時のヘルパー付き添い問題
・個人情報の壁で進まない名簿つくり

 停電に係る在宅医療患者への対応について
 緊急時申し送りカード配布中!    2011.9.07.
 3月11日の東日本大震災のため、緊急搬送された在宅神経難病の患者さんのなかには、搬送中や搬送後に、地震の直接の影響とは関係なく、亡くなられてしまった方もいます。リレー方式の急な搬送の混乱のなかで、患者さんの生命維持に必要な最低限の情報が搬送者や医療者に伝わらなかったためです。いざというとき、送り手は、何を伝えればよいのか? また、受け手側はどんな情報を必要としているのか?
 『訪問看護と介護』9月号特集「災害と地域ケア」での座談会「在宅神経難病の災害時支援──災害時対応の常識が通用しない大規模災害に備えて」メンバーに加え、神経内科医の中島孝氏(国立病院機構新潟病院副院長)の協力を得て作成した「緊急時対応カード(ver.1.0)」を、災害時の備えとしてご活用ください。安田智美さん(福島県・ALS患者家族)、千葉芙美さん(宮城県・ALS患者家族)、長谷川詩織さん(いわき自立生活センター)、川口有美子さん(NPO法人さくら会理事)。

ダウンロード先   http://igs-kankan.com/article/2011/09/000474/
[記入例]




◆宮城県内のALS在宅人工呼吸器装着者の電源確保の状況
(『ゆつける』3.11震災特集号)

和川はつみ

 ALSになって23年、呼吸器を装着して20年、地域で生きていく事を決めた時から、「自分に起こる全ての事は、自分の責任で生きる」という覚悟と備えで生きて参りました事が、まさしくこの度、77時間の停電を自宅で過ごす事が出来たと思います。
 震災時は、往診の医師、介護ステーションの責任者、看護ステーションの所長、近所の方々、娘婿と駆けつけてくれましたが、「24問時聞は大丈夫!」 と伝えてました。
 築30年の我が家は瓦と土がバラバラと落ちて、家中の壁掛けや高いととろの物がガチャガチャと床一面に落ち、家壁もボロボロと崩れ落ちました。夫の周りには落ちてくるような物は置かないようにと夫は常々話しておりましたので1 番安全な所は夫のベットの近くでした。ただならぬ状況から2人のへルパーさんも、明るいうちに家族のもとへ帰したいと思いました。ヘルパーさんは。「和川さんと奥さんをこの状態の中で2人にして帰れない」と云いました。暗くなる前に足元の危険な物だけよけて、電源確保の準備をしてお別れしました。
 低体温の為、反射式のストーブ2 台、ゆたんぽで暖めるも、体温は4度台となり緊張しました。震災当日の夜は、ほのかな明かりと度重なる強い余震の中、夫の呼吸器の音だけが生きている証となりました。夫と2 人、ALS患者さん達がどんなにか不安な夜を過ごしている事だろうかと想いを馳せました。どうか生き抜いて欲しいと祈るばかりでした。電気が一戻った4 日目、5 日目からは次々と「生きてるコール」が届きました。お互いの無事を確認し合い、お互いの健闘を称えあいました。
 情報が入るにつれて、東北全体がただならぬ状況にあり、「ALSの生きる命だけを主張し過ぎてはいけない」と思いました。
 震災の翌日からも平常どおりにへルパーさんが来てくれた事は一番嬉しい事でした。ライフラインが復旧しない中ガソリン不足もあり、平常介護に戻るまでは3週間ほど掛かりました。へルパーさん達も皆さん何らかの被災、被害、身内の不幸などありながらも10時間以上も並んでガソリンを入れて来て下さった方もいました。往診の医師は電源が復旧する日まで毎日、今後どうするか、夫の体調の確認に来て下さり、とても心強く思いました。娘夫婦と息子は毎日、水や食料の調達の為に長い時間並んでくれたり、余震のたびに崩れ落ちる瓦屋根の応急処置をしたり、夫の介護と奮闘してくれました。夫がALSに発症した23年前は、幼くて寂しがって泣いていた子供たちがとても逞しく頼りになってくれました。電気は4日目、水は9日目、ガスは3週間で復旧しました。4月7日の地震は震度6強で13時間の停電でした。深夜という事と既に3月11日で確認済みでしたので慌てることなく朝まで待つ事にしました。嘗てない大震災に見舞われながらも、介護に関わる方々と家族、地域の皆さんに暖かく見守られて生きている事を痛感致しました。ライフラインが復旧するまで心身ともに休まる日がない状況の中でも、心はとても温かく満たされました。
 支えあう温かい心と強い責任感で、私たち宮城県はひたすらに復興へ歩んでいます。私たちもその1人として自分の生きることに責任をもって、しっかりと生きて行きたいものです。夫は6月の東北大学医学部の講義で震災に触れると、涙がとまりませんでした。脳波のスイッチマクトスの実践で出した言葉は「かんしゃ」感謝でした。

 宮城県内のALS、電源確保の状況と問題点(停電時聞は約28時間〜約98時間)
 仙台往診クリニックの川嶋孝一郎医師が日本ALS協会報84号に寄稿した「在宅のALS療養者に必要な震災対応――東日本大震災の経験から」によると、宮城県内の在宅人工呼吸器装着者のうち、津波により亡くなられた方は3名。在宅の人工呼吸器(気管切開)の療養者では、初期型の人工呼吸器ではバッテリーが約1時間しか保たず、外部バッテリー(5〜8時間)を持ってない療養者は緊急入院をせざるを得なかった。停電により一両日中に入院を余儀なくされたと思われる人工呼吸器(気管切開)療養者は85人/120人、約71%だった。同クリニックの担当者では、電源確保が困難で43人中19人が入院した。川嶋医師は、最も電源回復が早かった仙台市青葉区中心部でさえ約3日間経過したことを踏まえ、「自助期を乗り切るためには3日間=72時間は電源が確保されなければならない」とし、人工呼吸器内蔵バッテリー、外部バッテリー、発電機、自動車のシガーソケットから通電するインバーター、アンビューバッグなど複数の使用が必要だと指摘している。その後宮城県ではガソリンが枯渇する事態に見舞われたが、現在は在宅患者170が在宅復帰した。ただしうち50人は発電機やインバーターを設置していないことが判明しているという。

◆2011年4月8日 事務連絡 厚生労働省医政局指導課発出、
 都道府県医療主管課あて(通達)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000018lba-img/2r98520000018moe.pdf

 停電に係る在宅医療患者への対応について

 今般の東日本大震災については、必要な医療の確保に最大限の御尽力をいただき、厚く御礼申し上げます。
 4月7日夜に発生した東日本大震災の余震と思われる地震の後、東北電力管内の地域が停電となっている時間帯に、山形県尾花沢市で人工呼吸器と酸素濃縮装置を使用中の患者が死亡する事案が発生いたしました。
 停電と死亡の因果関係については不明ですが、貴課におかれましては、貴管下の医療機関及び訪問看護ステーションに対し、人工呼吸器や酸素濃縮装置等の在宅医療機器を使用している患者に対する停電時の対応について、必要に応じ医療機器メーカーと協議を行った上で、

・人工呼吸器の内臓バッテリーの有無と持続時間、作動の再確認
・人工呼吸器の外部バッテリーの準備及び事前の充電
・酸素濃縮装置を在宅で使用している患者に対し、必要な酸素ボンベが配布されているかの再確認
・人工呼吸器や酸素濃縮装置を使用している患者に対する停電時の対応の周知
・停電等電源異常時のアラームが正しく作動するかの再確認
・携帯用酸素ボンベセットの使用方法の再確認
・患者の状態を踏まえた適切な在宅医療機器への代替や貸出などの対応
・在宅医療患者との緊急時連絡体制の再確認

等により、在宅医療患者への医療の提供が、停電時においてもできるだけ支障なく行われるよう、適切な指導の実施について特段の御協力をお願いいたします。
→この国の通達を受けて、京都府は7月15日、第1回「停電時における在宅療養者の安全確保に係るネットワーク会議」を開催した。対策は次の2点。

1.宇多野病院内の京都府難病相談・支援センターに、不安解消のため相談窓口を設置。休日をのぞく9月22日まで、看護師が相談対応
2.在宅療養者向けのチェックシートを作成(医療機器メーカーやかかりつけ医の連絡先など)。

※京都府が医療機器業者から聞き取ったところ、呼吸器や在宅酸素療法などを使う患者は、府内で約3500人いる。うち、在宅の人工呼吸器ユーザーは約150人。

○日本ALS協会の厚生労働大臣宛要望(2011年6月29日付)から抜粋

1.在宅人工呼吸器使用患者に対して人工呼吸器故障のバックアップ用として予備器を診療報酬で評価してください
2.東日本大震災の経験から停電対策として、「重症難病患者拠点・協力病院整備事業について」(健発0427第2号)に基づき非常用発電機と無停電電源装置(UPS)の拠点病院・協力病院からの無償貸し出し又は貸与の整備が進められていますが、合わせて付随する介護機器(エアマット等)や医療機器(吸引機等)を含めて使える充電器付大容量バッテリーと医療機器が使えるバッテリーを整備してください。


◆2011年7月15日  事務連絡 厚生労働省医政局
東京電力又は東北電力から電力供給される都県医療主管課 御中

 計画停電が実施された場合の医療機関等の対応について

 今夏の電力需給対策については、7月1日より大口需要家に対する電力使用制限が開始されたところです。基本的には国民各層の節電の取組により電力の需給ギャップを解消することとされており、計画停電は「不実施が原則」とされています。しかしながら、万が一電力の需給バランスが悪化した場合には、計画停電が実施されることも想定されます。このような場合においても、医療機関の診療機能や在宅医療機器を使用している患者の生命・健康に支障が生じないよう、適切に対応することが求められます。計画停電に係る医療機関等の対応については、これまでにも随時依頼してきたところですが、電力需給バランスが厳しくなる夏期を迎えたことを踏まえ、貴管内の医療機関等に対して、下記についてあらためて周知徹底をお願いいたします。
 1.計画停電の実施の考え方について

 基本的には、計画停電は「不実施が原則」とされているものの、万が一電力の需給バランスが悪化した場合には、計画停電が実施されることも考えられます。経済産業省作成資料によると、具体的には、電力需給が逼迫し、電力供給予備率見通しが3%未満となる場合は、原則として前日の18時に政府からマスコミ等を通じて電力逼迫警報(緊急の節電要請と計画停電実施の可能性について)が発出されます。また、当日の7時30分または8時30分の段階(※電力供給予備率の見通しの状況により異なる)で引き続き電力供給予備率見通しが3%未満の場合には、電力需給逼迫警報の第2報が発出されます(別添1及び経済産業省HP参照)。このため、各都県、医療機関、訪問看護ステーション及び医療機器メーカーにおかれては、日頃から、計画停電に関する政府からの発表や報道等に御注意いただくようお願いいたします。なお、政府から電力需給逼迫警報(第1報)が発出された場合には、厚生労働省からも各都県の所管課及び医療機器メーカー関連団体にお知らせをする予定としております。 
 2.計画停電等に備えた事前の対応について

 万が一の計画停電が実施された場合等に備え、医療機関、訪問看護ステーション及び医療機器メーカーにおいては、あらためて下記の取組の徹底をお願いいたします。

(1)自家発電装置を有する医療機関においては、装置の点検や燃料の確保を行うこと。

(2)在宅医療機器を使用している患者を担当する医療機関及び訪問看護ステーションにおいては、医療機器メーカーと十分に連携しつつ、適宜以下に例示する取組を行い、患者の生命に危険が及ばぬよう万全を期すこと。
○1担当する在宅療養患者について、以下の点に係る注意喚起や確認を行うこと。
・人工呼吸器を使用する患者に対する人工呼吸器の内蔵バッテリーの有無と持続時間・作動の再確認、外部バッテリーの準備及び事前の充電
・酸素濃縮装置を在宅で使用している患者に対する必要な酸素ボンベが配布されているかの再確認、酸素ボンベの使用方法の再確認
・停電等電源異常時のアラームが正しく作動するかの再確認
○2○1の確認を実施した上で、必要な場合には、患者の状態を踏まえた適切な在宅医療機器への切替え等の対応を行うこと。
○3担当する在宅療養患者と緊急時連絡体制を再確認するとともに、停電の際の対応について、事前に相談しておくこと。
○4担当する在宅療養患者に対し、緊急時の連絡先として、各患者が使用している医療機器のメーカーの24時間相談窓口、下記(4)の国立病院機構等に設置されている緊急相談窓口等について周知すること。

(3)医療機器メーカーにおいては、医療機関等と十分に連携しつつ、適宜以下に例示する取組を行い、患者の生命に危険が及ばぬよう万全を期すこと。
○1各メーカーの顧客である在宅療養患者について、以下の点に係る確認や注意喚起を行うこと。
・人工呼吸器を使用する患者に対する人工呼吸器の内蔵バッテリーの有無と持続時間・作動の再確認、外部バッテリーの準備及び事前の充電
・酸素濃縮装置を在宅で使用している患者に対する必要な酸素ボンベが配布されているかの再確認、酸素ボンベの使用方法の再確認
・停電等電源異常時のアラームが正しく作動するかの再確認
○2○1の確認を実施した上で、必要な場合には、医師と相談の上、患者の状態を踏まえた適切な在宅医療機器への切替え等の対応を速やかに行うこと。
○3各メーカーの顧客である在宅療養患者に対し、停電の際の対応について、担当の医療機関等と事前に相談しておくよう注意喚起すること。
○4各メーカーの顧客である在宅療養患者に対し、緊急時の連絡先として、医療機器メーカーの24時間相談窓口、下記(4)の国立病院機構等に設置されている緊急相談窓口等について周知すること。
○5各メーカーにおいて、外部バッテリーの在庫を十分確保すること。

(4)人工呼吸器を利用する在宅療養患者の緊急相談窓口
 独立行政法人国立病院機構、独立行政法人労働者健康福祉機構及び社団法人全国社会保険協会連合会等の運営する関東信越地区、東北地区及び新潟県の医療機関において、人工呼吸器を利用する在宅療養患者の緊急相談窓口を設置し(別添2参照)、各種相談に応じるとともに、状況に応じて緊急一時入院の受入れを実施しておりますので、医療機関及び訪問看護ステーション等におかれては、必要に応じて御活用ください。
 3.電力需給逼迫警報が発出され、計画停電が実施される場合等の対応について

 政府から電力需給逼迫警報(第1報)が発出された場合には、各都県においては、貴管内の医療機関及び訪問看護ステーションに対し、必要に応じて電話連絡するなど、その旨を周知していただくとともに、医療機関、訪問看護ステーション、医療機器メーカーにおいては、上記2の取組について、再度の確認・徹底をお願いいたします。また、医療機関及び訪問看護ステーションにおいては、必要に応じて、上記(4)の相談窓口等も活用しつつ、在宅療養患者の緊急一時入院の実施・調整等の対応もお願いいたします。
 また、実際に計画停電が実施された場合にも、医療機関及び訪問看護ステーションにおいて、在宅療養患者の緊急一時入院の実施・調整等、必要な対応をお願いいたします。
 なお、事前に警報が発出される計画停電とは別に、万が一にも不測の停電が発生しうることも考えられます。このようなケースも念頭に置いて、対応をしていただくようお願いいたします。

 4.停電による問題発生事例の情報提供のお願い
   〈照会先〉厚生労働省医政局電力確保チーム


◆2011年3月18日 厚生労働省保健局医療課発 事務連絡

 東北地方太平洋沖地震の発生に伴う生命維持に常時電源が必要な重度障害者等の入院に係る支援について
 今般の震災における被害の重大さを踏まえ、人工呼吸器等により生命維持に常時電源が必要なALS等の重度障害者等の入院に係る生活の支援における障害者自立支援法及び介護保険法の取り扱いについては下記の通りとする。
 医療機関に入院しているALS等の重度障害者等の生活支援で、居宅介護・重度訪問介護(介護保険の訪問介護を含む)による当面の支援を行って差し支えない。電源確保を理由に一時避難として保険医療機関に滞在する場合は、避難先を居宅とみなし、必要なサービスの確保がなされるよう適切な指導をお願いする。

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